ニイガタフットボールプレス

【頼もう!感想戦feat.成岡翔】~明治安田生命J2第10節・岡山戦vol.1~「恐れずプレーしたからこそ」

第10節・岡山戦は、互いのスタイルとクオリティーがぶつかり合った結果、引き分けに終わりました。先制したものの、追いつかれた後、必ずしも新潟がペースを取り戻したわけではありませんが、見るべきところが盛りだくさんの濃密な90分。見応え十分だった一戦を、成岡翔さんと語り尽くします!

■お互い強みを出そうと攻め合いに

――第10節・岡山戦は、先制しながら追いつかれ、岡山のペースになって攻められながらも、最後はしのぎ切って引き分けるというゲームになりました。

「今回の感想戦の打ち合わせで大中さんが連絡をくれたメッセージに、『木山隆之新監督になった岡山は、思っている以上にチームづくりが進んでいて、手強い相手だ』とありましたよね。本当にその通りでした。岡山の何が良かったかというと、チームとしてやろうとしていることがしっかり整理されていたところです。守備の仕方、どこからどう攻めるのかという攻撃の仕方、それぞれを選手みんなが意識できていて、チームとしてまとまっていました」

――前節・琉球戦(第9節△3-3)での岡山は、暑さも関係したのか、ちょっと重い印象だったんですね。例えば守備は、前からどんどんプレッシャーを掛けて高い位置で奪おうとするより、セットして守る傾向が強かった。しかし、新潟戦では違いました。

「新潟との試合でも、しっかりセットして守る時間帯はありました。でもそれだけではなく、自分たちが良い状態であれば、前からうまくプレッシャーを掛けていたと思います。誰が最初に守備に行くのか、はっきりしていましたね。

守備になると、ミッチェル・デューク選手とステファン・ムーク選手が横並びの2トップになって、まず彼らがプレスに行く。そこに後ろの選手もついていって、サイドに追い込んでいく。連動性がありました。

新潟は、しっかり後ろからボールをつなぎながら攻めるスタイルです。岡山のプレスの掛け方、守備は、そこを意識したものでもあったのではないでしょうか。

岡山の攻撃に関しては、やっぱりデューク選手が軸でした。彼の高さとパワーを生かし、ボールが入ったところに後ろからどんどんサポートに行く。あるいはデューク選手を追い越して、裏に抜ける。そういうやり方が、チームに浸透していました。自分たちの強みが何か、よく分かっていますね。

ムーク選手も、非常に良い選手だと感じました。デューク選手の周りで良くサポートしつつ、裏にも抜けていく。周りの選手を意識しながらプレーしていました。さらにサイドの選手が良い形、タイミングでサポートに入ってくるといったように、岡山は攻守ともに整理されたチームでした」

――岡山は4-2-1-3をベースにしつつ、2トップのニュアンスが強い戦い方でしたね。試合後に堀米悠斗選手に話を聞いたのですが、スカウティングでは3トップを想定していて、戦いながら少し修正が必要だったようです。

岡山のプレーを見ると、新潟に対してしっかり準備してきたことがうかがえます。しかもクオリティーを伴っているので、途中から岡山ペースになった後、なかなか流れを取り戻せない試合になりました。

「前半は、お互いやろうとすることを出し合うような、攻め合う展開でした。自分たちの強みを生かそうとする意識が、新潟にも岡山にもあったから、攻め合いになったと思います。

岡山の前からの守備に対して、新潟も怖がることなく、試合の最初から真ん中に縦パスをどんどん付けて、相手を寄せておいてサイドに展開したり、狭い局面でもワンツーや3人目の動きでプレスをはがしたりというプレーを多く出せていました。

だからこそ、そういったプレーをずっと続けられたら、より良いゲームができたのかな、と感じます。新潟がここ数シーズン、やろうとしているサッカーを考えれば、なおさらです。怖がらずにどんどん縦パスを付けながら、相手を消耗させる。ボールを動かす意味、効果を最大限に引き出すような戦い方ですね。

実際、岡山も後半は少し動きが落ちてきました。ボールを動かすことがボクシングのジャブのようにじわじわ効いてきて、時間とともに自分たちが優位に立ち、無理をせずプレーできるようになる。そういう流れが、新潟にとって良いサッカーなのだと思います」

■島田選手の1本のパスによって

――怖がらずに縦に付けるという意味では、12分、谷口海斗選手の先制ゴールも、ボールを動かしながら機を見てゴメス選手が島田譲選手に縦パスを入れるところから始まりました。

「岡山のプレスをはがす術(すべ)としては、縦パスを付けて、サポートに行って、もう一回リターンを受けるという、ぎりぎりのところをクオリティーではがすやり方が一つ。もう一つは、やっぱりあれだけ前から来ると背後にスペースができるので、そこを見つけて的確に使うというやり方ですよね。

大きくいうと、その二つのやり方だよなあ…と思いながら試合を見ていたら、島田選手がダイレクトで裏にパスを出してくれました。『そうそう、それそれ!』となりましたね(笑)。あの裏へのパスを1本見せられたことによって、岡山は前から少し行きづらくなったんじゃないかな。

しかもダイレクトというのが良かった。1本のパスによって、それまで岡山が見せていた守備が一瞬、緩みました。島田選手のすばらしいパスでした」

――だからこそ、チームとして同じような打開の仕方をそれ以降も見せたいところでしたが、いろいろな駆け引き、伏線もあったようです。一番は散水されていなくて、ボールが止まるピッチコンディションだったことがあります。

「ああ、なるほど!」

――ピッチそのものは整備されていたのですが、ボールが走りづらい、裏に出してもボールが止まってしまうというピッチコンディションを、岡山が準備していて。

「はいはい」

――長いボールをデューク選手が収めてくれる今の岡山のスタイルからすれば、ボールが走るかどうかはあまり関係がない。

「ですね」

――逆に新潟の選手は、パスを引っ掛けられないように、いつも以上に気を使いながらのプレーになったはずです。その辺り、実にアウェイっぽいゲームでした。そうした舞台設定でなお、岡山だけでなく、新潟も自分たちのスタイルを出そうとした結果、見応えある試合になったのだと思います。

ピッチコンディション、さらに岡山のプレッシャーを考えれば、選手たちが怖がらずにボールを動かして先制点につなげたところに、スタイルを貫こうとする新潟の姿勢とクオリティーを強く感じます。

「そうですね。ピッチの状態を感じさせないくらい縦パスを付けて、落としてというのを繰り返しながら、岡山のプレスをはがしていましたから。

岡山は、本当に試合最初から良い守備を見せていました。人にもしっかり付いていくし、狭い局面での攻防になっていたました。そこで新潟の選手たちもワンタッチを駆使しながら岡山のプレスをはがしていましたから、『お、いいプレーだな。こういうの、俺は好きだなあ』という場面がたくさんありました」

――そうした攻防が続いた一方で、大きく試合展開に影響を及ぼしたのが、やはりデューク選手の存在でした。実際にスタジアムでプレーを見ると、改めてデューク選手のうまさ、アジリティーを含めた身体能力の高さがすごくて、やっぱりオーストラリア代表FWだな、と感じさせられました。

「よく基点になって、チャンスをつくっていましたね。清水でプレーしていたとき(2015-19)より、余裕をもって力を発揮している印象でした。周りの信頼も厚そうですし。余裕あるプレーはJ2だからなのかは分かりませんが、うまくボールをキープしてチャンスにつなげていたし、守備もサボらないですし」

――新潟が先制した後、新潟の右サイドを何度か突破されることが続いて、結局29分にデューク選手に同点ゴールを決められてしまいましたが、周りの選手が、デューク選手がどこにいるのか、しっかり見ているんですよ。迷うことなく、的確にデューク選手にボールを集めていました。

「チームとして、反応が早かったですよね。デューク選手にボールが入りそうなタイミングで、周りもサポートに動き出していた印象です。デューク選手がボールを失わない信頼があるからでしょう。チームとして分かり合っているというのは、今の岡山の強みだと思います」

(つづく)

【プロフィール】成岡翔(なるおか・しょう)/1984年5月31日生まれ、静岡県島田市出身。藤枝東高校から2003年、磐田に加入。11年に福岡に移籍し、13年、完全移籍で新潟に加入した。サイドハーフ、ボランチ、そしてFWでたぐいまれなサッカーセンスを発揮し、新潟で最初のシーズンは全34試合に先発出場。在籍した5シーズンでリーグ戦113試合に出場し、10得点を挙げ、17年にはJ1リーグ通算300試合出場を達成した。18年、J3のSC相模原に移籍。19年、J3の藤枝MYFCに加入し、11月5日に同年シーズンでの現役引退を発表した。今年はサッカースクールSKYでの指導が主になる。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ