【広島 1-0 EL埼玉】救世主は塩田満彩。
ああ、やられた。こうなってしまうのか。
90+2分、一瞬でもこのような空しさに襲われた自分を恥じた。
サッカーにおいて、諦めは禁物。そして油断もあってはならない。そういうメンタルは進化の邪魔である。今まで何度も同じようなことを経験してきたのに、人間の気持ちは弱い。
やられたと感じたその瞬間とは、PA内で埼玉のアタッカー・植村祥子に押しこまれそうになった時だ。
そこまでの埼玉は、まるで亀のように丸まって、広島の守備をただ跳ね返すだけのサッカーを表現していた。前半のシュートは2本、後半は90分まで1本に終わっていた。が、この90+2分のシーンは違った。
途中出場のアタッカー・19歳の松山沙来が右のハーフスペースを突破した時、彼女たちは6人がPAもしくはその近くに集結していた。それまで、ほとんど相手陣内に人数をかけてこなかったチームが、最後の最後に勝負をかけてきたのだ。
身体能力に優れた松山の突破を、対応した藤生菜摘は止められない。とはいえ、広島は3バックがしっかりとそろっていた。だが、埼玉でもっとも怖いストライカーである吉田莉胡が駆け引きを使ってくる。前に飛び込むのではなく一瞬の間合いを置き、その上で呉屋絵理子と左山桃子の間に飛び込んできた。
ここは左山が左足でブロックするも、吉田は執念を見せる。左山と身体を入れ替えた。危ない。
木稲瑠那が勇気に満ちた反応を見せて飛びこみ、シュートを防ぐ。が、そこに植村がいた。
当てた。ボールはゴールに向かって飛んだ。
こういうことか。たった1度、与えたチャンスで決められてしまうのか。クラシエカップ東京V戦に続き、またしても罰をくらうのか。
いろんな思いが頭の中を巡った、その瞬間。
ボールが2度にわたって跳ね返され、最後はコーナーキックの判定になったシーンが、目の前の現実として現出した。
うそだろ。
誰が跳ね返した。
映像で確認。塩田だ。松山が突破しようとした時、木稲の後ろに入ってゴールをカバーしていた塩田満彩だった。まず、植村のシュートを右足で弾く。そのボールが倒れていた木稲の頭に当たって入ろうとしたのだが、今度は右肩で防いだ。ハンドはない。
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