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トライを繰り返せ/工藤壮人

 

本来の工藤壮人は、もっとシュートを打つはずの選手である。

たとえば2013年、キャリアハイとなる19得点を決めた時の平均シュート数が2.42。2014年、7得点と得点数が伸びなかった時も2.03本/試合を記録している。一方、今季はここまで1.83本/試合という数字。柏時代から比較して、明確にシュートを撃てていない。

柏の頃から彼をずっと見てきたジャーナリストは、こんな言葉で「工藤壮人」を説明してくれた。

「工藤は決して技術的に高いものをもっているわけではない。シュートを外すことも少なくない。だけど、トライは何度も繰り返す。1度外しても、2度外しても、3度目で決めるんです」

そう。工藤壮人の魅力は、なんといっても「トライし続ける姿勢」にある。というよりも、ストライカーとは「失敗を重ねる」ことが仕事のようなものなのだ。

たとえば2013年、工藤の19得点を上回る得点数をあげたのは4人。そのうち、彼がシュート数で上回ったのは川又堅碁の1.88本/平均(当時新潟・現磐田)だけ。得点王に輝いた大久保嘉人(当時川崎F・現FC東京)は3.12本/平均。柿谷曜一朗(C大阪)は2.73本/平均で、豊田陽平(鳥栖)は2.60本/平均。彼らは得点の数でも失敗の数でも工藤を上回っていたのだ。

もちろん、ストライカーであるならば、少ないチャンスでも決めてほしい。だが、2002年の佐藤寿人も、88本のシュートを打って22点を決めている。逆にいえば66本のシュートを外しているわけだ。1試合平均1.94本もシュートの失敗を重ねた結果としての22得点だった。今季の工藤は、1試合平均1.5本しかシュートを外していない。19得点を決めた2013年の彼は1.84本/試合だったことを持ち出すまでもなく、ストライカーの場合はこの失敗数が得点数に比例していることは事実だ。

今季の工藤の苦しさは、そもそも「シュート」というトライができていないことにある。

たとえば、札幌戦でも柏戦でも、フェリペ・シウバのパスから決定的なシーンを迎えたことがあった。工藤がこの場面を決めていたら、結果は変わっていただろう。そういう意味で、試合後の彼から「責任」という言葉も漏れた。

だが、前述のジャーナリストの言葉を借りれば、あるいはストライカーが失敗するという前提に立てば、トライする総数が足りないことの方がよほど問題なのだ。つまり、工藤に対して「トライしろよ」というボールをどれだけ供給できているか。それが問題なのである。

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