クラブユース選手権決勝は強行されるべきだったのか【コラム】
川崎U-18がG大阪ユースと対戦したクラブユース選手権決勝は、2時間15分の遅延と、会場側の都合による40分1本での決着という異例のレギュレーションで実施された。
決まったものは仕方なく、また最終的に「これでやります」と決まった条件で行われた決勝戦だということで、優勝したG大阪ユースさんの結果に対してとやかく言うつもりはないのだが、それにしても言いたいことがある。試合開始が遅れ、ただでさえ短い40分ハーフの試合を40分1本にしてまであの日にやる必要があったのかどうか。
もちろんG大阪ユースは関東への遠征中だということで日程変更に対する負担は大きくなる。当然試合を見に来た保護者などの観客にも影響は広がる。決勝戦のチケットは有料販売されていたということも事態を難しくさせたのは間違いない。有料試合の延期対応が簡単ではないこともよく分かる。ただそれは言ってみれば、運営側の都合であり選手ファーストではないのだ。
ある関係者に聞いたところ、18時キックオフの試合開始の判断が、大雨とカミナリのため18時半の時点で保留されているが、このタイミングでは両チームの監督とも別の日に移すことはできないのかとリクエストしていたのだという。その提案に対する運営側の回答は会場がないというもの。当然、すでに18時を回っており、通常の施設であれば営業時間は終わっている。そこから翌8月1日に試合ができる会場を探すというのは難しい。ただ、それにしてもそう遠くない別の日の試合会場を、もう少し探してみても良かったのではないか。放送はなく、インターネット配信のみだったのだから、どこかの練習場を借りてやることも可能だったかもしれない。
仮に会場が見つかったとしても、そこから運営の手配を考えると、やらなければならないことが多すぎて運営として難しい対応を迫られるのもよく分かる。ただ、この大会は高校年代のクラブユースの頂点を決める大会で、3年生にとっては最後の夏になる。そう考えると、移せない理由を探すのではなく、移すことを前提にシミュレーションしても良かったのではないかと思っている。
ところで過去に高校年代の決勝戦で延期された試合については雪の影響を受けた高校選手権第91回大会が上げられる。
悪天候による順延は、史上初だそうです。なお、順延は昭和天皇の崩御以来のことだそうです。
— 江藤高志@川崎フットボールアディクト (@etotakashi) January 14, 2013
今日は11時過ぎから100人を超える手伝いの高校生などを動員し、1時間以上雪かきを試みたそうです。最善は尽くしたようです。まあ雪の残る難しいピッチでやるよりも、仕切り直しという判断は懸命だと思いますね pic.twitter.com/RuCLmcsa
— 江藤高志@川崎フットボールアディクト (@etotakashi) January 14, 2013
鵬翔がPK戦の末に京都橘を下し初優勝したこの大会は雪のため、1月14日に開催予定の決勝戦を延期し19日に実施している。
高校選手権決勝は地上波でテレビ中継される一大イベントで、延期となるとそれだけでも手続きが煩雑で関係者の労力は大変だったかと思うが、それでも関係者は延期を決定。その意思決定の過程の中では「雪の中で決勝戦を戦わせるのはかわいそうだ」との判断もあったという。
15年前の東福岡対帝京よりも2時間、雪の降り始めが早かった。ここまで準決勝を戦った高校生に、雪の中で決勝戦を戦わせるのはかわいそうだという判断もあったようです。
— 江藤高志@川崎フットボールアディクト (@etotakashi) January 14, 2013
延期するのか、しないのかの二択ではなく、延期した場合どうなるのかを考えていたのかどうか。
運営のみなさんの様子を見ていると、そうした緊迫した雰囲気は感じられなかった。それよりも時間内に施設から撤収することのみを最優先させて動いていた試合後の方が殺気立っていた。
選手のことを考えて、延期した場合のシミュレーションをしてみてもよかったのではないかと、そんなことを思った。サッカー本来のあり方として前後半で戦ってきたのだから、それが実現できる決勝戦の開催を模索してほしかった。
(取材・文・写真/江藤高志)