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【チームの未来】新・黄金世代の台頭への期待

非常に厳しい状況に陥った。それはもちろん、優勝に向けて、である。

ただ、あと1勝すれば札幌の成績次第で2位以上が確定するという2018年シーズンが「失敗」というレッテルを貼られるはずもない。しかも、過程として考えても、悪くはない。さらに、まだ数字上の優勝の可能性は断たれていないわけで、諦めることなく戦えば栄光を手にすることもできる。それは2試合で勝点5差をひっくり返した2013年が証明している。

考えてみるとこの苦境は、2007年と似ている。シーズン当初は内容と結果が伴っていたあの年だったが、途中から非常に難しい状況に陥った。夏場のリーグ再開以降、7試合勝利なしの5連敗。さらに9月15日の対浦和戦から12月1日の対G大阪戦まで、5連敗を含む10試合勝利なし(3分7敗)。あっという間に順位は転落し、入れ替え戦でも勝てずにJ2に降格した。今年は前半戦の快進撃があり、再開以降もなんとか踏ん張っていたから、4連敗という状況にあっても2位を保つことができる。人生でもそうだが、やはり貯金は大切だ。

この信じがたい降格劇の後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(当時)は「特定の選手を信頼しすぎた」と敗因を語っている。当時、前線に佐藤寿人とウエズレイという強力な2トップが存在していた。ウエズレイはリーグ中断前の13試合で11得点。佐藤寿人は7得点。2人で13試合18得点も叩きだせば、それは彼らに得点という部分で頼ってしまうのは当然だろう。だが中断明け、各チームからの徹底マークにあうと、ウェズレイは残り21試合で6得点で寿人は5得点。特にウェズレイは第26節以降の8試合でノーゴール、寿人も第19節〜29節までノーゴールという不振に陥った。しかし、ペトロヴィッチ監督は彼らを信頼し、2人をスタートから使い続けた。

ただ、2トップだけが「不振」だったわけではなく、そもそもビッグチャンスもそれほど創れてはいなかった。チームの攻撃面を牽引した柏木陽介や青山敏弘らがシーズンの後半になるにつれて疲労の色が濃くなり、特に青山は北京オリンピック代表アジア最終予選との掛け持ちも。本人が否定しても肉体は嘘をつかない。これまで1年を通してシーズンを戦ったことのない若者たちは、肉体も頭脳も疲労物質にまみれていた。チャンスがつくれず、得点もとれない。守備組織が未整備だったこともあり、カウンターを何度もくらって失点を繰り返す。だが、ペトロヴィッチ監督はスタートリストを変えない。期待の新加入・ストヤノフもコンディションがあがらず、実力を発揮できたとは言い難い。

こう書き連ねると、どこか今年と似ている。得点源が特定の選手に偏っていること。選手たちの疲労。期限付き移籍から期待を込めて戻ってきた高萩洋次郎は、わずか3試合の出場に終わっていることも、どこか川辺駿を連想させる。

違うのは、当時の広島には柏木や青山敏弘、槙野智章など若い選手たちが既に指揮官の信頼を勝ち取っていること。カズや浩司、寿人にしてもまだ20代半ば。チーム全体として若さが充満していたことだ。今年は、主力のほとんどが30代。20代の佐々木翔や稲垣祥、和田拓也にしても、当時のカズ・浩司・寿人よりも年上だ。

それでも、筆者はポジティブになりたい。

まずはJ1残留が既に決まっていること。2位とかACLはまだ決まってはいないが、ほぼ上位でのフィニッシュが見えていること。しかもこの終盤の苦しみで、チームに大きな危機感が生まれていること。特に「残留」が決定していることは、本当に素晴らしい。柏や鳥栖のような大型補強もできるチームが降格圏に沈み、名古屋や横浜FMのようなビッグクラブにしても危険水域に突入している中、広島の立ち位置のなんと幸せなことか。

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