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【2019年ACLプレーオフ】僕に任せてください/大迫敬介


誰にでも「初めて」はある。

サッカーだけではない。たとえば営業の仕事でも、研修期間を終えて初めて取引先を任せられる時は、やはり緊張するものだ。それは本人だけではなく、周りも、特に抜擢する上司は胃が痛くなる。

それは取引先に対する憂慮ではない。もちろん、大切な顧客に失礼はないか、いいサービスや提案ができているか、落ち度はないのか、気になることは前提だ。しかしそれと同じくらいに心配なのは、ルーキーが失敗することによって自信を失い、仕事へのモチベーションをなくし、潰れてしまいはしないか、ということだ。

部下に成功してほしくない上司はいない。もちろん、部下の育成が上司の評価に繋がるからでもあるのだが、何よりも自分が指導した若者が成長した姿を見るのが嬉しいのだ。それは、筆者の数少ないマネジャーとしての経験で考えたことではあるが、その感覚は決して間違っていないとと確信している。

目先の結果を出すことだけを考えれば、実績者を優先すればいい。たとえ結果が出なかったとしても、言い訳ができる。一方、経験に乏しい若者を使って不具合が出てしまうと、「なぜ彼を起用したのか」という批判は免れない。だが、その論理で言えば、若者は永遠に起用されないことになり、そのグルーブの未来は消える。

未来を考えるリーダーは「若者の初めて」を許容しないといけない。「初めて」の若者に託す勇気を持たなければいけない。それが原理原則である。しかしそれは、言うほどに簡単な作業ではない。「結果」を何よりも優先させないといけないし、一方で結果を無視していい状況での抜擢では成長につながらない。登用するのであれば、腹をくくるしかないのだ。信頼して、できると信じて。

城福浩監督は大迫敬介の抜擢の可能性について、こんな言葉を口にしている。

「シュートストップに関しては、昨年から秀でたものがあると感じていた。もちろん、フィードや判断や課題もあるけれど、それは試合に出ないと学べないこともある。そこに関しては、むしろ我々(コーチ)の側がどれだけ我慢をしてやれるか。トレーニングでのパフォーマンスをフェアに見てやりながら、自信をもって送り出す。とにかく、選手を信じてやることが大切だと思っています」

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