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清水対広島戦プレビュー/思い出す4年前の熱い戦い

卓越した技術と戦術眼で若者たちから尊敬を集めている柴崎晃誠(右)。4年前の清水戦で先制点をアシストした彼の不在は、広島にとっては痛い。ただ、松本泰志(左)の成長はチームにとって頼もしい。

 

日本平(IAIスタジアム日本平)での思い出は多々あるが、2017年9月23日の対清水戦は様々な意味で、脳裏に焼き付いている。

この試合前の状況は、広島が15位で降格圏の16位甲府とは2ポイント差。一方、清水は13位で広島とは5ポイント差があるが、もし広島が清水に勝利すれば一気に2ポイント差まで縮まり、甲府次第では残留争いに巻き込まれてしまう。清水にしても広島にしても、絶対に勝利が必要だった。

チーム状態としては、広島の方がよかった。3連敗中の清水に対して広島は5試合負けなし。特筆すべきは、5試合でわずか1失点という堅守だ。

第19節・鳥栖戦から指揮をとったヤン・ヨンソン監督はフォーメイションを3バックから4バックに変え、トレーニングでは4人の最終ラインをロープでつなぎ、連動した守備戦術を徹底的に植え付けた。攻撃では、パトリックやアンデルソン・ロペス、フェリペ・シウバといった外国人選手を中心とした鋭いカウンターを主軸として挑む。

堅守速攻を採用することは、残留争いのチームを立て直すには定石といってよく、実際にヨンソン監督は18試合で11ポイントしかとれなかったチームの戦績を向上させた。就任以降、清水戦までの8試合で3勝3分2敗。特に大きかったのはいわゆる「6ポイントゲーム」での粘り強さで、大宮・新潟といった降格圏のチームには引き分けでしのぎ、甲府には勝利して残留争いに引き込んだ。この粘り強さが、2017年の奇跡的な残留劇に繋がったと言える。

ヨンソン監督は、前節の対C大阪戦で途中出場ながら涙の決勝ゴールをあげたフェリペ・シウバをベンチに置き、左サイドバックに椋原健太を抜擢しただけ。「勝っているチームは大きく変えるな」という鉄則どおり。こういう部分も含め、ヨンソン監督はオーソドックスな考え方を貫く指揮官だったと言えた。一方、清水・小林伸二監督は、チアゴ・アウベスや金子翔太、白崎凌兵やミッチェル・デュークといったタレントを前線に配備し、鄭大世という大砲はベンチで情勢を睨んでいた。

開始早々、広島は柴﨑晃誠のセットプレーから水本裕貴がヘッドで叩き込み、貴重な先制弾をマーク。だが、絶対に負けるわけにはいかないオレンジ軍団は、ここから反撃。後半はほぼ一方的に清水が攻勢を握った。

ヨンソン監督は打開を図り、フェリペ・シウバを投入して攻撃に厚みを加えようとしたが、小林監督も鄭大世を入れて勝負をかけた。広島は清水の徹底的なサイド攻撃をなんとかしのぎ、パトリックやロペス、シウバの能力を生かしたカウンターをとりたかったが84分、ついに鄭大世にゴールを決められ、追いつかれてしまう。

サンバのリズムが響き渡り、雰囲気は完全にホームチームが支配。だがここでヨンソン監督が切った3枚目のカードが、展開をガラリと変えた。

87分、青山敏弘に代えて森﨑和幸を投入。ボランチは野上結貴・青山のコンビから、稲垣祥とカズのコンビに変わった。

この時の采配について、筆者はこんなレポートを書いている。引用しよう。

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