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大きな展開で2得点。難関の天皇杯初戦を突破し3回戦進出を決める/天皇杯2回戦 vsソニー仙台【レポート】

天皇杯2回戦
6月12日(水)(19:00KICKOFF/U等々力/7,000人)
川崎 2 – 0 ソニー仙台

■ボールを動かしての得点

脇坂泰斗のサイドチェンジをきっかけに、山田新の先制点が決まったのが前半39分のこと。それまではガッチリとソニー仙台に守られる展開に息苦しさを感じていた。

「ゴール前はちょっと固められていたので。どう点取るかというところの意思疎通を合わせないといけないのかなというふうに思っていました」

先制点までの試合展開をそう振り返る脇坂は、その手段として考えられるのがボールを大きく動かす攻め筋だったと話す。

「実際に揺さぶる動きっていう、ボールを動かして揺さぶるというのがもっと前半からできたんじゃないかなというふうには思っています」

そういう意味で先制点は狙い通りの形で、またマルシーニョが脇坂の動きを良く見て合わせてくれたという。

「クロスだったり、ああいう背後へのボールは、多少ウィークだという分析はあったので。そこは、得点シーンなどはうまくマルシーニョが、僕が持った瞬間に走り込んでくれてて。シン(山田新)も詰めてて。良かったんじゃないかと思います」

ちなみにゴールを決めた山田は脇坂とマルシーニョの関係性を理解した上で準備できていたと述べている。

「ヤスくんとマルシーニョの関係で、ヤスくんがあそこで持ったときのマルシーニョの動き出しの形ではあったので。それに対していい準備ができましたし、本当にうまく自分の前に転がってきたので。うまく流し込めたなと思います」

大きな展開でゴールに結びつけた場面については、1点リードで迎えた後半58分の追加点もその形だった。佐々木旭からのフィードを受けたマルシーニョが一気にシュートにまで持ち込みゴール。アシストの佐々木はCBでコンビを組む大南拓磨、アンカーの瀬古樹と共に「蹴れたら背後をしっかり狙おうという話」をしており、それがアシストにつながったのだとしている。

佐々木旭、練習の成果でアシストを記録/天皇杯2回戦 vsソニー仙台【コラム】

佐々木については、この場面以外にもソニー仙台の最終ラインの背後を突くロングフィードを決めており、フロンターレの攻撃のアクセントになっていた。鬼木達監督からの指導を受け、蹴り方を変えていたと話していたが、それでアシストを記録するのだから適応力の高さは見事だった。

■混乱の末の堅守

先制点が決まるまでのフロンターレは思うようにシュートに行けておらず苦しんだ印象があったが、その理由の一つがソニー仙台の堅守だった。ある程度割り切ってゴール前に人数を掛けつつ、全体をコンパクトにする形を取っていた。スペースを消すことでフロンターレのパスワークを分断しようとしていた。

そうした試合運びについて、ソニー仙台の鈴木淳監督は狙いとは逆の戦いになってしまったと明かす。

「守備に関しても、もう少し前から行きたかった」

ソニー仙台が前から行けなかったのは「(フロンターレの選手に)何度か剥がされる場面」があったため。その結果、ソニー仙台の選手たちは裏返されることを恐れ、自陣に釘付けになってしまったという。

また鈴木監督は「前半については、うちの左サイドがちょっと混乱して、ウイングの選手が最終ラインまで引き込まれて、なかなかそこから攻撃に出られないような感じだった」とも指摘している。

ソニー仙台の左サイドを混乱させたフロンターレの右サイドについては、家長昭博の名前を例示して「家長選手のところになかなかプレッシャーがかけられなかった」と説明し、その家長の動きにも対応しきれなかったと話している。

「(家長が)中に行った時に、サイドバックの(瀬川祐輔)選手のマークが空いてきたり、そこの対応で(ソニー仙台の)ウイングの選手がどうしても下がらざるを得なくなってしまって、フリーな状況がかなりあって、それが良くなかったのかなと思います」

この鈴木監督の説明を聞いて腑に落ちたのが、前半のソニー仙台の6バックでの守備だった。守備時、4-4のブロックが基本形のソニー仙台が、時間帯によっては6-3-1のような形になっており、気になっていた。まずは守り切るのだという意思の現れだと考えていたがさにあらず。守備に混乱が生じた結果、意図に反する形で守備に回ってしまったのだという。

■先発復帰の山本悠樹

混乱していたとは言え、そのソニー仙台の守備をどう攻略していくべきだったのか。山本悠樹は「前半は相手もまだ失点してなくて。集中が途切れていない中で、どうやって入っていくかというのは、ちょっと課題のところではあると思います」と振り返りつつ「その中でも、やっぱり背後は突けられると思うので。そういうところから、相手の視線を変えるシーンがもう少しあってもいいかなと思います」と言う。その観点で言うと、山本は相手の想像の上を行くパスを出せていた。その本数自体はそう多くはなかったが、意外性のあるパスが出せておりソニー仙台を慌てさせることはできていた。

結果的に2得点は長めのパスから生まれたものだったが、フロンターレとしては最終的に人数を掛けて守る相手をパスワークでも崩しきりたい。そういう意味で、この日見せたようなパスが出せる山本の復帰はフロンターレにとっては今後に繋がりそう。山本と周囲の選手との連携は、ここからも磨いていけるはずで楽しみなところだ。

山本悠樹が4月のC大阪戦以来の先発で意識していたこと/天皇杯2回戦 vsソニー仙台【コラム】


■勝負に出たソニー仙台

前半からの試合内容から判断して、後半58分の2点目で勝負の行方はほぼ決着。フロンターレとしては、リスクをコントロールしつつ追加点を狙うという展開になる。

そんな中、ソニー仙台は75分の2枚替えをきっかけに攻撃的に反撃に出始めた。この変化について鈴木監督は「後半に入って2枚替えをして、それで守備はちょっとおろそかになるかもしれないんですが、ボールを動かせる選手を入れることによって少し前進できたのかなと思います」と説明。ある程度リスクを取っての反撃だったと明かしている。そして「あの時間帯になると、もう1点取られてもしょうがないという感じでしたので、1点を取りに行く意味でボールは動かせるようになったと思います」とも述べていた。

敗れるのであれば2点差も3点差も同じ。だから、鈴木監督は3失点目を恐れ、待ちの姿勢で試合を進めるのではなく、主体的に試合を動かすことを選択していた。この75分からのソニー仙台の攻勢については、実際にフロンターレゴールに迫る形を作られており、1点決められていたら試合の流れはわからなくなっていた。そうやってリスクを取りながら、前に出る姿勢を示すあたり、勝負師としての勘の部分がでていたと感じた。

■宮城天、復帰

ソニー仙台に押し込まれた試合終盤の83分、鬼木監督は3枚替えを敢行した。山本、脇坂、瀬川祐輔に代えて、田邉秀斗、ゼ・ヒカルド、宮城天を投入。特に宮城については膝のケガからの復帰戦となった。

「仕掛けるところ。チャンスメイクをしながらですが、よりゴール前での仕事が自分はしたいと思ってるので。今日はそこは少しでしたけど。2年前のときは、ああいう場面はなかったので。そういう部分では成長できていたのかなと思います」

この宮城の言葉について、「2年前のときは、ああいう場面はなかった」との発言にかかるのは「よりゴール前での仕事が自分はしたいと思ってるので」という部分で、それが少しではあるが出せていたと手応えを口にしている。なお、この点については藤枝、栃木との練習試合を振り返る文脈で、以前にもサイドに張り付くだけでなく内側に入りたいとしており、実際にそうした動きが出せていた。

よりゴール前への意識を高めている宮城は「今日は点を決められなかったんですが、感覚的なところで言うと、悪くないと思いますし、ゴール前に入っていくところで、あとはそこは維持しつつ、サイドでの仕掛け。スプリント回数、ドリブルの切れだったり、だいぶ長い期間離脱していたので。そこの部分がまだ、100%ではないので。そこを練習でやっていきたいなと思います」と今後を見据えていた。

そして等々力で復帰の第一歩を踏み出したということについて「やはり地元でもありますし、アカデミーから育ってきたので。ここで活躍したいという思いが強くて、でも、成長するためにレンタル移籍して帰ってきたので。とても嬉しいですけど、結果を出していかないとなと思いました」と表情を引き締めていた。

そんな宮城の復帰の第一歩となったソニー仙台戦をフロンターレは勝利。3回戦進出を決めている。対戦相手は大分となった。

(取材・文・写真/江藤高志)

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