応援している人がいるかぎり/広島0-1FC東京
開始早々、浅野雄也のクロスがドウグラス・ヴィエイラのヘッドにピタリとあった、その決定的なシュートが波多野豪のファインセーブで止められた。
その時から、嫌な感覚はあった。
青山敏弘のミドルが相手のブロックにあい、それがバーに当たる。ドウグラス・ヴィエイラが振り抜く。シュートは枠外。
このシーンを見た時、勝利はかなり難しいと感じた。
もっとも、負ける予想はできなかった。
それくらい、圧倒的だったからだ。
だが、選手たちを大幅に入れ替えてきたFC東京の必死さは、簡単に破壊できない。
よく「モチベーション」という言葉を使う。それは日本語になおせば「動機づけ」。つまり、勝ちたいという意欲をさらにかき立てるのものということになる。
本来、プロ選手であるならば、モチベーションなどは関係ない。
「応援してくれる人がいる限り」
川辺駿の言葉どおりだ。いつも自分たちを支えてくれる人のことを感じているならば、どんな時でも勝利にこだわるのは当然だ。
だが、この日のFC東京の選手たちには、サポーターへの感謝というベーシックなものに加え、サバイバルへの意識が高かった。
「自分はこの世界で生き残るんだ」
「サッカーで名をあげるんだ」
そんな強い意識が、プレーに現れた。
その代表格が丹羽大輝であり、三田啓貴というベテランたち。
丹羽は終始、声を出し続け、味方を鼓舞し、最後の最後は身体を投げ出した。
63分、東俊希のクロスに柏好文が飛び込んで放ったシュートをブロック。身体を痛めても、闘志は衰えない。
三田は攻撃にリズムをつけ、カウンターの起点となるパスを次々に。
59分に放った決定的なシュートこそ林卓人のスーパーセーブに防がれたが、65分の中村帆高が決めたゴールは、三田の落ち着いたパスから。
今季、主力としてプレーできなかった二人の気迫、意地、決意が、周りの若い選手たちに伝播した。
広島に攻め込まれるのは仕方がない。しかし、絶対に負けない。
そんな強い意志がプレーに込められた。
揺さぶられても諦めない。
最後の最後まで、足を出し、身体をぶつける。
長谷川健太監督に徹底して叩き込まれたであろう基本を忠実に、そして熱量を込めて表現した。
そういう相手を倒すのは、難しい。
だからこそ、先制パンチをぶつけ、追撃のダウンを奪って、心を折ってしまう必要があったのだ。
ただ、気持ちで負けていたとは想わない。
そうであれば、あれほどチャンスはつくれないし、相手を押し込むことはできない。
ただ、人数をかけて引いて守っている相手から得点をとるのは簡単ではない。
気持ちだけで打開できるものでもない。
だからこそ、工夫がいる。
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