【感想戦SPECIAL 2021】年忘れ!番記者座談会vol.1「アルベルト流の到達点」
破竹の快進撃に始まった2021シーズン。首位を走った前半戦から、中断明けの苦戦、そしてアルベルト監督の退任、松橋力蔵新監督の就任――そんな激動の1年を、アルビの番記者たちは、いかに追いかけたのか? 新潟日報・西巻賢介記者、日刊スポーツ・小林忠記者とともに、年忘れ番記者座談会の始まりです!(取材協力/秋山郷)
■シャッターチャンス
大中 『ニイガタフットボールプレス』でやっている「頼もう! 感想戦」という企画は、僕が雑誌『相撲』(ベースボール・マガジン社)の編集者だったころ、千秋楽に親方が集まってちゃんこをつつきながらその場所についてああでもない、こうでもないと盛り上がる座談会があって、それがヒントになってるんだよね。
西巻 ごっちゃんです!
大中 親方だから舌が肥えていて、へたな店だと納得しない。
小林 ふふふ……。
大中 ということで今回は、古町の郷土料理の店『秋山郷』さんにおじゃましました。
女将さん 新潟のおいしい地酒、お持ちしました~♪
西巻 絶妙なタイミングで登場しますね。
女将さん 何だかジェットコースターのようなシーズンでしたね~。
大中 加わるんだ!?
女将さん 最終節の町田戦、競馬の予想をされている方と見に行っていたんですよ。その方は茨城の美浦(みほ)に住んでいらっしゃるんですけど、競馬よりもサッカーが好きでしょっちゅうビッグスワンにこられているんですね。それで今シーズン、アルビの監督と選手の関係について言っていたのが、『武豊をポニーに乗せて勝てるのか、って話だよな』でした」
小林 ははははは(笑)!
大中 この3人の誰よりもうまいことを言わなくてもいいのに……。
女将さん ごめんなさい、最初だけ!
西巻 出落ちじゃないですか。
小林 畳み掛けてこられましたね。すごい。
大中 仕切り直して……。最終節の町田戦、小林くんは写真を撮っていたんだよね。
小林 寒さに耐えながら。達さん(田中達也さん)がベンチに退いてからは、シャッターチャンスはほぼなかったです。達さんもマーカーと身長差があって、かなり苦しんでいるように見えました。
西巻 僕も達さんしか見てなかったです。前半、達さんが打った『シュートにカウントされるかな?』っていうボレーと、あとは後半、(鈴木)孝司さんの2本。チームでシュート、わずか3本でしたから……。
小林 後半、おっ!? と思ったのは、藤原(奏哉)選手のクロスにロメロ(フランク)さん、孝司さんがゴール前に入っていったシーン(57分)。それくらいですね。
大中 町田との差が悲しかったなあ。アルベルト監督もポポヴィッチ監督も、どちらも2年チームを率いてきた末の、あの試合だったから。
西巻 町田のテンションがすごかった。
大中 アルベルト監督の退任は決まっていたから、試合中に小林くんはベンチの写真も狙っていたでしょ?
小林 監督はテクニカルエリアの最前列にはいたけど、大人しかったですね。
西巻 後半、最初の10分から15分くらいは良かったじゃないですか。そこで点を取れれば勢い付いたんだろうけど、それができないのが今年のチームっぽいな、と。
大中 小林くんのベストショットは? そもそも何枚くらい撮ったの?
小林 達さんだけで300枚くらい。あとは、セレモニーを含めて100枚くらいでしたね。後半、藤原選手が右サイド上がってきたときはいい写真を撮れたと思いますけど、本当にそれくらいでした。
西巻 後半、奏哉が縦に仕掛けていったあの場面は、(長谷川)巧の影響もあるのかな、と感じました。シーズン中盤以降、どこか積極性を失って、無理だと思うとすぐにボールを下げていたところで、仕掛ける姿勢が戻っていた。そこは、巧に刺激を受けているんじゃないかな。
小林 僕は写真を撮りながら、『チームのサッカーが、来年もこんな感じだと嫌だなあ』と思っていました。ボールはつながるけど……っていう。
大中 早くも来年の話!!
小林 ポゼッションプラス何かを示してほしいんですよね。ポステコグルー(現セルティック監督)のマリノスが、トランジションと速攻をプラスしてJ1を制したように。
西巻 しょうがないですよ。うちはバルサじゃないもん。ポゼッションしていれば、最後はメッシやアンスファティが決めてくれるわけでもなく。マリノスにもマルコス・ジュニオールがいるし。
大中 ズミさん(小川佳純・FCティアモ枚方監督)との最終節・町田戦の感想戦でも、「ポゼッションはできるけど、攻撃的なところはシーズンの最後には出せなくなった」という話になった。そういう意味で、町田戦はチームの一つの到達点が見られたのかもしれないね。プレスを受けてもボールを失わずつなぎながらアタッキングサードの手前までは前進できるけど、町田に勝つには球際で上回ったり、走り負けないとだめだというところが、あらためてはっきりと見えて。アルベルト監督のサッカーをやり切った結果ともとらえられるんじゃないかな。
(つづく)
【プロフィール】
西巻賢介(にしまき・けんすけ)/新潟県三条市出身。三条高校時代はCB、SB。身体能力の低さをずる賢さでカバーし、2年の時にインターハイ予選でベスト4、選手権予選でベスト8。憧れの選手はパオロ・マルディーニ。2006年に新潟日報社に入社。08年に初めてアルビレックス新潟の担当になって以来、支局勤務などを間に挟みながら関わっている。矢野貴章(現栃木)や酒井高徳(現神戸)が選ばれた日本代表や、リオデジャネイロ五輪取材も経験。今季は5年ぶりに担当に復帰した。
小林忠(こばやし・ただし)/新潟県阿賀野市(水原町)出身。7歳でサッカーの魅力にとりつかれる。レフティーで、北越高校では左右のMF、トップ下と中盤でプレーし、セットプレーも担当。1年時の関東遠征で新潟のレジェンド安英学氏(当時立正大学4年)に吹っ飛ばされ、心を折られる。2年時に全国選手権16強入りを経験。ケガと不整脈を理由にサッカーと距離を置き、高校卒業後は保育の道へ。専門学校を経て地元のこども園で12年半勤務した後、ひょんなことから2019年途中に日刊スポーツに入社。20年からアルビレックス新潟担当となり、再びサッカーに浸る。憧れの選手は中村俊輔(現横浜FC)。