【コラム】見逃せない歩み
前半のうちに幸先よく先制点を奪うと、後半も効果的に加点し、かたや最後まで相手にゴールを許さない。天皇杯2回戦、ベルマーレは栃木県代表のヴェルフェ矢板に3-0の勝利を収めた。
「入りにバタバタしてしまった」福島隼斗が前半をそう振り返ったように、ボールを握る一方でミスも散見された。自陣でのロストを機にシュートまで持ち込まれ、相手陣内に展開しても最後の意図がかみ合わない。
4-3-3を組む矢板の鷹觜倫弘監督が守備の狙いを明かす。
「湘南さんが3バックでワイドの選手が少し低い位置でボールを取り出しに来ることはある程度想定していたので、そこを前の3枚でいかに制限をかけるか。そうなるとおそらく内側で永木(亮太)選手や平岡(大陽)選手がボールを取り出しに来るだろうと。そこをうちのインサイドハーフの選手が捕まえにいくことで、リターンとか変えてくるところをプレスのスイッチにしようと話していました」
前から連動し、自陣に展開されながらも粘り強く応戦する矢板に対し、しかしベルマーレもプレーを重ねるごとに呼吸を合わせていく。20分過ぎには高橋諒のクロスに瀬川祐輔がヘッドを合わせ、これはクロスバーに嫌われるも、32分、福島のロングフィードをウェリントンが頭で繋ぎ、叩きつけた瀬川のシュートが矢板ゴールを強襲した。
先制直後のカウンターによるピンチを凌ぎ、1-0で折り返すと、次の得点機は60分だった。左サイドに流れた瀬川がサイドチェンジを送り、いち早く反応した永木亮太がゴール前に進出して、マークをかわし冷静にシュートを仕留める。さらに82分には、セカンドボールから鈴木淳之介が縦に出し、若月大和のラストパスに鈴木章斗が鮮やかに応えた。
天皇杯特有の難しさをはね返し、複数得点無失点で勝ち切った事実は意義深い。ゴールから遠ざかっていた瀬川や永木に得点が生まれたこと、またルーキーの鈴木章がプロ初ゴールを記したことも大きかろう。なにより目を引いたのは、ここまでエリートリーグを中心に出場しているメンバーの繋がりだ。連続失点を喫したり、なかなかフィニッシュまで至らなかったりと、エリートリーグでは攻守にちぐはぐさが垣間見えていたなかで、この日は永木ら経験豊富な選手が支えていたとはいえ、個々に視野と選択の幅を広げ、周りと意識を繋げてプレーの最適解を見出すさまが随所に窺えた。
「チーム全体でやりたいプレーが分かってきているので、それをみんながどんどん活かしてやれているのではないかと思います」鈴木章が指摘すれば、その鈴木章のゴールをアシストした若月も、「周りをつねに見て、(状況の)いい選手を選択して、逆に自分もいいシーンがあったときにボールを受けられるように準備している」と繋がりの意識を口にした。
来るルヴァンカッププレーオフステージやリーグ戦に向け、矢板戦は結果と内容にチームの成長を映した得難い一戦となった。
reported by 隈元大吾
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