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【広島 1-2 清水】仙波大志と棚田遼、苦しみながらも魅せた才能と練習の成果

スタジアムの美しい芝生の上を白いボールが走り、アートを表現した。主役は44番。大学を出たばかりの広島ッ子=仙波大志だ。

芸術は、その前段階において、地道な戦いがある。油絵であれば、絵の具を調合し、下地をつくらねばならない。陶芸であれば、土を練る作業が必要だ。そして、サッカーにおいては、もちろんトレーニング。そして試合においては「闘い」である。

61分、中盤でボールを受けた仙波に対し、194センチ・84キロ巨漢FWオ・セフンが自らの肉体を利してプレッシャーをかける。しかし164センチ・61キロの小兵MFは、身長差30センチ・体重差23キロをものともせず、身体の切れと巧みなボールコントロールによって圧力を振り切った。これが、アートへの最終準備となった。

仙波はまずボランチ・柴﨑晃誠に預けた。この時、彼の頭脳にはゴールへの道筋が見えていたはずだ。

連続して彼は動く。彼しか見えていなかったその場所は、清水の最終ラインとボランチの間。スペース攻略は、仙波の真骨頂だ。

柴﨑からのワンタッチパスでボールを受けたのは高卒ルーキー・棚田遼。いいポジションをとって前を向いた。

ここでトレーニングの成果が出る。

スキッベ監督はずっと、動きながらボールを受け、動きながらパスを出す練習にこだわった。ポゼッショントレーニングでも、ボール回しでも、止まってのプレーはほとんどない。常に動きながら、だ。

その上で「適切なパススピード」も、指導していた。

「相手との距離を即座に判断して、それに適した速さのボールを蹴る。パススピードは、いいサッカーのための重要なポイントだ」

そして、受け手に対しても「早く(ポジションに)入り過ぎると後ろにボールが行ってしまう。しっかり(相手を)見てからポジションに入ること」

そういう指導を彼は、続けてきた。そして若者たちは、そのことを忠実に実行した。

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