サンフレッチェ広島レジーナ、「広島ダービー」を制す/レジーナ4-0アンジュヴィオレ広島(練習試合)
左サイドのタッチライン際から、美しい放物線が描かれた。
グッ。
ドライブがかかったボールは、ストンと落ちた。
ネットが揺れた。
笑顔も揺れた。
決めたのは木崎あおい(写真)。左サイドバックを務めた23歳になったばかりのWEリーガーだ。
「シュートかクロスか、その中間くらいのイメージで蹴ったのですが、いい形でゴールに入ってくれました」
目をキラキラとさせて、木﨑は声を弾ませた。
ファミリーの方々には残念ながら非公開だったとはいえ、多くの関係者が広島経済大フットボールパークのスタンドにつめかけた中で、選手たちは緊迫感に包まれた。「堅かった」とは中村伸監督や近賀ゆかり主将の印象。実際、パスもうまく繋がらず、アンジュヴィオレ広島の組織的な攻守の前にやりたいことができない状況に陥った。その空気を一気に変えたのが、木﨑のスーパーゴールだったのだ。
45×2本+30分の3本マッチで行われたこの試合、1本目の布陣をご紹介しよう。
フォーメイションは4-3-3。ただ、「相手の状況によって臨機応変に」と近賀が語っていたように、1本目は途中から増矢理花が自然と近賀のとなりに落ち、立花葉と齋原みず稀の2トップのような形が多かった。
目立ったのは、やはり代表経験者の近賀と増矢の二人。タイトな守備とコーチングでチームを引き締めた近賀から増矢にボールが入れば、そこから必ずチャンスになった。卓越したボールコントロールを見せる8番は、他の選手たちとは見ている場所が違う。ミドルレンジのパスでの左右への展開やスルーパスで相手の急所をついた。
2本目の8分、近賀の素晴らしい前からのプレッシャーでボールを奪ったシーンでは、近賀からパスを受けた中嶋淑乃の縦パスを齋原が落とし、増矢がワンタッチスルーパスで谷口木乃実の決定機を創りだした。谷口と増矢の呼吸が確立されていれば高い確率で得点が生まれたビッグチャンスだった。
「増矢は特徴がはっきりしていますし、狭いところでもボールを受けられる技術もある。増矢に相手が食いついてくるところをもう一人絡んでくるようになる形をつくれれば」
近賀が言うように、サポートの感覚がチームにもっと生まれてくれば、増矢の技術はもっと生きてくる。そういう意味でも、今はなでしこジャパンの合宿に参加している万能FW上野真実とのコンビが早く見たいところだ。
2本目16分からメンバーは以上のように変わった。
このチームで圧巻だったのは、なんといっても福元美穂のコーチングである。林卓人を彷彿とさせるような大音量の声と具体的な情報提示は、選手たちの大きな助けとなった。よく城福浩監督が「声でプレーしてほしい」と語っていたが、この時の福元がまさにそれ。レジーナの選手ばかりでなく男子の若い選手たちにとっても模範となる姿勢だった。
その福元のコーチングもあり、2本目のチームは攻守に安定。決定機も数多くつくり、アンジュヴィオレを圧倒した。
特に目立ったのはアンカーを務めた小川愛。「青山選手のようなタイプ」と自身を表現していたとおり、広い視野と一発で局面を変えるパスで攻撃を構築。守備の鋭さはこれから成長してほしいところだが、近賀とは違ったスタイルで見事にアンカーを務めてみせた。
また、木﨑・川島・山口の左サイドのトリオも面白い。特に木﨑は偽サイトバックのようなポジションをとりながら全体をコントロールし、川島や山口のアイディア、ドリブルを引き出した。彼女たちに高校選手権優勝の藤枝順心高の中心選手だった柳瀬楓菜が絡んだ攻撃は、見ていて楽しかった。
3本目は相手がメンバーを変えたことも影響したか、レジーナの一方的展開。小川の素晴らしい展開から山口が決めて2-0。大内梨央がスイッチを入れた前線の守備から川島がシュート。こぼれを柳瀬が決めて3-0。そして終了間際には松原優菜のクサビを大内がはたき、フリーになった中嶋が落ち着いて流し込んだ。4-0。最後はゴールラッシュで締めくくり、選手たちはスタンドの拍手に応えた。
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