【徳島vs東京V】レポート:成長した守備をベースに、積極的な攻撃も展開。見事な戦いで東京Vを撃破し大きな意味ある白星を奪取!(1709文字)
■2015明治安田生命J2リーグ 第29節
8月15日(土)徳島 1-0 東京V(19:04KICK OFF/鳴門大塚/4,564人)
得点者:39’津田知宏(徳島)
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見事な90分。そのひと言に尽きる。
ヴォルティスは一瞬の緩みもないパーフェクトな集中とハードワークを最初から最後まで貫徹。持ち得る力と技の全てを尽くして戦い抜いた。結果、強大な勢いを纏って乗り込んできた東京Vを1-0で撃破。チームは今後の戦いを大きく左右するであろうこの重要な一戦で、勝点3以上の価値がある非常に大きな勝利をもぎ取って見せた。
今節の勝利によって得られるものが如何に大きいか、十分に分かっていたのだろう。選手たちは開始のホイッスルが響いた瞬間からトップギアで戦いに入った。早々に左サイドから二度いい形を作れば、13分には木村祐志から濱田武、津田知宏と縦へ連続して繋いで中央からの崩しも。その直後には東京Vの起こしたクリアミスを攻め残っていた津田が拾ってGKと1対1のチャンスに持ち込むなど、序盤から攻撃的姿勢を強く表現した。
さらにヴォルティスのゴールを狙う意欲は加速していく。27分、左サイドからの鋭いグラウンダークロスを受けたキム ジョンミンが素晴らしいターンでシュートに持ち込むと、それで得たCKから再びキムが惜しいヘディングシュート。東京VのGK佐藤優也のビッグセーブにどちらも阻まれたが、立て続けに決定機を生み出し、チームはピッチ上の流れを着実に自分たちのものにしていった。
そして迎えた39分、ついに積極的な攻めを結実させる。自陣から蹴り入れた長いFKのこぼれ球を東京VのDFがペナルティエリア内でトラップミス。素早い反応でそのボールを持ち出そうとした津田が倒されてPKを獲得し、エース自らがそれをきっちり決めて待望の先制点を奪取した。
しかし、そのように攻撃面の良さが多く見られた前半であったが、それを実現できていたのは他でもない、意識統一された守備を全員が献身的に行っていたからこそ。
東京Vのプレーは予想通り質の高いものであった。個々の技術は目を見張るもので、組織としても局面でトライアングルを作るスピード、そこでのワンタッチによるリズミカルなボール回しは目を見張るレベルだったと言えるだろう。だが、ヴォルティスは厳しい寄せと距離感のいいポジショニングでブロックを形成し危険地帯への侵入を阻止。また早い切り替えと効果的なコースカットで今季の彼らが得意とする速攻も出させなかった。
いずれにしても、そうした堅い守備を全員で徹底して行ったことによってチームが理想的なリズムを掴み、前半でゲームの主導権を握れたのは間違いない。
一転、折り返した後半は、始まってすぐ東京Vに退場が出て数的優位となったこともあり、リアリストになっての戦いを展開した。選手たちは常に戦況を見据える冷静な目を持ち、リスクを考え、守備への集中をいっそう高めてプレーを進めたと言えよう。特にボランチの濱田武とエステバンは前半以上に出入りのバランスを考えてプレー。危険な中央スペースを決して空けない動きを2人で連携を取って披露していた。
ただ、だからと言って攻撃への積極性は失ったわけではない。事実、東京Vの最終ラインと駆け引きしながら裏のスペースを狙い続けた津田や、左右に幅広く動いて体を張ったポストプレーでボールを引き出すキムを効果的に使って前にボールを運ぼうとする形は何度も見られたし、エステバンが相手のミスを見逃さず放った強烈なロングシュートもまさしくその現れであった。
確かに1人多い状況下で突き放す2点目が挙げられなかったことは課題として向き合う必要があろう。とは言えこの一戦に関して言えば、それを補って余りあるだけの内容をヴォルティスは見せたと言っていい。消耗の激しい過酷な暑さの中でも集中を全く切らさず、最高の状態にあった東京V相手にそのままゲームを押し切った戦いはやはり高い評価に値するものだ。
それだけにチームはこの勝利により勝点3を積み上げただけでなく、自分たちのサッカーに対する自信をこれまで以上に深められたはず。シーズン終盤の上位への割り込みに向けて、選手たちは自らをまたひとつ前進させたに違いない。
reported by 松下英樹