ニイガタフットボールプレス

☆☆☆無料記事☆☆☆「新潟も町田も“理想的”ではなかった」【頼もう!感想戦 feat.北條聡】~第17節vs FC町田ゼルビア vol.1~

何だかモヤモヤしていたんです。『町田にボールを持たせて、勝った』という捉え方に。まるで、新潟がボールを持つことを放棄したかのようなニュアンスがどことなく感じられ……。北條聡さんとの感想戦で、そんなわだかまりは吹き飛びました。新潟が徹底的にハードワークして、要所に注力したからこそ、町田は保持せざるを得なくなったのです。今回の感想戦vol.1は、無料でお読みいただけます。

■クロスが重要なポイントだった

――今回もよろしくお願いします!

「町田から今治には、いつ戻ったの?」

――試合翌日の夜行バスです。

「夜行バス! すごいね。どのくらい時間がかかるの?」

――12時間です。乗っている時間にさえ目をつむれば、今治駅前から渋谷まで乗り換えなし。非常にアクセスしやすい取材現場なんですよ、首都圏は。

「体力、要るでしょ? 若い証拠だね。そして町田戦、夜行バスで往復した甲斐があったね」

――本当に。

「非常に興味深い試合だった。この表現が適切かどうか、ちょっと分からないんだけれど、新潟が“町田化”したと感じた。

象徴的だったのが、1対1での守備。試合を通して、そこで新潟が町田に負けなかったことが、一つの大きなポイントになっていたと思う。

今シーズンから、Jリーグの公式ホームページでいろいろなスタッツが見られるようになって、その項目の一つに『1対1勝利総数』というのがある。その1位が町田で、新潟は最下位なんだよ。

サッカー的に新潟はボールを保持する時間が長いから、他のチームに比べてシンプルに守備機会が少ないというのはある。とはいえ、1対1で町田に優位性があるだろうと予想した人は少なくなかったはずだよ。

ところが実際は、新潟が互角以上の戦いを繰り広げた。今回の勝利につながる一つの要因だったよね。

これを体現していたのが、秋山裕紀選手だった。際のところで、めちゃめちゃファイトしていた。スピードのある平河悠選手に負けじと付いていって、クロスを上げさせないプレーとか、非常に印象的だった。

クロスも、この試合のポイントの一つでさ。町田と対戦するチームは、みんなスカウティングしていると思うんだけれど、町田はクロスからの得点が非常に多い。オ・セフン選手という頼れるターゲットがいて、そちらに気を取られすぎると、その近くで藤尾翔太選手に決定的な仕事をされてしまう。クロスからの町田の攻撃は、とにかく厄介なんだ。

右サイドバック、鈴木準弥選手の存在も大きい。フリーでクロスを上げさせようものなら、ピンポイントでビシッと合わせられてしまう。だから、鈴木選手へのアプローチも不可欠なんだ。

でさ、試合映像を見てもらえると分かるんだけれど、新潟は中締めしてゴール前で密集して守るんだけれど、同時にワイドの選手に対して、必ず誰かがアプローチに行っていた。理屈では分かっても、これを実践できるかはまた別の話で。新潟は試合開始から最後まで、忠実にそこをやっていた」

■この試合にかける新潟の選手たちの思いがプレーに現れていた

――ほぼ、町田に効果的なクロスを上げさせませんでした。

「隠れた勝因だよね。その重要性が分かっていても、クロスを上げさせないということを、Jリーグのチームは意外にできていなくてさ。俺はいろんなところで指摘しているんだけれど、そもそも日本人選手はクロスが下手なんだよ。ヘディングが強い選手も限られていて。だから守る側が痛い目に遭うことが少ないし、クロス対応の甘さにつながっていると俺は思っているんだ。

ところが町田にはオ・セフン選手がいて、クロスが入りさえすれば、ほぼほぼ決定機になってしまう。精密機械のようにクロスを入れる鈴木選手もいるし。クロスの対応が甘くなれば、即、失点につながりかねない。新潟もスカウティングしていたはずだし、それを踏まえて選手たちが忠実にやるべきことを実行した。それが大きかった。

1対1のバトル、クロスを上げさせないことに加えて、相手ボールになったときの切り替えもすばらしかった。いわゆるカウンタープレスに、新潟の前線の選手たちはとても意欲的に取り組んでいた。

もちろん、これまでの試合でもサボるような選手はいなかった。でも、町田戦では速い攻撃をさせない、あるいはロングボールを蹴らせないという守備がしっかりできていたし、際立っていたよね。

それによって何が起きたかというと、町田の攻撃が完全にスローダウンしちゃったわけ。新潟のプレスを回避するために、時間を費やしてボールを動かさざるを得なくなった。町田からすれば、無駄に手数を掛けさせられた感覚があっただろうね。

町田の試合がこういう展開になるのは、珍しいケースなんだよ。この試合の最終的なポゼッションは新潟が53パーセント、町田が47パーセントだった。だけど平均でいうと新潟は58パーセントでリーグトップ、町田は下から2番目で43パーセントだからね。町田は攻めるときに新潟に時間をかけさせられ、思うように前進できなかったんだ。

新潟の理想としては、ボールを奪い切って町田を自陣に押し込み、ポゼッションとプレッシングを循環させながら、絶えず町田を押し込んだ状態でサッカーをすることにあると思う。実際、新潟はそういう展開になることが多くて、これまでもたびたび指摘してきたけれど、当然、背後に広大なスペースが生まれて、そこを突かれたときにどうやってカウンターを防ぐかというのが課題、テーマでもあるわけ。

だけど、この試合に関しては、そういうことがなかった。カウンタープレスで町田に手数を掛けさせている間に、後ろの選手はサーッと撤退してミドルブロックを組むことができていた。簡単に背後を使われることがなかったのも、この試合のポイントの一つだったね。

事象として面白いよね。新潟も町田も“理想的”というわけではなかった。けれども、新潟の方がその状況で戦えていた、というね。町田からすれば、攻め手が非常に限られてしまった。

新潟の選手たちが、アバウトにロングボールを蹴られた後のセカンドボールの回収でも良くファイトしていたこともある。町田に簡単に優位性を与えなかったし、その根底にあったのは『絶対に1対1で負けない』という、この試合にかける新潟の選手たちの思いで、そのままプレーに現れていた。それが、この試合をトータルで見たときの感想だね」

(つづく)

【プロフィール】北條聡(ほうじょう・さとし)/フリーランスのサッカーライター。Jリーグ元年の1993年にベースボール・マガジン社入り。ワールドサッカー・マガジン編集長、週刊サッカーマガジン編集長を歴任し、2013年に独立。古巣のサッカーマガジンやNumberなどに連載コラムを寄稿。2020年3月からYouTubeでも活動。元日本代表の水沼貴史氏、元エルゴラッソ編集長の川端暁彦氏と『蹴球メガネーズ』を結成し、ゆる~い動画を配信中。同チャンネル内で『蹴球予備校』の講師担当。2021年3月から”部室”と称したオンラインサロンも開始。もう何が何だか……。

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