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【広島 0-0 名古屋】大迫敬介、生きている壁

1994年、スチュアート・バクスター(広島初代監督)は一人のGKに「彼は生きている壁だ」と称賛の言葉を贈った。

絶賛されたのは前川和也。広島のファーストステージ優勝に貢献した、初代背番号1である。

当時はインターネットがまだ一般的には広まっておらず、明確な記録がネットに残っておらず、また筆者もまだ一サポーターに過ぎなかったため、どの試合のプレーをバクスター監督が指していたのかは確認できていない。ただ、おそらくは1994年9月3日、セカンドステージのホームでのV川崎(現東京V)戦だったと思う。当時、最強を誇っていたヴェルディに対して真っ向勝負し、3-2で勝利した試合だった。

ホーム・広島ビッグアーチ(現エディオンスタジアム広島)に約4万2000人の観客を集めた真夏の決戦で、ヴェルディは再三にわたって攻め込み、ゲームを支配していた。実際に2点もとっていたのだが、それ以上のチャンスはあった。だが、その度に前川の強烈なシュートストップが炸裂。特に相手がドリブルで侵入してきたところに対応し、フェイントで何度も揺さぶられながらもその度に身体を立て直して決壊を許さなかったプレーは、今も記憶に残る。そのプレーを指して、バクスター監督は「生きている壁」と絶賛した(と記憶している)。

2014年3月29日対徳島戦、筆者は林卓人に「生きている壁」の言葉を贈った。

16分、カウンターで攻め込んだ徳島。FW津田知宏がPA内で1対1となった。津田は林をかわしてのゴールを狙う。だが林は津田の切り返しにも落ち着いて対応し、身体を倒さないようにして相手を追い、最終的にはシュートを打たせなかった。林自身が大きな壁となり、その壁に生命が宿っているかのように動き、ストライカーの前に立ちはだかったのだ。

そして2022年9月17日。広島にまたしても、「生きている壁」が誕生した。もちろん、大迫敬介だ。

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