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【THIS IS FOOTBALL】攻撃的かつ主体的守備

尋常ではない。サッカーダイジェストの記事にもあったように、大邱の決定機はゼロだった。しいてあげれば後半、セシーニャが放ったミドルくらいで、それも野上結貴が絶妙のポジションどりでブロックしている。大邱はエドガルを投入して勝負に出たが、彼は全く何もできなかった。昨年見せ付けた怖さを、広州恒大から2得点を奪った破壊力を、広島の守備が消し去ったのだ。

筆者は「攻撃的なサッカーが観客を動員する」などという都市伝説は信じない。それはミハイロ・ペトロヴィッチ政権下で、今の札幌や浦和よりも遙かにロマンティシズムに満ちた攻撃的サッカーを示していた時の広島の観客動員が、そのサッカーほどのアグレッシブさで伸びてくれなかったという実体験から実感している。

サッカーの、スポーツの部分で観客を呼び込むのは、まぎれもなく結果だ。それは2012年が証明してくれている。しかし皮肉なもので、勝利が続くと人は慣れてしまう。刺激が薄れる。昨年、快進撃の中でも観客動員は決して爆発力をもたなかった。それはサンフレッチェ広島だけのことではなく、1975年から続いた10年にも及ぶカープの黄金時代でも、同様の悩みを抱えていたのだ。20冠という常勝軍団である鹿島にしても、昨年の平均動員数は19434人。あの立地で凄い数字ではあるが、浦和(35502人)やFC東京(26432人)には及ばない。立地そのものでいえば、埼玉スタジアムも味の素スタジアムも、決してアクセスがいい場所でもないのだ。

観客動員をあげるにはどうすれがいいか。勝つだけでもダメだし、試合内容なども動員そのものには大きく影響を及ばさない。クラブ力が問われる部分もあるのだが、それも限界がある。川崎Fはチーム成績の向上と営業力の強化で23218人/平均という素晴らしい動員を記録したが、それは等々力陸上競技場が駅まで歩いていける上に、近年各方面で注目を浴びている武蔵小杉という立地を抜きにしては、考えられない。名古屋の観客動員も伸びていて、それはもちろんJ2降格の時に営業面で改革を行ったことも大きいが、名古屋から約1時間というアクセスの問題を抱えながらも、行けば日本屈指の屋根付きサッカースタジアム(豊田スタジアム)が存在する価値も大きい。立地やスタジアムだけでは動員増は難しくクラブの努力や成績も重要であるが、様々な要素が組み合わさって初めて、動員増は実現できる。

話はそれた。広島の守備の話である。

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