「川崎フットボールアディクト」

鬼木達監督が称賛したブーイングのない等々力「唯一無二の、このクラブの誇り」/J1 第38節 vs福岡【コラム】

鬼木達監督の退任の挨拶には心動かされたが、その中でサポーターに言及した部分が特に印象に残った。

「このクラブを支えているのは自分たち監督やコーチや選手ではなく、僕達はクラブの歴史の中の一部であって、いつも言っていますけど、クラブを支え続けるのは、クラブの中に居る人達であり、外からいつも熱い声援を、選手の後押しをしてくれていている、皆さんです。だからこれから先もとにかく、選手の後押しをしてほしいです」

そんなサポーターについて、特にブーイングせずに選手を後押ししてきたその姿勢を鬼木監督は称賛。選手たちを励まし続けてほしいとしている。

「最後になりますが、皆さんには選手を信じてほしいですし、僕は、選手が本当に大好きなサッカーをやっているので。そういう選手たちをブーイングとかではなく、いつもいつも、いつものように、励ましの言葉で来年も支えてもらえればなと思います。」

そして「ブーイングをせずに、やってこれたというのは、唯一無二の、このクラブの誇りだと思っています」とまで言い切って、そうした等々力の雰囲気で、今後も選手をサポートしてほしいとしていた。

「これからも皆さんが、選手を後押ししてほしいと思います」

鬼木達監督がフロンターレに在籍してきた26年間の年月の中。そして特に監督としてチームを率いたこの8年間の経験の中、選手を前向きにモチベートする等々力の雰囲気の意味を感じていたのだろう。

もちろん、コロナ禍を契機にサポーターの入れ替えが発生し、ブーイングに抵抗がない層が増えてきたのも事実。ただ、応援をリードしてきた川崎華族は、応援のツールとしてブーイングを否定している。現職の監督としてその価値観を称賛すると、自らへのブーイングを封じる手段になりかねない。だから今までは公言しなかったであろう鬼木監督が、それでも退任の挨拶で言及したのは、それが、後世に残してほしいサポーター文化だと感じていたからなのではないか。そんなことを鬼木監督の退任の挨拶から感じ、そのメッセージ性が強く心に残った。

(取材・文/江藤高志 写真/金田慎平)

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ