イ・ジョンヒョ監督が感謝したフロンターレの挨拶とその理由/ACLE2024/25 MD2 vs光州【コラム】
試合後の会見の席上、試合を振り返る光州のイ・ジョンヒョ監督が「最後に」と付け加え、フロンターレの選手たちに感謝した。
「最後に、(試合後に)川崎の選手たちが我々のファンところに来てくれたことに対しては、今まで見たことがないですし、こういったカルチャーはすごくすばらしいものだと感じています。川崎の選手やスタッフにもすごく感謝しています」
そうイ・ジョンヒョ監督を驚かせ、感謝の言葉を口にするに至るフロンターレの挨拶については、光州が先にフロンターレサポーターに挨拶をしてくれたことに対する返礼だったという。
試合後、勝利した光州の選手たちがセンターサークル付近からフロンターレのサポーターに向けて挨拶しており、等々力に集まったフロンターレサポーターはその挨拶に拍手で応じていた。
光州から始まった挨拶について、試合後に会見に出席したキャプテンのイ・ミンギは「試合が終わった後だけではなく、試合中からスタジアムの雰囲気にすごい感動していたから、試合後に感謝を伝えたくなりました。試合後に関してはファンの方々が我々に拍手をしてくれて、それに対してもすごく感動しました。韓国では見たことがないわけではないですが、すごく珍しいことであって、すごく川崎のファンに対してリスペクトを持って感謝を送りたいといったところです」と説明していた。
ちなみに試合中は激しくやり合う場面もあり、もみ合いに対し場内からはブーイングが出たりもしたが、そうした反応も含め光州の選手たちは等々力のサポーターからのリスペクトを感じたとのことでそれが挨拶の理由だったという。
なお、フロンターレが相手チームサポーターに挨拶するのは、蔚山戦に引き続き2試合連続のこととなる。蔚山戦も蔚山の選手たちが先にフロンターレサポーターに挨拶をしてくれており、その返礼だった。なお、フロンターレとしては基本的に相手チームサポーターに対する挨拶は、感情を逆なでしたりする可能性があるためしていないとのこと。珍しい出来事が続いたということになるが、激しくやり合った試合後にお互いを称え合う光景が良いものなのは間違いない。
最後に余談になるが、試合後の相手チームサポーターへの挨拶については、相手チーム関係者からの依頼があれば、受けることもある。一例として上げられるのが昨季の天皇杯の高知戦後のこと。
高知戦後、フロンターレの選手たちが高知サポーターの前まで歩み出て挨拶していて驚いたがこれは高知県サッカー協会からの要望を受けてのものだったという。
「もう次はないかもしれない」との切迫感も含め、高知県のサッカー普及のため、高知県FAの意向を汲んだフロンターレが承諾したということだったらしい。相手チームのサポーターに挨拶する姿はプロではあまり見ない光景だっただけに、その背景とともに紹介しておく。
挨拶を受けた高知のサポーターが一人でもフロンターレのことが好きになってくれたら意味はあり、また仮にそうでなくても、サッカーが好きになる人が出てくれば、お安い御用だということになる。
そういう意味で光州サポーターが一人でも、光州の次にフロンターレの事を気にかけてくれるようになればそれでいいのではないかと思った次第だ。
ちなみに試合前に日本のアニメやJ-POPが好きで日本語を勉強しているという韓国人女性に取材したが、逆もしかりで、民間レベルでの日韓の雪解けは少しずつでも進んでいるということなのだろう。
(取材・構成/江藤高志 写真/金田慎平)