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☆☆☆無料記事☆☆☆~ドキドキのPK戦はなぜ完勝だったのか~【聖籠ノート】Text by 冨高由紀(フリーアナウンサー)

6月の連戦は、リーグ戦にルヴァンカップ、天皇杯の試合が加わりました。トーナメント方式なので、もつれれば、勝敗はPK戦で決着を付けることになります。実際、天皇杯の北九州戦はPK戦に突入。そして選手たちの胆力が、がっちりと勝利をたぐり寄せたのでした。この記事は、無料でお読みいただけます。

■当初の順番では

6月、連戦が続く中、トーナメント方式のルヴァンカップと天皇杯は、もつれた場合にPK戦で勝敗を決めるとあって、昨年の天皇杯での無念さ(準々決勝・川崎フロンターレ戦。試合終了間際に早川史哉選手の劇的なゴールで2-2に追いつくも、延長の末、PK戦で●3-4)を思い返すと、練習に時間を割いたのではと思っていた。しかし、松橋力蔵監督にうかがうと「特にはやってないです。連戦で移動もあってそこまでの時間は取れなかったし、そこ(PK)に行くまでに決められれば……」と、もつれる前に決着を付ける想定のようだった。

そんな中、12日(水)の天皇杯2回戦のギラヴァンツ北九州戦は、延長を終えて4-4の同点で、PK戦へ。新潟は3選手がきっちり決め、GK阿部航斗選手が相手のシュートを2本止めて勝利をたぐり寄せた。

PK戦の順番をその場で決めたのは、セットプレー担当の渡邉基治コーチ。「いつも練習しているときの感じと、当日のプレーを見て疲れているとか、自信がありそうとか、選手に順番を伝えたときの反応……いろいろ考えて決めた」のが、「鈴木孝司、秋山裕紀、堀米悠斗、早川史哉、島田譲」の順だったそうだが……、この日、同点に引き戻す貴重なPKを決め、さらにPK戦でも新潟の2人目に蹴ってゴールを決めた孝司選手が、後日、「いつもは事前にPK映像を見るんですけど、北九州戦は見ていなかったんです」と明かしてくれた。

「1試合で同じキーパーと2回PK対決するのはなかなかない経験で、僕は多分初めて。『どういうキーパーか、タイミングや相手をもう少し見られたらな』と思っていたので、裕紀に順番を変わってもらいました。裕紀への信頼感があったし、別に1人目でも2人目でも変わらないですから。

それに自分が1人目だと、連続でのPKになるので、そこのリズムもちょっと変えたかったし。少し蹴りづらさはありましたけど、最終的にしっかりまた自分のペースで逆を突いて決めることができました。1つ1つ雑にならずに勝負に徹することができたし、僕の前で相手が外したので、そういった意味でも次の1本がすごく大事になる局面で、その1本に対する集中力というのをしっかり持って蹴れて良かったです」

一方、裕紀選手に聞いてみると、こちらも“なるほど!”と思わずうなずいてしまう答えが返ってきた。

「最初、孝司さんが1人目というのは基治コーチから言われていましたけど、即座に『俺、行きます!』と言って一番に蹴りました。相手GKの(大谷)幸輝くん(元新潟)が自分のくせをある程度、分かっていた部分があったので、(逆を突けば)確実に決まるというのはちょっと思っていました」

さらに新潟のGKである航斗選手は、北九州戦の1週間前、5日(水)のルヴァンカップ・プレーオフラウンド第2戦V・ファーレン戦での登録ミス事案以降、「メンタルのコントロールは正直厳しかった」という状況を見事乗り越えて、2本のPKストップ。

指揮官も「チームを勢いづかせようと自ら先頭に立った秋山選手も良かったし、阿部選手が(シュートを)止めて試合を終わらせたのが何より素晴らしかった」と賛辞を贈った。

コーチの鋭い目線に、副将の知恵とベテランの経験値、想定外をも乗り越えたGKの鬼メンタルが加わり必然の勝利だったPK戦。

次回もさらなるドラマを期待しつつ……ハラハラしすぎるので、できればそこに行くまでに決着を!

【プロフィール】冨高由喜(とみたか・ゆき)/兵庫県出身。新潟市在住。Jリーグ元年は横浜フリューゲルスとガンバ大阪の大ファンで頬に「モネール」と書きながら「大阪ガンバ、パナーッソニックガンバ!」と歌い踊る。新卒で新潟のTV局アナになるがあまりに関西弁で使えず、好きなサッカーの取材に行ってこいと外に出され、行ってみたらアルビ開幕7連勝! そこからアウェイも家庭用ビデオカメラを持ち独り夜行バスで通い、ホームは報ステややべっちFCのアルビ原稿も担当。Jリーグはドラマだ、魂だ! と、当時北朝鮮代表だった安英学氏を主役にドキュメンタリー番組を制作し、全国から感想のお手紙をいただく。一度目の昇格時には当時のキャプテンが奥さまをベンチに呼び寄せ、優しく口づけしたのを目撃し、以後そのような名場面を取材すべく邁進。岡ちゃんやザッケローニ氏にも握手してもらう。2020年に独立し、聖籠通い再び。昨年は国際ユース大会のスタジアムMCを務めたほか、ライター仕事やラジオの生放送で毎週アルビ情報をお伝え中。

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