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【スタジアム論】サッカーアリーナという考え方

最終節の札幌戦は、森崎和幸のラストマッチや新しい希望が見えた試合という意味でも大きかったが、それと同じくらいに「スタジアム」という観点でも、考えさせるものが多かった。

アクセスは決していいとは言い難いなと感じてしまったのはおそらく、マツダスタジアムという駅から徒歩15分の距離にあるスタジアムが身近にあるからだろう。実際、JR札幌駅から地下鉄さっぽろ駅へと乗り継ぎ、福住駅から徒歩で札幌ドームまで、ネットで調べると36分という数字が出た。広島駅からエディオンスタジアム広島までが約1時間という数字。データからもアクセスには決して問題はない。

この日、前日からの雪が降り続き、道は凍結。タクシーが度々スリップするなど、歩くことすら(北海道民以外は)難しい状況。もちろん、寒い。気温は氷点下。もし、広島でこういう天候下だったら、間違いなくエディオンスタジアム広島への集客はガタ減りになるだろう。だが、札幌ドームは今季最高の約3万4000人のサポーターが入った。どうしてそんなことが起きたのか。札幌の人々は「当然」と感じているのかもしれないが、札幌ドームの快適さ故なのである。

何よりもまず、暖かい。雪がちらついていた当日の札幌市内だったが、その雪で濡れる心配もない。当然だろう。ドームなのだから。だが、その「当然」が嬉しいのだ。

観客席を歩くと、たくさんの店舗がある。飲食、グッズ。もう数え切れない。地元・札幌の名物からサブウェイやケンタッキー・フライドチキンのようなチェーン店まで。味やクオリティーについては、広島も決して負けてはいない。だが、広島や他のスタジアムの場合は、雨が降るとグルメを楽しむことも難しくなるが、ここはドームだ。コンコースの一部には大きな階段があって、そこで多くの人々が座って食事を楽しんでいるし、自分の席に座って食べても何の問題もない。オープンエアの屋台の場合は保健所の指導が厳しく、調理法にも制限が加えられて「やりたくてもできない」メニューが存在するが、ここは室内だ。キッチンはスタジアム内に設置されているから、制限はほとんどないに等しい。このスタジアムには大きな可能性を感じた。日本ハムファイターズが新球場をつくるのは、札幌ドームのポテンシャルとは違う問題である。

たしかに屋根付きのスタジアムだとオープンエアの開放感がない。だが、日本のように梅雨があり、雪も降り、夏は猛烈な暑さと湿気が襲ってくるような場所で、天候に関係なく開かれるサッカーの観戦が数ある娯楽の中で選ばれるのだろうか。たとえばバスケットやバレーボールは、外にコートがあったりして必ずしも室内だけでプレーするスポーツでもないが、プロは(トップレベルは)室内だ。バスケットボールファンは、オープンエアの開放感を口にはしない。野球のように「雨天中止」のスポーツであれば、マツダスタジアムのようなオープンエアのボールパークの良さが十分に伝わる。しかしサッカーは、雨天も関係ない。今季、柏戦では台風が日本列島を襲ったという状況でも開催された。いい悪いではなく、そういうスポーツにおいて、屋根付きスタジアムは今後の検討材料に入ってくるのではないか。

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