SIGMACLUBweb

【編集者ハック※無料】iPadPro12.9インチは編集者の必須ツール①

僕が編集者の端くれになったのは、24歳になった頃だった。1986年といえば、メキシコワールドカップでディエゴ・マラドーナが驚異的な活躍を見せ付けた年で、イングランド戦での5人抜きをNHKテレビで見て、多くのサッカー少年たちが「自分もマラドーナになりたい」と夢見ていた時代である。当時の僕はサッカーよりも野球が好きだった。好きだったのだが、1980年に起きた長嶋茂雄監督解任事件や王貞治引退も含めた、あまりに政治的な動きの数々に辟易し、他のスポーツを積極的に見始めていた時期でもある。例えばラグビー、例えばボクシングなどがそうだ。サッカーもまたその1つに含まれ、1978年ワールドカップ決勝から1982年、1986年とワールドカップを見て、そして様々な意味で衝撃を受けた。

ただ一方で、リクルートで進学情報誌の編集をやり始めたといっても、そんなスマートに全てをこなせたわけではない。むしろ全くの逆で、何から何まで失敗ぱかり。周りの先輩方からは無能の烙印を押され、ゴミ同然の扱いを受けた。いや、実際に「ゴミ」と言われたことは何度もある。

その時、どうして仕事ができなかったのか。どうして失敗ばかりだったのか。

才能?いやいや、そんなところまでは、いっていない。多くのビジネスマン、僕が関わってきた編集の世界に限っても、成功の可否は才能などではない。ベストセラーを連発する見城徹のような編集者になろうとすれば、当然のことではあるが才能が必要だろう。が、彼の足下までたどり着くきたいとか、この世界でなんとか仕事が継続できるレベルになろうというのであれば、才能よりもまず、仕事をきっちりと完結できるかどうかが大切だ。

当時の自分を考えてみれば、何もかもできていなかったのは、間違いない。当時は間違いなく一生懸命にやっていたつもりだったが、一生懸命の方向が違っていた。「頭を使った仕事をする」という発想がなく、ただ言われたことをやろうとしていただけ。しかも、その仕事が何のために存在するのか、なぜこれをやらないといけないのか、全くもって理解していなかったから、そりゃ方向性が違うのは当たり前。仕事は過程ではなく結果が全て。特に僕が勤務していたリクルートとは(今は知らないが)その傾向が強烈な、アウトプットこそ生命線という会社だったから、なおさら「ゴミ」扱いされてしまった。

ギリギリのところでクビを免れた僕は、その後ここまで、なんとかかんとか仕事を続けてこられている。素晴らしい先輩方や周囲のみなさんの助けがあってこそなのだが、もちろん自分も努力しないと継続は無理だ。

では、何をやったのか。

僕はおそらく、その周囲ではわりと早く、デジタルで仕事をし始めた方だと思う。当時はパソコンではなくワープロ。パナソニックから発売された最も新しいワープロを購入し、自己流で覚えた(その名残で僕はカナ入力になってしまった)。自分個人のワープロを持っていた人は、それなりにいたとは思うが、当時のワープロにカルク(表計算)やスケジュール管理のアプリ(当時はソフトといっていた)があったことに着目し、自分の仕事をそのワープロ一台で管理するように心がけた。そこまでやっていた人は、数少ない。

ここで大切だったのは、デジタルでの仕事を始めたことではない。自分で仕事のやり方を考え、そのために自分で情報を収集し、整理し、自分に合うように加工して表現しようとしたことだ。誰かに言われてやる(受動)から自分でやり方を考えて仕事に取り組む(主動)に変わったことで、自分の仕事に余裕と「面白いという感覚」が生まれてきたのだ。それは劇的ではなく、少しずつ少しずつだったのだが。

考えてみれば、編集や記者という仕事は常に「情報収集」「情報整理」「情報表現」という三つの段階を繰り返すことによって進んでいく。その手法そのものがアナログからデジタルに変わったとしても、この三段階をリピートしていく作業サイクルに変化はない。そして編集者であれば、記者であれば、この三段階をいかにスムーズに、いかに軽いフットワークでやっていけるか、そこをしっかりと考えたい。仕事のツールも、やり方にしても、そこへの考察抜きにしてはありえないのだ。

僕がiPadproを仕事のツールとして重用するのも、そこにある。今や、iPadproを抜きにしての仕事は考えられない。極端な話、連絡ツールとしてのiPhone(未だに電話でのやりとりは、仕事上では存在する。かつてと比べればその量は大きく減ってしまったが)とiPadPro(とそのアシストグッズ)があれば、たとえパソコンがなくても仕事は完結できる状況になってきた。かつてはどんな場所でも仕事ができるようにとノートパソコンに加え、モバイルプリンターやモバイルスキャナ、さらに資料やノート、デジタルカメラをカバンに詰めて、重さに耐えながら移動していた時代とは、大きく変わった。

では僕が今、iPadProをどう仕事に活用しているのか。

それをこれからのシリーズで、みなさんにご案内していきたい。

 

(了)

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ