「川崎フットボールアディクト」

中村憲剛FROが語る今季の役割と、選手たちから感じたもの【#オフログ】

■FRO中村憲剛の今季の立場について

今季もFRO(Frontale Relations Organizer)として契約を更新した中村憲剛FROが、取材に応じた。

1月21日のFC琉球戦に合わせ赤間総合運動公園サッカー場を訪問した中村FROにとって、引退後初めての沖縄合宿訪問だった。

冒頭「まずグッズを売るところから。そこから入って。いろんなものをを兼務しているので(笑)」との冗談で報道陣を笑わせつつ、トップチーム、U-18の体制が共に変わった今季の現場との関わり方について説明した。

「去年まではアカデミーが中心でしたが、今年からトップチームの体制も変わりますし、それに伴ってユース(U-18)のところも変わっているので。そこを繋げる、関わる頻度を増やしていこうという話を強化ともして、キャンプまで来るということになりました」

トップチームは長谷部茂利監督を迎えコーチングスタッフも一新。U-18から長橋康弘監督と、佐原秀樹コーチがトップにコーチとして異動しており、U-18には森勇介氏がU-15生田から新監督として異動。U-18には昨季現役を引退した稲本潤一氏もコーチとして新加入するという背景があった。

実際のところ、中村FROは、FROとしての契約更新のリリースの中で以下のようなコメントを発表していた。

中村憲剛氏「Frontale Relations Organizer(FRO)」契約更新のお知らせ

「これまでもFROとしてトップとアカデミーの間をつなぐことは強く意識していましたが、いろいろな変化が起きるであろう新シーズンに関しては、長谷部監督を迎えるトップチームの新しい変化を僕自身も全力で学び、それをどうアカデミーと共有していくか、これまで築いてきたフロンターレの色を新しいスタッフの方々にどう伝えていくかが、クラブの未来を考えた時にこれまで以上に大切なポイントになりますし、自分の役割がより大事になると考えました。

そういう自分の想いをクラブに伝えて協議した結果、来季はトップチーム、アカデミー共に、今まで以上にチームに近い場所で関わらせていただくことになりました」

この背景にあるのは、近年U-18とトップチームの関わりが年々密になっている現状があるということ。トップに昇格する選手が続いており、また沖縄合宿ではアカデミーからの練習生を受け入れてきた。だからこそ、FROとしての役割を変化させるのは流れとしては自然だと言える。

ちなみにアカデミーには引退後から継続的に関わり続けていたとのことで「引退後から自分の役割としてはやってきました」と口にして「大関(友翔)とか高井(幸大)もそうですし。今回のカイト(土屋櫂大)もそうですし、練習生もそうですが、どんどんどんどんトップにユースの子たちを引き上げてもらうのは、ユースの強化にもなりますし」と述べている。

そうやってトップとU-18の連携を深める中で重要になってくるのが「トップとユースのサッカー観の統一」の部分。

「ユースの子たちがトップに上がった時に全然違うことやってたらまた大変なので。そうならないように、長谷部さんのスタイルを自分も勉強しながら。時にはユースに行って、森監督なんですが、彼らにこっちで聞いたことを伝えて、という感じです」

昨季までの鬼木達前監督、長橋康弘前U-18監督時代には「正直自分がそこまで入る必要がなかった。スタイルはみんな分かってましたし」という状態だったというが「今回(トップもU-18も監督が)変わるので」と環境の変化を説明していた。

「まだ始まったばかりで、(トップとアカデミーの間を)2往復くらいしかしてないので」としつつ「だけど『こういうふうにやってたよ』とかっていうのは言えるし。ただ、ユウスケ(森監督)にはユウスケのサッカー観があって、フロンターレの哲学もあって、そこに長谷部さんのエッセンスをどう加えていくのかはまたこれからの作業になると思います」と口にして何往復もする覚悟を見せていた。

■「もっとギラついてほしい」

引退後、初めての沖縄合宿訪問だとのことで中村FROに0−2で敗戦した琉球戦についての所感を尋ねた。

「本当にトレーニングマッチも簡単じゃないですし、ましてやね、今年、長谷部監督になって、一からやりたいことをやる段階だと思うので」

そう話す中村FROは「いろいろな問題点が起きた方が僕はいいなって思います。だから今日の結果自体は良くないんですけど。どんな試合でも勝たなきゃいけない。けど、それでも見えるものは僕自身も今日、30分4本の中で一杯ありました」と述べている。そして自身が感じた課題をスタッフや選手間で共有して「いい方に持っていけるように支えていけたらいいなというふうに思います」としていた。

なお「監督交代はいつだって難しいです」と中村FROは話しつつ、長谷部監督の色が出て来る過程に期待感を口にしていた。

「やっぱりこれまでにやってきたものが色濃く残った状態で、1年間戦うので。長谷部さんもそこのギャップのところ、これまでやってきた(フロンターレの)いいところと、長谷部さんのいいところを融合したいというふうに思っている思うので。そこでネガティブなことは僕はないかと思います」

また選手たちからも前向きに長谷部監督のサッカーと向き合う姿勢が伝わってきているようで「すごくみんなチャレンジしているというのは、麻生の練習を見ててもそう思いますし、(沖縄での)練習でもそうやってるのを聞いていますし、今日のゲームでもそういう姿勢は見えているので。みんな前を向いてどんどん、トライしているなと思います」としていた。

そんな今季は選手全員にチャンスがあると中村FRO。

「横一線でしょう。なんなら一番チャンスですからね。もっとギラついてほしいなと思いますね。特に若手は。監督が変わるってことは、フラットになるってことなので」

そう話すと「ここで爪痕を残さないといけない。だから、ベテランがいるからとか、レギュラーの人が居るからとかじゃなくて、今全部横一線だから。もっとやってほしなと、ちょっと若い子たちには思いました」と述べていた。

ちなみに、新卒加入の合宿中から結果を残してきた選手として三笘薫の名前を上げている。

「開幕からレギュラーで全部出てる人って、この時点で爪痕を残しますからね。カオルとかじゃないですが、そういうのは見せてほしいなと。慣れる時間とかじゃないないんですよ。プロだから。ここでやらないと。パフォーマンスしないと。FWだったら点取らないといけない。DFだったらゴールを守らないといけない。それを見せるということ」

もちろん「疲れてるとは思いますが」と選手を気遣いつつ「そして私は自分のルーキー時代を思い出すと、全く何もできなかったので。そういう経験があるので。しょうがないかなと思いつつも、やっぱりそこで出してほしいなって思います」と自らの経験を元に話していた。

なお、三笘については「(合宿中も試合に)出たら点取ってますし、今でも思い出します。(当時から)言うことはないなと。点取るし」と振り返りつつ「いいろんな選手が居て、ここで一気に行く選手もいると思いますし、速度は人それぞれなので。それをちゃんと見てあげたいなと思います」と述べている。

そんな中村FROの沖縄滞在期間は4日間。この間で何を伝えるのかを聞かれると「そんなおこがましいことするつもりはないので。今、フロンターレで何をしようとしているのかを学びつつ、聞かれれば答えはするけど、それはコーチングスタッフの方もいますし、本当に耳を傾ける相手の一人として、居ることが大事かなと思います」としていた。

(取材・文・写真/江藤高志)

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