【頼もう、感想戦!feat.成岡翔】~明治安田生命J2第1節・仙台戦vol.4~「進化の兆し」
いよいよ、2022シーズンが開幕。第1節・仙台戦を語り尽くすのは成岡翔さんです。昨季から何が継続され、どのような上積みが期待できるのか。翔さんの話が進むほど、わくわくが止まりません!
■目線は前に!
――チームの継続性が感じられた仙台戦。翔さんから見て、どのようなポジティブな点がありましたか?
「去年、調子が良かったときの、しっかりシュートを打ち切って終えるところが仙台戦でも見ることができました。谷口海斗選手、鈴木孝司選手に加えて、イッペイシノヅカ選手のダイナミックなプレーにも表れていて。
だからこそ、クオリティーを上げてほしいです。シュート数からすると、もっと枠内に飛ばしたい。
仙台の守備の堅さはありました。危ないところでは体を投げ出してブロックしてきて、それによってディフェンスに当たったり、枠外にシュートが行ったと思います。シュートの意識はありますから、これからシーズンを通して、質を上げていきたいですね」
――ボールを動かしながらチャンスを作った中で、惜しいシュートもありました。
「後半、谷口選手が左45度のデルピエロゾーンから狙ったシュートは入ったと思いましたね(67分)。谷口選手は昨シーズンも同じようなアングルから狙って決めているし、シュートへの持っていき方もうまかったので、仙台のGK杉本大地選手を褒めるべきでしょう」
――谷口選手のシュートでいうと、藤原奏哉選手のクロスからヘディングで狙った場面も印象的でした(52分)。去年、思うように戦えないときは、クロスに対して鈴木選手や谷口選手ら、1トップだけということもありましたが、この場面ではボックス内に3人、ボックスの手前にも2人くらいいて、人数を掛けられているのを実感しました。
「攻撃の厚みは、去年の戦いの中で最も欲しかったところですからね。仙台戦はビルドアップで優位に立てていたので、全体が押し上がって前に人数をかけられているのだと思います。あれだけの人数がゴール前に入っていけると、可能性を感じますよね。
そこは試合の初めから顕著で、左サイドを突破したイッペイ選手がクロスを上げるときも、ゴール前に何人か入っていました。そういう意味でも、わくわくする試合でしたよ」
――守る相手をクロスで脅かせていたのは好材料ですよね。
「こぼれ球にも可能性を感じたし。頑張って仙台が拾うこともありましたが、『どっちにこぼれるかな?』というところで新潟が拾い、さらに攻め立てる場面も多かった。それは距離感が良くなっている証拠で、だから新潟の攻撃は単発で終わらなかったんです。
例えばJ1開幕の福岡と磐田の試合では、ジュビロの攻撃が単発で終わることが多かったんですよ。クロスを全部拾われるし、ボランチも上がってこれなくて。
それに比べると新潟は全体が押し上げられていて、二次攻撃、三次攻撃につなげていました。前への意識が、選手のポジションの取り方を含めて出ていましたね」
――松橋力蔵監督のこだわりを随所に感じられる開幕戦になったわけですね。
「繰り返しになりますけど、これまで以上に前への意識を持ちたいという姿勢が仙台戦からは伝わってきました。高木善朗選手、伊藤涼太郎選手のインサイドハーフ2人を置くところが象徴的で、ボールの出しどころ、見る場所が基本的に前へ、と設定されている。高い位置でボールを動かしながら仕掛けたいのは明らかでした。
加えて、攻守の切り替えが非常にスピーディーでした。ボールを奪われてすぐ取り返しに行くだけではなく、守備で奪ってからの攻撃も早くなったと感じます。リスタートがクイックだったり、ボールを奪ってスーッと全体が上がっていくフォローも早かった。だから前線に入ったボールに対して、落として展開するいい流れも見られたわけです。そういうところにも、松橋監督のこだわりを感じましたね」
■蹴球ロマン
――アルベルト監督(現FC東京監督)のときは、確かにここまでアップテンポではなかったですね。もう少しボールを握って、難しければいったん落ち着いてもいいよ、というイメージです。
「ボールを回している時間が長かった去年は、見方を変えるといつ攻撃のスイッチを入れるのかが課題でもあったのですが、仙台戦はボールを奪うとすぐに仕掛けていました。だから、『いつ攻めるの?』というじれったさを感じることがなかったんです。ある意味、以前から新潟のサポーターが喜ぶ縦に速いサッカーと、アルベルト前監督のポジショナルプレー、ポゼッションするサッカーの融合が、シーズンが進むにつれて見られることになるのかもしれません」
――松橋監督がマリノスでコーチを務めていたときに、ポステコグルー監督(現セルティック監督)らから吸収したものも、おそらく反映されていくのでしょう。そんな松橋監督のサッカー観を知る手掛かりになると思うんですが、監督はアヤックス、ヨハン・クライフが好きらしいんですよ。
「俺、高3(藤枝東高校)のときにアヤックスの練習に行ってるんですよ」
――え?
「当時、臨時コーチでよく高校に来ていたオランダ人コーチが、『お前、ちょっとオランダに来い。アヤックスを紹介してやるから』って」
――けっこうなパイプですね!
「そのコーチがつないでてくれて。とりあえず練習に参加してみようというものだったから、アヤックスに入るとか、そういう話ではなかったんですけどね」
――いやいや、ロマンを感じるエピソードですよ! 高校3年のいつ頃の話ですか?
「いつだったかな? 寒かったから冬ではあったんですけど。ジュビロに行くというのは僕の中で決めていて。そのとき、アヤックスのユースを指導していたのがファンバステンで、『おおっ!』となりましたね。
そのころのアヤックスは、イブラヒモビッチやスナイデルがいてめちゃめちゃ強かったんですけど、確かスナイデルは俺と同い年でユースの試合にも出るし、トップにも絡んでいました。体は小さいのにめちゃめちゃうまいやつがユースにいて、『誰だ、こいつは?』と思っていたら、それがスナイデルでした」
――練習に参加して、どうだったんですか?
「ユースの練習は、けっこうやれましたね。最初は全然、パスが出てこなかったですけど」
――あるあるですね。『何だ、こいつ?』みたいな。
「そうそう。だけど、最初のゲーム形式でパシッとアシストしたら、めちゃめちゃボールが来るようになりました」
――それも、あるあるだ。
「分かりやすいなあ、と(笑)。その後にクールダウンで走っていてもめっちゃ話しかけられて。そういう形で練習参加する選手がたくさんいるんでしょうね。接し方が慣れていると感じました」
――ちなみに、どのような初アシストだったんですか?
「トップ下かボランチか、とにかく真ん中をやっていて。それで狭いエリアでボールを受けて、CBの間を通したスルーパスから、センターフォワードが決めてくれました。その後、Bチームの練習までは参加させてもらいました。Bチームに交ざってアヤックスのホームスタジアム(ヨハン・クライフ・アレナ)に行って、ロッカールームを使わせてもらってサブグラウンドで練習もしたんですよ」
――そんな体験をして、海外志向にはならなかったのですか?
「なりましたよ。環境も抜群だったし。だけど俺らの時代は、まだまだ高校を出てすぐにヨーロッパへ、というものでもなかったですから。『今は無理だなあ』と。自分の中ではヨーロッパに行くにしても、しっかり地に足を着けて、Jリーグで結果を出してからだと思っていました」
(つづく)
【プロフィール】成岡翔(なるおか・しょう)/1984年5月31日生まれ、静岡県島田市出身。藤枝東高校から2003年、磐田に加入。11年に福岡に移籍し、13年、完全移籍で新潟に加入した。サイドハーフ、ボランチ、そしてFWでたぐいまれなサッカーセンスを発揮し、新潟で最初のシーズンは全34試合に先発出場。在籍した5シーズンでリーグ戦113試合に出場し、10得点を挙げ、17年にはJ1リーグ通算300試合出場を達成した。18年、J3のSC相模原に移籍。19年、J3の藤枝MYFCに加入し、11月5日に同年シーズンでの現役引退を発表した。今年はサッカースクールSKY(https://www.sky-soccer.net/)での指導が主になる。