東俊希/ゴールに向かって走れ
若者が苦しんでいる。
27日に行われたトレーニングマッチ・対北九州戦、広島は1-2で逆転負け。チャンスの数も質も明確に上回っておきながら、得点がとれない。そして逆襲からのセットプレーで2失点を喫してしまった。北九州の逆転ゴールは後半、CKから190㎝の長身FW・狩土名禅にヘッドで叩き込まれたもの。そして、彼のマークについていたのは、東俊希だった。
後半の広島の最終ラインには、180㎝以上の選手が今津佑太しかおらず、180㎝の東が190㎝の狩土名につくのはミスマッチではあるがチーム構成以上は致し方ない。この日の北九州には、180㎝超えの選手が彼の他にも3人いて、高さでは広島は不利だった。
だが、それでも失点は許されない。マークについていたという事実は事実として存在する。190㎝超えのハイタワーに対してマークにつかざるをえない時は、リーグ戦でも国際試合でも存在するわけだ。例えば、佐々木翔は180㎝を切っている高さではあるが、セットプレーでマークを外すことはほとんどない。それこそが技術であり、スキルだ。
「自分のマークにゴールを決められたことは悔しい」
東俊希は唇を噛んだ。
「相手を跳ばせない駆け引きも学ばないといけない」
ただ、東は過去、それができていなかったわけではない。そもそも彼はセットプレーでの守備も信頼を勝ち得ていた。だからこそ、開幕から左サイドバックのポジションを掴み、城福浩監督はずっと彼を主力から外さなかった。
だが、17連戦の最中で心身ともに疲弊し、パフォーマンスを落としてしまう。特に守備での綻びが大きくなってしまったことによって、東はポジションを失ってしまった。もちろん、藤井智也の台頭や柏好文の継続といった事象とも、無関係ではないのだが。
「3バックの現在、(東)シュンキの主戦場はウイングバック。本来であれば彼の守備は万全のはずですが、そこで不安定さを見せてしまうと厳しくなる」と城福浩監督は言う。彼はスピードでは藤井に一歩劣るが、決して遅い選手ではない。高さも強さもあり、1対1の守備でも安定していたはずだ。だが、連戦でトレーニングができないという状況もあってコンディションが落ちていく中、身体だけでなく頭脳の疲労も目立ち、判断にもブレが生じていた。
「疲れは確かにあったと思います」と東は言う。高校生での天皇杯デビュー以来、順風満帆できた彼の選手生活にとって、初めての試練だと言っていい。サイドバックでも自在なポジションどりでチャンスをつくり、ゴール前に飛び込んでゴールも決めた(福岡戦)。
しかし、それが許されたのは、守備でポジションに戻る走力と献身性、判断スキルの成長があればこそ。だが連戦の後半からそこに齟齬が出てしまって信頼を失い、巻き返しを図った天皇杯・おいでやす京都戦では散々の出来。「情けないです」とこの試合について、東は唇を噛む。
今は藤井智也と柏好文のパフォーマンスが際立っていて、東がウイングバックのポジションを取り戻すのは容易ではない。だが、彼には違うポジションでその能力を発揮するチャンスがあると筆者は見る。
それがシャドーだ。
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