ニイガタフットボールプレス

【頼もう!感想戦feat.成岡翔】~明治安田生命J1第1節・セレッソ大阪戦vol.1~「俺たちはJ1に戻ってきた!」

2023年2月18日。いよいよ6年ぶりにJ1での戦いが始まりました。開幕のセレッソ大阪戦は、点を取って取られて、両者譲らぬ攻防の末に2-2のドロー。90分の中で新潟が証明した力と可能性とを、成岡翔さんと語り尽くします!

■伝わってきたメンタルの充実

――6年ぶりのJ1での戦いがいよいよ始まりました。開幕のアウェイ、セレッソ大阪戦をどうご覧になりましたか?

「良かったですね。とても面白い試合でした。

僕は去年の夏くらいから、アルビの試合を見ながら『今のプレー、J1だったらどうなるだろう?』という見方をしていました。当時から『これはいいプレーだな。これなら来シーズン、行けるんじゃないかな』と期待していたんですけど、その気持ちを見事に体現、証明してくれた開幕戦だったと思います。もちろん不安もありましたよ。でもそれよりも期待の方が上回っていたし、 2-2で引き分けて、それまでの期待感が『十分できる』という自信につながる試合だったと思います」

――昨年末に話をうかがった際に、J1の強度やスピードにいかに早く適応するかが大事だ、という話がありました。そこをしっかりとクリアして、さらによくして行けるという新たな期待感が膨らむ結果、内容でしたね。

「スタメンを見ると、良い意味で去年のメンバーと変わらないものでした。今年のチームの土台には、『大型補強をして、新たな力を上乗せして』ということではなく、去年からの継続性があります。チームは、去年やっていたサッカーがJ1でも通用するんだということを証明してくれました。

完成度という観点からすれば、開幕から何試合かはなかなか流れがつかめないということが、けっこうあるんです。初戦でいきなり完成しているチームというのも、なかなかないですからね。

でもJ2からJ1という変化はあるにせよ、新潟は継続性をしっかりアドバンテージにすることができていました。チームとして、すでに完成の域に達していると示せたと思います。もちろん、ここからJ1でもまれることによって、さらに成長していくことが不可欠なのも間違いないですが」

――試合開始直後、いきなり伊藤涼太郎選手のスルーパスから三戸舜介選手が背後に抜け出して、攻める姿勢が全開でした。セレッソの勢いにどう慣れるかではなく、最初からセレッソを上回る勢いを随所に出せていたと思います。

「メンタル的な充実が、みんなのプレーから伝わってきましたよね。受けるのではなく、自分たちから仕掛ける姿勢が特に前半強かった。最初の三戸選手のプレーもそうでしたし、裏への意識がとにかく強くて、そのあたりが非常に良かったですね。試合開始から10分くらいで、『あ、この試合は勝ちに行けるし、間違いなくいい試合になる』と感じました」

――試合のどこをチェックしながら見始めたのですか?

「まずはやっぱり、入り方のところです。J1に上がってきた新潟が、ある意味で受け身というか、様子を見ながら試合に入っていくのか、それとも自分たちから仕掛けて攻めようとするのか。

序盤、どちらも主導権を握りたくて、お互いプレッシャーを掛けに行くバチバチのスタートになりました。その中で、新潟は受け身になりませんでしたよね。セレッソのプレッシャーに対応しつつ、自分たちも良い距離感でしっかりつなぎながらゴールを目指していたし、裏に抜けるプレーも多かった。強気で良かったです」

――セレッソは立ち上がりから新潟のビルドアップに対して、かなりプレッシャーを掛けてきました。『お手並み拝見』というところもあったかもしれません。プレッシャーを掛けられても、新潟の選手たちは慌てて大きく蹴ったり、無理につないではがそうとして墓穴を掘ることもなく、逆にスペースを突くチャンスを探りながらプレーできていました。相手を見ながら冷静にプレーしていたところがすばらしかったですね。

「新潟の選手たちから、去年、戦ってきた自信と、J1で戦うことへの期待感、わくわくしている感じがよく伝わってきましたよ。久しぶりのJ1、しかも開幕戦という状況をうまくプラスに捉えて、いい状態で試合に臨めていたと思います」

■一発で仕留める力

――開幕のアウェイ、セレッソ戦というと、成岡さんがアビスパ福岡から新潟に加入した2013シーズンを思い出します。スタジアムはお隣のヤンマースタジアム長居でしたが、記者席から試合を見つめるメンタルにはその時と今回と通じるものがある気がします。2013年はその前年、奇跡の残留を果たしたものの、『今年は残留、大丈夫だろうか?』という不安があり、今回は『久しぶりのJ1でどうなるだろう?』という思いがあり。

それで、試合後の『新潟はやれる!』というポジティブな気持ちもどこか似ているんです。2013年は最後の最後に柿谷曜一朗選手(現徳島ヴォルティス)にループシュートを決められて敗れましたが、見ていて確かな自信を得られる試合でした。実際、プレーしていた成岡さんはいかがでしたか?

「あの試合のことは、めちゃめちゃ覚えていますね。ヤンツーさん(柳下正明監督、現ツエーゲン金沢監督)の下、かなり厳しいキャンプを経て、開幕に向けて緩やかにコンディションを調整して、やっと試合で解放された、というのがありましたから」

――ははははは(笑)。当時はフィジカルコーチだったトゥッコさんの鬼のようなトレーニング、追い込み方でしたからね。

「新潟に覚悟を持って移籍してきましたが、とにかくキャンプがきついという記憶しかありません。そして開幕戦を迎えて、『これでようやく普通の生活に戻れる』みたいな。その解放感が、とにかく自分の中では強かったです(笑)。

実際、どう転ぶのかはやってみないと分からないところでしたが、一刻も早くキャンプが終わって、シーズンが始まってほしかった。だから、開幕のセレッソ戦に変なプレッシャーはありませんでした。前の年の残留劇も僕は知らないから、気負うところもなかったし。

チーム的にも達さん(田中達也コーチ)やレオ(・シルバ)ら新加入選手が他にもいて、前のシーズンを引きずっている感じもありませんでした。

実際、あの試合は、ほぼほぼ僕らのものだったと思うんですよ。セレッソの仕上がりがもう一つ良くなかったというのはあるかもしれません。それを差し引いても僕らはかなり動けていたし、強度もありました。

でも、負けてしまった。理由としては、やっぱり点を決められなかったことだと思います。チャンスは作れていたのに、点を取れなかった。だけど力のあるチーム、選手は、一つのチャンスを決め切るんだというのを思い知らされた試合になりました。

とはいえ、それで悲観的になったわけではありません。終わって、『俺たちがキャンプでやってきたことは間違っていなかったんだな』と実感できましたから」

――そこも通じるところがありそうですね。今回、選手たちは『新潟がやってきたサッカーは間違っていない』と感じながらプレーしていたと思います。

「本当に僕も今回の試合を見ながら、2013年の開幕戦のことを思い出していましたよ。『似ているな』と。

その上で、いい戦いができていると感じられながらも、新潟の2失点は流れと関係ないところからいきなり食らったじゃないですか。それまで別にセレッソの時間帯というわけではなかったのに。クロスからのヘディング一発と、押し込んだ直後に縦パス1本で裏を取られての1点と。そういう一発で仕留める、決め切るあたりに、『やっぱりここはJ1なんだ』と実感する試合でもありましたよね」

(つづく)

【プロフィール】成岡翔(なるおか・しょう)/1984年5月31日生まれ、静岡県島田市出身。藤枝東高校から2003年、磐田に加入。11年に福岡に移籍し、13年、完全移籍で新潟に加入した。サイドハーフ、ボランチ、そしてFWでたぐいまれなサッカーセンスを発揮し、新潟で最初のシーズンは全34試合に先発出場。在籍した5シーズンでリーグ戦113試合に出場し、10得点を挙げ、17年にはJ1リーグ通算300試合出場を達成した。18年、J3のSC相模原に移籍。19年、J3の藤枝MYFCに加入し、11月5日に同年シーズンでの現役引退を発表した。現在はサッカースクールSKYでの指導が主になる。

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