SIGMACLUBweb

【2020SIGMAの戦士】エゼキエウ/みんなに支えられて、新しいチャレンジを

「僕は、サッカー選手なんだ」

いつも笑顔を絶やさないエゼキエウの視線が、一瞬、鋭くなった。

「試合がないことによって、自分自身の仕事が機能できない日々が続いている。そこに慣れていくのは難しいんだ。自分はここに、サッカーをしにきているわけだし、試合がないことによって立場も難しくなる。結婚したばかりの妻もまだ、ブラジルにいる。早く日本に連れてきたいんだけど、現状は難しい」

ブラジルの名門・ポタフォゴでレギュラーを張り、自信と期待をもって日本にやってきた。コンディションの問題を抱え、日本のサッカーに慣れるのに時間も要した。FCソウルとの練習試合では相手のラフなタックルに感情的になり、自分からピッチを去ったこともある。愚痴をこぼすエゼキエウに、レアンドロ・ペレイラやハイネルが厳しくも温かいアドバイスを送って励まし、少しずつ自分の力を発揮できるようになってきた。しかし、ここで試合が延期される。5月9日と再開日が決まりはしたが、その時はまだ家族を日本に呼べる環境とは言いがたいだろう。

不安は募る。当然である。だが一方で、彼には支えもある。自分の力を必要としてくれているという、チームの姿勢だ。

前述したように、ブラジル人の先輩たちがエゼキエウを支えてくれているという側面もある。ドウグラス・ヴィエイラは「初めて海外でプレーすることになって、いつ彼が試合に出るかもわからない。でも、そういうことは自分もそうだったし、誰しも初めての経験はあること。エゼがピッチに立つチャンスを得られるまで、自分たち先輩がアドバイスしてあげることは大切。違う国に来てプレーするのは、そう簡単なことではない。それは自分たちも肌身に染みているし、だからこそ手助けしてげたいんだ」と語った。ドウグラス・ヴィエイラを中心にして強い団結を見せる広島のブラジル人グループの中にいるだけで、彼のメンタルも落ち着く。

一方で、日本人たちも彼をサポートしている。例えば浅野雄也は彼に日本語で突っ込みを入れ、変な日本語を教えてお互いに笑い合っている。城福浩監督は戦術理解を促進するために、積極的に言葉をかけ、動き方・ポジションのとり方などを事細かく、何度にもわたって話を続ける。「チームに必要とされているとは、真剣に思えるんだ」とエゼキエウも頷いた。

外国人選手にとって最も大きな敵は、孤独である。たとえばミキッチは選手には同じ言葉を喋る者はいなかったが、なんといってもミハイロ・ペトロヴィッチがいたし、当時はランコ・ポポヴィッチもいた。尊敬する指導者すが同じ言葉を話すことで、ミキッチはどれほど救われたか。一方で、同じ民族同士とはいっても、ウマが合わないこともある。日本人なら相性がいい者同士で交流すればいいが、数が少ない外国人選手だとそうもいかない。その点、エゼキエウは恵まれている。ブラジル人の先輩にも愛され、日本人とも仲がいい。

あとはプレーで魅せるだけ。ただ、今までは4-4-2のサイドハーフでプレーしていたエゼキエウにとって、シャドーはまだしっくりとは来ていない。PA内への仕掛け、狭い場所で魅せるアイディアは、いずれきっとシャドーの位置で爆発する時がくるとは思うが、今はまだその機会が少ない。ボールを受ける数も少なく、プレー機会も十分ではない。

(残り 1333文字/全文: 2684文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ