「川崎フットボールアディクト」

強さを示した2得点と、甘さが露呈した3失点/クラブユース選手権決勝 vsG大阪ユース【レポート】

■鮮やかな逆転劇

クラブユース選手権決勝初進出の川崎U-18は、G大阪ユースと対戦。激しい雨と雷雨による中断もあり、イレギュラーな試合形式を強いられ、40分1本の短期決戦に。ハイペースな試合は点の取り合いになり、最終的に川崎U-18が2-3で敗戦した。

1ゴール1アシストと結果を残しながらもヒーローになれなかった柴田翔太郎は、その目を潤ませながら試合を振り返った。

「優勝しようというところで今日ここに来て、群馬という厳しい環境を乗り越えてきて、本当に最後だったので。本当にただただ勝ちたかったという気持ちです」

雷雨の影響を受け試合開始時間は2度の変更を経て2時間15分の繰り下げを余儀なくされた。また会場の都合により、40分1本のみの試合方式で実施。加えてベンチ入り9選手中5選手までの交代が可能となり、先制点と交代采配がポイントとなった。

そんな試合は、両チームとも準決勝からの選手の入れ替えはなし。現状のベストメンバーで臨むと、前半18分に川崎U-18が1枚目の交代カードとして知久陽輝に代えて香取武を投入。ところが、その直後のゴールキックを奪われてカウンターを受け、G大阪ユースの中積爲にミドルシュートを決められてしまった。

試合時間は残り時間は22分にアディショナルタイムのみ。劣勢に立たされた川崎U-18ではあったが、冷静に試合を進めた。そこで活躍したのが柴田翔太郎だった。

まずは24分。関德晴が投げたロングスローのこぼれ球が、柴田の足元に転がるとこれをダイレクトでシュート。今大会、準決勝までの5試合を無失点で乗り切ってきたG大阪ユースの堅守をこじ開ける柴田の同点ゴールとなった。

「あまり覚えてないんですけど。負けていたので。ノリのロングスローだったと思うんですけど。自分の前に転がってきて、気持ちで押し込んだ感じだったんですけど」

さらに29分には右サイドから攻略。加治佐海からのスルーパスに走り込んだ柴田がダイレクトでクロス。これを1枚目の交代采配でピッチに入っていた香取が右足で合わせ逆転に成功した。

「誰が見ても前に出てくるものだと思ってもらえていると思います」と話す柴田の言葉の意味は、柴田がサイドを突破してくれるという信頼感がチームメイトにあるということ。だからこそ、加治佐からのラストパスが出て来た。

「中にいいストライカーがいるので、そこにアシストのところを合わせるだけなのかなと思うので、タケシ(香取武)に感謝したいなと思います」

香取への感謝の言葉を口にする柴田は「結果を残せるサイドバックだと自信を持って言えるので。チームを勝たせる、そんな存在になりたかったです」と肩を落としていた。

■暗転

川崎U-18、1点リードの試合が暗転したのは5分と表示されたアディショナルタイムに入ってから。

きっかけは40分のG大阪ユースボールのCKで、ゴール前に上がっていたGKの荒木琉偉に、児玉昌太郎が体をぶつけた際に顔を打撲。G大阪ユースボールのタイミングで試合が一旦止まる。この処置の際にメディカルがピッチに入っており、児玉は一旦ピッチ外に。またドロップボールで試合が再開した際に、G大阪ユースの山本天翔はフリーでボールを蹴れる状態になっており、シュートを許してしまった。慌ててシュートブロックに入るが、このこぼれ球がG大阪ユースボールのCKになる悪い流れに。ドロップボールでの再開時に一人少ない状態だということもあったが、気の緩みが出てしまった場面だった。このCKを蹴った山本のボールが再びゴール前に上がっていたGK荒木の頭を経由し、最後は古河幹太が押し込みまずは同点。

さらに40+5分のプレーをファールに取られ、川崎U-18ゴール正面のFKを与えてしまった。キッカーは直前の同点弾を演出していた山本。その山本が40+6分に蹴ったFKはクロスバーに触れつつゴールに入る弾道でゴールイン。GKとしてはノーチャンスのシュートだった。土壇場で逆転を許した川崎U-18は、その後リスクを取ってパワープレーに出るが力及ばず、2-3での敗戦となった。

■反省

アディショナルタイムの2失点について長橋康弘監督は「本当に選手たちがかわいそうだなっていうことをすごく思ったんですけれども」と口にして「ただね、相手も同じ条件でやっていますし」と「かわいそう」の理由を述べている。この言葉の中に、通常のルールで戦わせてあげたかった、という思いが滲んでいるように感じたが、それよりも長橋監督は詰めの甘さを指摘していた。

「振り返ればやはり、ここの球際で負けてなかったら、とか、簡単にコーナーキックにしてなかったらとか。最後のファールのところも。引っ掛かった、引っ掛かっていないとかということではなくて、相手の球際の上手さだったり、そういったところも含めた中で、やっぱり改善していかなきゃならないと思うんですよね」と述べて、細かいプレーの問題点を指摘し、それがアディショナルタイムの2失点の原因だとしていた。

また、土屋櫂大は「逆転したにもかかわらず、本当に最後に2失点してしまったというのは本当に、結果が出てしまっているので。まだまだ自分たちは甘かったです」と反省しつつ「もっともっとこれから本気で一人一人が努力したり、技術もそうですし、体力もそうですし、全てにおいてもっともっと人1倍努力しないと、やっぱり優勝はできないと思います」と反省していた。

いずれにしても土壇場で試合をひっくり返された川崎U-18は「3年の最後の夏」(柴田)を最高の思い出にすることはできず。悔し涙を飲む結果となった。

■コメント

長橋康弘監督と、土屋櫂大、柴田翔太郎の両選手です。

次のページ

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ