縦に紡ぎし湘南の

【付箋】スポーツイラストレーターりおたさんに聞きました

「キングベルI世LINEスタンプ」をはじめ、湘南ベルマーレの選手の似顔絵やグッズのデザインを手掛ける山口県在住のスポーツイラストレーター、りおたさん。クラブとの縁やこれまでとこれからについて、お話を伺いました。

りおたさんの自画像

――イラストレーターになるまでの歩みを教えてください
「似顔絵が好きな父の影響で幼いころから絵を描き始め、小学生の頃にはイラストレーターになりたいと思っていました。当時からサッカーが好きだったので、サッカー選手の似顔絵を描いては雑誌の似顔絵コーナーにひたすら投稿していましたね。
中高と美術部で活動し、その後は地元にあるデザインの専門学校(YICキャリアデザイン専門学校)に通いました。卒業したら東京で下積みを数年してからイラストレーターを目指そうかなと思っていたんですけど、卒業をまえに上京した際、日常的に持ち歩いていた自分の作品集をたまたまサッカーダイジェストさんに持ち込んだら、1人すごく僕の絵を気に入ってくださった編集者さんがいて。その方が編集長を務めることになった『サッカーダイジェストテクニカル』という小中高生向けの技術系専門誌のコーナーで描いてみないかと誘っていただき、たとえばメッシが切り返して抜こうとしている様子や、香川真司が後ろからボールをもらってワントラップでディフェンスラインを突破しているシーン、1コマ漫画、4コマ漫画など、駆け出しとは思えないぐらい毎号たくさんのイラストを描かせてもらいました。それがいまに至るきっかけです」

――特徴的な絵柄が目を引きますが、以前から現在のようなテイストだったのですか?
「小学6年生ぐらいにはもういまのような絵を描いていたみたいです。というのも、当時の絵しか知らない同級生が、たまたま僕が描いたポスターを町で見かけて、『あの絵、おまえやろ』と言ってきたんですよ(笑)。『小学生のころの絵しか知らんのになんで分かるん?』と訊いたら、『全然変わってないから見れば分かる』と。不思議なものだなと思いました。これが個性というか自分の絵の強みなのかなと確信できた瞬間ですね」

――デビューしたのち、活躍の場をサッカーダイジェスト本誌へと広げていきます
「テクニカルさんで長く描かせてもらっていたところ、本誌のクラブ特集で選手全員の似顔絵を描くなど年に何回かお仕事をいただくようになり、リニューアルに伴って『りおたの描いちゃってイイんです!』という連載もさせていただきました。そうした過程のなか、レノファ山口FCさんから声をかけていただき、選手のイラストを描かせてもらったりイベントをやらせてもらったりするようになりました。地元山口での仕事も増え、ユニクロさんのイベントやボートレース徳山さんのポスターのデザイン、また町で出会った方の似顔絵を描くケーブルテレビのコーナーなどもさせてもらっています。いま振り返ると、サッカーの似顔絵イラストが人生の大きなターニングポイントになっている気がしますね」

――湘南とはどのように繋がったのでしょうか
「一昨年だったか、以前から僕のことを知ってくださっていたフロントスタッフの方からお仕事の打診をいただきました。僕としてはJクラブのオフィシャルの仕事をずっとやりたかったので、夢が叶うと思い喜んでお引き受けしました」

――そして「キングベルI世LINEスタンプ」が最初の仕事となります
「まずは僕のほうで怒るとか笑うといったパターンを80通りから100通りぐらい言葉で考え、そのなかから欲しい表情をクラブに選んでもらい、言葉をもとにラフを描きました。そのうえで、もう少しこうしてほしいという要望をいただきながら、仕上げていきました。自分なりに可愛くアレンジしたつもりですが、僕は当初キングベルを人間と同じ感覚で捉え、乳首とでべそを脚色して描いていたんですね。でもオリジナルにはないので、指摘されて反省しました(笑)。いまはきちんとオリジナルに基づいて描いています。もっともっとこれからも可愛くて愛される、いまにも動き出しそうなキングベルを描いていきたいですね」

キングベルI世LINEスタンプ©湘南ベルマーレ

――LINEスタンプをきっかけに湘南での仕事も広がっていくのですね
「はい。スタンプの評判が思いのほかよかったとお聞きして以降『キングベルマグカップ』やPILOTコラボ商品の選手似顔絵パッケージの『湘南ベルマーレオリジナルフリクションいろえんぴつ』、2017年に入ってからは『湘南ベルマーレ×HAN-KUNコラボアクリルキーホルダー』『スプラッシュサマー~Heat up SHONAN 4Days~の限定イラストグッズ』なども手掛けさせていただきました。9月30日にはベルマーレさんのホームゲーム(第35節金沢戦)で似顔絵イベントにも招いていただいたりと充実させてもらっています」

――湘南でのお仕事はいかがですか?
「すごく楽しいです。が、しかし、ベルマーレが大好きな絵描きさんはきっといると思うので、正直言うと、湘南にゆかりのないよそ者の自分がこうして描かせてもらっていることに少しうしろめたい気持ちもあるんですけど、でも遠い地で自分の描いた絵がサポーターさんに届いたり、スタジアムで声をかけてもらったりするのはすごくうれしくってたまらないというか本当にやってよかったなって思える瞬間がたくさんあり過ぎてウルっと来ますね。とくに地元山口にベルマーレがレノファとのアウェイゲームでやってきたときはいろんな想いが重なって胸が震えました。このご縁をこれからも大事にしたいと思います」

イラストレーターの仕事について語るりおたさん。(photo by 山本光知さん)

――イラストレーターとして今後どのようなビジョンを描いていますか?
「そうですね……サッカーのほうでは思い描いていたことがある程度できるようになってきたもののイラストレーターとしての成長や、幅広さの目線で考えると若干の伸び悩みを感じるので、現段階の殻を打ち破るためにも、いまの仕事を大切にしつつ、まだ手を付けていないジャンルも今後伸ばしていきたいと思っています。いまはとくに野球選手の絵に取り組んでいます。
なにより、自分の絵が形に変わったときの喜びが僕のなかではすごく大きいので、グッズやポスターといった方面をもっと突き詰めていきたいですね。有名なイラストレーターになりたいという想いは漠然とありますが、遠いところよりも一歩ずつ地道に考えるほうが性に合っているので、もう一歩二歩がんばればなんとか届きそうな、もがけばなんとか掴めそうなところを目指し、その連続の結果、求める夢や目指していきたい到達点に辿り着けるんじゃないかなと」

――最後に、この仕事をするうえで大事にしていることを教えてください
「描いていてつまらないと思ったらその時点で絵がすごい勢いで死んでいくので、少しでも集中力が落ちたらすぐに気分転換するようにしています。よくも悪くも全部出ちゃう正直者というか(笑)自分自身の心がイキイキしてないと良いものって絶対に生み出せません」

――言い換えれば、描くことを全力で楽しむ
「『たのしめてるか。』ということですね(笑)」

*来る9月30日、第35節金沢戦の試合前には、りおたさんの似顔絵ブースが登場します!(詳細)皆さんも是非りおたさんの似顔絵を体験してみてください。
*インタビュー:9月9日 取材協力:山本光知さん、秦智恵美さん

筆者も似顔絵を描いていただきました。激似!

スポーツイラストレーターのりおたさん。維新百年記念公園陸上競技場の前で。

reported by 隈元大吾

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