「川崎フットボールアディクト」

後藤静臣スクール・普及部マネージャー/「SSガールズ出身の子たちが将来WEリーグでプレーしてくれれば嬉しいですね」【インタビュー】

2023年4月から川崎フロンターレSSガールズというチームが立ち上がり、活動を続けている。これは女子中学生のチームで、加入条件はフロンターレのスクール生(小学生時に在籍していること)が対象であること。チーム登録して公式戦を戦うというチームだということで、フロンターレとしては新たな試みということになる。

■立ち上げの経緯

――中学生年代を対象にしたフロンターレSSガールズが今年の4月から活動を開始していますが設立の経緯についてまず教えてください。

「まずは育成の拠点としてAnker フロンタウン生田ができる中で、U-18が使っていた富士通スタジアム川崎に空きができると。そこでスクールの受け皿として中学生年代の男子か女子のチームについてアイディアを出し合ったんですが、男子に関してはU-15が生田と等々力との2チーム体制になると。そこで女子について検討を進めました。女子の中学生のチームについては前々から要望が出ていて、女子の受け皿として立ち上げられないかとのことで、スクール・普及部として意見をまとめました。それを社内でプレゼンさせてもらったという経緯です」

――よく中学生年代は普及のボトルネックだと聞きますが、そういう意味ではここの世代に女子チームを作る意味は大きいですね。
「中学生は部活もなかなかなくて、クラブチームも少ない。高校のユース年代になると部活数が増えてきたりとか、クラブチームがあったりで数が増えますが、中学校年代のところは川崎の市内のチームも少ないですし、何とか受け皿にできないかなと考えています」

――現状スクール生に限定をしていますが、まずは身近で見てる子たちを継続で見て行こうと。
「そうですね、まずはスクール生からということです。当然、アイディアの一つに川崎市内の子どもたちを対象にセレクションを実施するという話もありました。ただ今回はそうした競技志向の高い子だけでなく、サッカーを続けたいという子たちをどんどん受け入れて、女子の普及をメインにということでやらせてください、という話をしました」

――今後ユース年代のチームがほしい、という声も出てくるかもしれませんね。

「当然フロンターレが女子のジュニアユースを立ち上げるとユースも、という要望が出てくると思いますが、現状ではそこまでの環境をクラブとして準備できないですし、保護者説明会では今はそういった構想はないとは伝えています。3年間、フロンターレのサッカーを学んでもらい、サッカーを続けるのであれば、クラブチームなのか部活なのかを選んで次のステージに向かってほしいという話をしています。もちろんWEリーグなどの構想も今はありません」

――ユースとしての受け皿は川崎市内にもあるんですか?
「それが無くてですね。そこはツテを頼りに子どもたちとは面談を通じて進路の希望を聞いて、3年間をかけて高校生年代をどこでやるのかっていうのを決めていければなと思っています。ですので我々は間をつなぎ、練習に参加させてもらったりSSガールズのリーグ戦を見に来てもらったりということを考えています」

■反響

――リリースが出た後の反響はどうでしたか?
「リリースが出たのが(2022年)9月29日と少し遅かったんですよね。それは富士通スタジアム川崎の指定管理を継続できるかどうか正式にわかるのがその時期だったためです。最終的に指定管理を取れなければグラウンドが使えなくなりますし、それでこのタイミングになりました。それでも理解して来てくれる方は、お願いしますということで伝えました」

――募集時期が遅れると、集まりにくくなりそうですね。
「ですから最初は集まらないだろうなと考えて協会にエントリーの最少人数を確認しました。7人居れば大丈夫だとのことでしたので、説明会では7人以上集まればリーグ戦にも出場する旨も伝えました。神奈川県の4部リーグからのスタートですが、それでもいいよっていう方はぜひ来ていただければということで伝えました」

――最終的に何人集まったのですか?

「9人です。夏ぐらいには次の進路がほとんど決まってて、逆になんでこのタイミング(9月)なんですかって質問されましたけど、それは申し訳ないと思っています。県の4部リーグだと年間7試合ほどなので、フットサルにもエントリーしてリーグ戦に出ています」

――実力はどうですか?
「さすがに苦労してますね。中3、中2がプレーする15歳以下のリーグに中1の子たちが出るということで、やはり体格の違いはあります。攻めてても簡単に奪われてカウンターを打たれてしまっていました」

――ただ、今年募集する来年の子達からはもうちょっと集まるのでは?
「実は去年9月のSSガールズ設立のリリース後に女子の5年生のスクール生が増えました。その子たちが今年の6年生でSSガールズに2期生として入りたいということだと思います」

――SSガールズの加入条件が、スクール生だということもあるわけですね。
「そうです。今年の6年生は27人ほどになりました」

――人数が多い場合は抽選になると聞きましたが、上限は何人くらいを考えているんですか?
「一応20人前後で考えています。あまり増えても試合に出られる選手が限られてしまうので。でも中学生だと3チーム登録とかもできるので、ある程度増えても対応はできます」

――その6年生に対してての説明会はすでに終わってるんですか?

「今年の6月中旬に体験会を開催しまして、1期生と合同で通常のトレーニングメニューをこなしてもらいました。20名ほどが参加してくれました」

――女子サッカーの裾野を広げるという意味では良い実績になりそうですね。
「SSガールズとかとは別に、なでしこサッカー教室というものを2ヶ月に1回程度の頻度で行っています。これは女子の普及を念頭に置いたものです。対象年齢は小学生で、3学年から4学年を一括りにしています。例えば7月3日の回は小3から小6まで。5月7日の回は小1から小3といった形です」

――スクール生全体の数に対して女子の数はどれくらいなんでしょうか?
「スクール生全体で2400人くらいで、女子は小学校の全学年を合わせて100人ほどですが6年生だけ27人と多くなりました」

■今後の展望

――今後の展望はどうでしょうか?
「SSガールズ出身の子たちが将来WEリーグでプレーしてくれれば嬉しいですね。今も県トレに選ばれてる子が2人います」

――何とか将来的に受け皿ができればいいですね
「トップまでは難しくても、ユースくらいまではできれば嬉しいですけどね」

――グラウンドの問題は大きいですか?
「それもありますし、今後は等々力が2030年頃に専用スタジアム化する中で、第1と第2を人工芝にという話も出てきます。2016年にクラブからの寄付で人工芝にした第1はもうそろそろ張り替えの時期で、そこの人工芝のお金をどうするのかという問題が出てきます。今後は優先的に使えなくなってしまうかもしれませんし、そうなるとグラウンドが無くなる、という話になりかねないので気にしているところです」

■第2期生募集の方向性

――第2期生募集に向けたスケジュール感はどうですか?
「今年(2023年)は8月ぐらいに2期生の保護者説明会を行い、SSガールズに入るのかどうかを選んで貰う予定です。だいたいどこのチームも夏休み期間中にセレクションがありますし、抽選になった場合、そこで入れない子に対しては次の行き先が無くならないようにしてあげないといけないので」

――どれくらい来るか楽しみですね。
「体験会には20人ほど来てくれたので楽しみですね」

――ところでスクールは現状、抽選でしか入れないという話も聞いてます。
「1年生から4年生ぐらいまではどの会場もほぼ定員いっぱいです。ただし5〜6年生は年度末に進むにつれ枠は空いてきます。引っ越しなどでやむを得ず退会してしまう子が出てくるので。あとは受験に備えて5〜6年になると辞めるといったこともあります。幼稚園は送り迎えができないから難しいという理由で、幼児と高学年はなかなか一杯にならない現状があります。そこは悩みですね」

――SSガールズをスクール生に限定することで女の子の加入希望者が増えるきっかけにはなりそうですね。
「SSを立ち上げると決まった時に鷺沼スクールで女子だけのクラスを作りました。今までは男子と一緒に女子も受け入れてやってたんですが、女子だけのクラスを作り、今年は富士通スタジアム川崎に女子だけのクラスを新設しました。鷺沼は認知されてきていて結構埋まっていますが、今年作ったばかりの川崎会場スクールはU-8、U-10、U-12と2人ずつしかいません。ただ鷺沼も徐々に増えて行ったので、立ち上げの頃はそんな感じでいいのかなと思っています」

――鷺沼っていうと鷺沼兄弟の効果は大きかったのではないですか?
「すごかったです。鷺沼兄弟、すごいですね。問い合わせはすごくて、でも学年によってはやっぱりいっぱいで他の会場だったらということで近くのスクールを紹介したりしました」

――さすが鷺沼兄妹(笑)。では、SSガールズがこれからどう発展していくのか、楽しみにしてます。
「ありがとうございます」

(取材・構成・写真/江藤高志 写真提供/©KAWASAKI FRONTALE)

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