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☆☆☆無料記事☆☆☆「新潟が相手ということで、嫌な予感はしていたんだよ」【頼もう!感想戦feat.島田徹】~明治安田生命J1第24節・アビスパ福岡戦vol.1~

リーグ戦5連勝中と好調の福岡の堅陣をアウェイの地で打ち破り、3試合ぶりに勝利した第24節。福岡を拠点に活動するライター、島田徹さんと語り尽くします! Vol.1は、無料でお読みいただけます。

■「連動性」vs「連動性」

――新潟との対戦まで、福岡はリーグ戦5連勝中でした。これは、ただ勢いに乗っているだけではなく、戦い方が確立されてきたという捉え方でよいのでしょうか?

「そうだね。今回、連勝する前に4連敗していたんだよ。だけど、やり方を大きく変えて立て直したというより、積み重ねてきたものの成果が再び出始めての連勝だと俺は見ている。

もちろん4連敗したことは事実で、そこにはマリノス、名古屋、神戸といった上位との対戦も含まれている。上位から勝点を取るレベルには、まだ達していないですよ、ということでもあるよね。

いやあ……嫌な予感はしていたんだよ、新潟ということで。前回も6試合負けなしでビッグスワンで対戦して、伊藤涼太郎選手(現シントトロイデン)の大活躍にやられてしまった。そこからチームは急激に調子を落としてしまって、4連敗につながったわけ。今回はホームで勝って、何とかそんな事態を避けたいと思っていたんだけれど……。嫌なチームだねえ、新潟は」

――新潟は新潟で、積み重ねがありますからね。

「そうなんよ。結論から言えば、アビスパにはアビスパの連動性がある。守備の連動性がね。で、新潟には攻撃の連動性があるじゃん。お互い、自分たちの強みである連動性をぶつけ合って、そこが勝負を分けることになった。アビスパの連動性ある守備を、新潟の連動性ある攻撃が上回った。そういう試合だったんじゃないかな。

アビスパも、試合を通してずっとやられっぱなしだったわけじゃない。ただ、長谷部(茂利)監督は『選手たちへの提示の仕方が間違っていた』という言い方をしていたね」

――試合の入りのところについて。

「続けて監督が話したことが、『後半は自分たちらしく前からプレスに行くやり方ができた』というものだったので、推測するに、構えてからボールを取りに行く、という戦いを最初はやっちゃったんだよね」

――それが非常に意外でした。暑さで長い時間は無理にしても、試合の入りのところで福岡は厳しいプレスを仕掛けてくるのかと思っていましたが、ボールをもたせてもらえましたよね。

「闇雲に行ってもはがされるだろうという、新潟へのリスペクトもあったと思う。それから連勝中、構えて網を張ってボールを奪う連動性がとてもよく機能していて、その守備に対する自信もあったと思うんだよ。

それから新潟戦の夜は、かなり蒸し暑かった。博多はしばらく涼しかったんだけれど、急に暑くなったから、体力面を考慮したのかもしれない。

実際、試合が始まって最初の数分を見ても、構えて守るやり方が効いている場面もあった。新潟が縦パスを入れたところで井手口陽介選手がボールを奪って、そこから素早いカウンターというシーンが2、3回あったから。だから当初のプランも決して間違いではなかったし、それでやり切って得点するところまでいければよかったんだけどね。

だけど、結局は耐え切れなかった。守備が後手、後手になってしまったよね。試合後、前寛之選手も奈良竜樹選手も、『新潟は相当うまかった』と話していたし。

19分の失点場面も、アビスパは3対2の数的優位を作っていたんだよ」

――ペナ角の攻防で。

「数的優位を作る集中力はよかったんだけれど、ボールを取り切れない甘さが出てしまった。それが痛かった」

■勝負のあやと際どい勝利

――セカンドボールが新潟の方に転がってきて、運のようなものも感じられたシーンですが。

「どちらにボールが転がるか、というところはあったかもしれないけれど、その後もたびたびあったんだよね。ボールを持って崩しにかかる新潟に対して、数的優位を作りながら取り切れない、というのが。そのあたりの冷静さが、いつもよりなかった。守備で後手に回ることが目についた試合だったんだよ。

だから前から行けばよかった、というのはある。結果論だし、“たられば”になっちゃうけど」

――新潟は前節の湘南戦(第23節△2-2)、前々節の名古屋戦(第22節●0-1)と前から来られて、序盤の失点が響いて勝ちを逃しています。福岡も当然、スカウティングしているでしょうから、やはり気候や選手のコンディションを考慮しての戦い方の選択だったのでしょうか。

「だと思う。長谷部監督は、試合後の会見ではそういう部分に関しては絶対に言わないから、オフ明けの取材でタイミングがあれば真意を聞けるかもしれない。

繰り返しになるけど、実際、うまく行きかけていたからさ。その流れで決定機をつくって、決め切るかどうかという話でもあった。舞行龍選手が足を滑らせてルキアン選手が抜け出したシーンとか(14分)、得点のチャンスはあった」

――あの場面は勝負のあやだったかもしれませんね。福岡の連動した守備と新潟の連動した攻撃の激突という、島田さんの指摘がありましたが、ルキアン選手が抜け出したのは、新潟がサイドを崩して福岡ゴールに迫った流れからでした。

「そうやったね」

――新潟の左サイドで秋山裕紀選手が縦パスを入れて、ライン間で受けた三戸舜介選手がすばやく展開、左サイドバックの新井直人選手が突破してクロスを上げました。ファーで長谷川巧選手が折り返したところまでよかったのですが、前選手がクリア気味に蹴り返したボールに対処しようとして、舞行龍選手が転倒してしまいました。

そこに至る直前のシーンは、新潟がこの試合で初めて連動した攻撃で崩した場面だったと思います。そして、ルキアン選手が山岸祐也選手へのパスではなく、自らのシュートにこだわったことに助けられました。

「最近、ルキアン選手も点を取ってないから、自分で行ったんだろうね。

福岡は攻撃も悪くはなかった。山岸選手はシュートを3本打っているし、中央をショートパスでパン、パンと崩してフィニッシュに持ち込む場面もつくれていたし」

――新潟が最後、体を張ってゴールを割らせませんでしたが、78分、金森健志選手が正面からシュートして、新潟GK小島亨介選手が好セーブで防いだように、落としからの危険なシュートが何本もありました。

「ルキアン選手のパスから山岸選手が狙う2度の絶好機があったし(30分、45+3分)、ルキアン選手、山岸選手とつないで左サイドバックの前嶋洋太選手が狙うシーン(57分)もあった。負けたけれど、アビスパから見て90分通してずっと悪かった、というような試合ではないんだよ」

――まさに。

「だからこそ、長谷部監督が自ら言及した『最初の15分の提示の食い違い』というところがこたえるんだけれども」

――新潟から見ても、際どい勝負をタフに物にした勝利でした。前半終了間際に長倉幹樹選手が抜け出した決定機や、後半が始まって連続したチャンスで追加点を奪っていれば、完勝の手応えも強まっていたのでしょうが。

「連勝を止められたということと、新潟にシーズンダブルを食らってしまったというショックから、なんだかひどい試合をしてしまった印象を持つかもしれない。だけど、冷静に考えれば決してそうではないと俺は捉えているんだ」

(つづく)

【プロフィール】島田徹(しまだ・とおる)/広告代理店勤務の後、1997年にベースボール・マガジン社に転職。サッカーマガジン編集部、ワールドサッカーマガジン編集部で2006年まで勤務した後、07年より福岡にてフリー活動を開始。サッカーマガジン時代に担当を務めたアビスパ福岡とギラヴァンツ北九州をメインに、ほぼサッカーの仕事だけで生きつなぐ。現在はエルゴラッソの福岡&北九州を担当。

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