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【横浜FM戦に向けて】靴一足分の寄せを思い出そう

広島は中3日、横浜FMは中9日。台風の影響とはいえ、いびつになってしまった状況がある。だが、城福浩監督は「そこは関係ない」と言い切っていた。「中3日だし、まだ連戦は始まったばかり。我々の選手たちのコンディションはいい」と。

だが、2週間も広島戦に向けて準備していた休養十分のC大阪に敗れた試合を思い返せば、最終的には広島は走り負けている。横浜FMは広島への準備時間こそ短いものの、この酷暑の日々の中で休養がとれたことは広島に対して大きなアドバンテージとなっているはずである。

その中で気になるのは、やはり新CBのドゥシャン・ツヴェティノヴィッチであろう。186センチ・79キロという堂々たる体躯を持つセルビア人で、スイス・ノルウェー・フランスで活躍。堅牢な守備だけでなく足下にも多彩な技術を持つという。前評判はともかくとして、とにかく情報がない。中澤佑二とのコンビネーションはまだ確立されていないだろうが、広島としても彼に対する攻め所が難しいと見なければならない。

横浜FMは当然、ボールを持ちたがる。そして、攻めたがる。再開2試合で10得点。一方、2試合で7失点。なんとも派手な展開で1勝1敗という戦績。面白いといえば面白い。ただ、まぎれもなくスキはあるチームだ。

FC東京戦でのボール支配率は66%を越えた。だが、シュートは二桁に届いていない。決定的なチャンスは5失点してFC東京が緩むまで、ほとんどなかったといっていい。失点にしても「崩されていない」と認識することもできる。しかし太田宏介のFKによる先制点はともかく、試合の流れを決めた田邉草民のミドルがディエゴ・オリヴェイラに当たって入るという2点目は確かに不運とはいえ、やはり「撃たれている」場所まで運ばれていること、「撃たせている」という寄せの甘さは否めない。2点差を取り戻そうと、さらに攻撃に躍起となり、カウンターを食らう。攻撃的思想を持つチームの陥りがちなワナである。

ただ、この時の横浜FMにはウーゴ・ヴィエイラがいなかったことを忘れてはいけない。もちろん、仙台戦でハットトリックを決めた伊藤翔の能力は疑うまでもなく、広島としては「キラー」でもある彼のスピードは嫌だ。だが、決して派手なドリブルなどは見せなくてもストライカーであるウーゴ・ヴィエイラの得点能力もまた、疑うまでもない。昨年、広島は横浜FMを相手に天皇杯で最高の試合内容を見せながら、彼の3得点で沈んだ経験を持つ。今季もここまで8得点。実績も積んできた。ここ最近の彼はポステコグルー監督から絶対的な信頼を得られずにベンチスタートを続けてきたが、広島戦ではスタートから出てくることが予想される。フィニッシャーとしての彼は、やはり脅威である。

さて、浦和戦でも名古屋戦においても、広島は相手の対策に苦しんできた。パトリックは走りスペースを消され、ゴール近くでは自由がない。また、名古屋の時には縦横無尽のプレーを見せた右サイドも浦和戦では存在を消されていた。ボールを持たされ、スペースを消され、窮屈なプレーを強いられる。一方で前に引き出されたことでカウンターの受動回数が増幅してしまい、大量失点の憂き目にあった。

もちろん、今季の横浜FMの思想から考えて、ボール保持を捨てるとは思えない。極端な守備志向になるはずもないが、パトリックへの対策は当然、うってくる。自由を決して許さないだろうし、クロスを入れられても中を締め、弾き返そうとするはずだ。難しい状況に陥るのは当然だし、勝ち点41を18試合で稼いでいるチームに対して「無策」はありえない。

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