「川崎フットボールアディクト」

強度と自信を武器に「持ってゴール、奪ってゴール」で勝利を目指す/プレミアEAST第7節川崎U-18対青森山田【プレビュー】【アカデミー】【無料公開】

昨季、プレミアリーグ昇格初年度でEAST優勝を果たした川崎U-18(ユース)は、連覇を狙う2023年シーズンを戦っている。

そのU-18は、キャプテンのGK濱﨑知康をはじめとする新チームで6節までを消化。前節のアウェイ昌平戦を1−2で落とし今季初黒星。2−2で引き分けた5節の市船戦に続き2戦連続未勝利で勝点11の4位につけている。

そんなU-18が今節対戦するのが勝ち点15で首位を走る青森山田だ。トップチームの横浜FC戦翌日の5月21日に、Anker フロンタウン生田にて11時キックオフで行われるこの試合を前に、5月16日の練習を取材させてもらった。

・試合情報
川崎公式
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■強度と自信

練習の立ち上げ日ということで、恒例のインターバル走で練習はスタート。その後、2対2+フリーマン、3対3+3といったメニューが行われた。

2対2+フリーマンの練習中、長橋康弘監督からの指示の言葉の中に、今のチームの方向性を示していそうなキーワードが聞かれた。

「強度を落とさない」
「自信を持って」

ここに「切り替えの早さ」との言葉が加わって選手たちに指示が飛んでいた。なおこのコーチングについて練習後に長橋康弘監督に伺ったが、守備の強度の強い相手を想定した練習で、そうした相手の一つとして次節対戦の青森山田の名前も出ていた。

「我々に対し守備の強度を高くしてくるチームというのは、次の青森山田さんは特にそうですが、せっかく奪ったボールをまた相手にあげてるようでは、かなり青森山田の時間になるんではないかと。その辺のところはやっぱり意識した中で、できるだけ自分達の時間を増やすことを意識してやっています」

つまりボールを奪うための強度。そして奪ったボールを自信を持って繋ぐということ。そのための切り替えの早さがポイントで、それを身に付けて行くことを意識した練習だった。

なお、フリーマンを入れたこの練習はボールを保持する側が常に1枚多い状態に。そして、1枚余っている「プラス1」を見つけられるのかがポイントにもなる。そうした設定の練習でもあり、長橋監督は「プラス1はできているはず。見つけろよ!」と声がけしていた。

3対3+3の練習では、説明は割愛するが設定上、ボール保持側が有利な状況の中、いかにしてパスを阻害するのか。すなわち切り替えの早さを意識することが求められた。また、ボール保持側はこの練習の結果、近くから遠くのパスコースへと選択肢を切り替えて、深みのあるパスを出すことが求められていた。

■居残り(自主練習)は時間制限あり

全体練習はその後2人一組でのロングキックに続き、ヘディングが行われており、トップでも見慣れた基礎的な練習に取り組んでいた。ちなみにトップとの違いは、それぞれの実施時間の長さ。U-18ではそれぞれ5分程度行われていた。簡単な練習だが、地道に続けることで違いが出る練習だとも言える。

全体練習の最後は、4対4のミニゲーム。心肺系を直撃しそうな練習だった。

居残り(自主練習)はコンディションなどを考えて15分間に限定されて実施。それぞれの選手が課題として考えているメニューと向き合っていた。

居残りのあとの円陣の中で誕生日を祝われていた子が一発芸をやっていたが、なかなかの強メンタル。ただ、考えてみるとファイナルでは1万人を超す観客の前でプレーしなければならない。30人ほどのチームメイトの前でビビっていたら、プロなど目指せないということも言えるのかもしれない。

ちなみにスタッフにもこの日が誕生日の方がおられており、選手たちからお祝いの歌が歌われていた。チームとしての結束や、明るさが伺える場面だった。

■今季の課題

全体練習後、長橋康弘監督と、岡崎寅太郎、柴田翔太郎の2選手に話を聞いた。

ますは、現状の4位という順位について長橋監督に。

「選手たちが勝ちにこだわりながら、内容にこだわっていくっていう中で、すごく改善点が見えた6試合だったかなっていうふうに思ってます」

そう話し始めた長橋監督は「選手たちは当然優勝を目指しているので、この順位で満足している選手はいないと思うんですけれども、課題が明確になってきたっていう部分でいうと、これはプラスかなっていう風に思っていて、その辺のところは選手はポジティブに捉えながらやってほしいなと思います」としていた。ちなみに課題については自分たちのやりたいサッカーを消されたときに上回れない部分だとしている。

「選手たちが自分たちのサッカーを意識している中、それを消しに来ることが多いように感じる中で、やっぱりまだまだできていない」

また試合の入りの時間帯に「躊躇しているようなところがあって、なかなか自分たちのサッカーをやりたいけれども、相手と対峙した時にその勇気がまだ湧いてこないというようなところが見受けられる」とのこと。

そしてそれが「今の力(チーム力)、今の技術かなっていう風に思っています」と長橋監督。その一方で「持っているものは、まだまだ出ていないとも感じていて」それを引き出すためにトレーニングを続けているのだとのこと。ポテンシャルを十分に出せていない現状について「その辺がですね、なかなか難しいんですけどね」と述べていた。

■「奪ってゴール」への偏り

柴田翔太郎は今年のU-18についてショートカウンターのチームではないかと話す。

「ヤスさん(長橋監督)がいつも『持ってゴール、奪ってゴール』っていう話をするんですけど、一番去年のチームとの違いは、今年はより『奪ってゴール』の色が強いのかなっていうふうに思ってます」

奪ってゴールはショートカウンター。持ってゴールは、ポゼッションで攻め崩すスタイルで、その2つの武器のうち、今季のチームは奪ってゴールに偏りのある状態だと柴田。これは長橋監督の、ポテンシャルを十分に引き出せてないとの現状認識とも合致する部分だ。

ちなみに「プレミアのゴールを見返したときに、ほぼボールを奪ってショートカウンターみたいなシーンが多いんですけど、逆に持ってゴールっていうところは本当に、今の段階では少ない」と話す柴田は、昨季との違いとして以下の選手を例示している。

「去年はゼキさん(大関友翔)がいたり、ナガネさん(松長根悠仁)がいたりっていうところで、ビルドアップのところでも自分たちがボールを保持しながら点を取るというシーンもあったと思うんですけど」

彼ら2選手が抜けたとしても、その穴を埋めた上で、持ってからのゴールを増やしたいと柴田は述べている。

「今年はチームとして、もっと持ってゴールっていうところを増やさないと、得点の伸びっていうのもないと思いますし、そこは本当に課題かなっていう風に思います」

■上回れる自信

チーム内得点王の岡崎寅太郎は、青森山田については昨季の最終節の悔しさがあるのだと話す。

「去年は青森山田さんと2戦やらせてもらって、アウェイの時には自分が決勝ゴールで、一番いい形で試合を決めれたんですが、2戦目は相手のマークに苦しんでしまって、何もできなくて。で、前半で退いてしまうっていう、なんとも言えない悔しさを味わって。ベンチに下がっても結構落ち込んで、仲間に相談したりするようなこともあったんですけど。そこで青森山田さんに負けてから、ファイナルも上手く波に乗れなくて、負けてしまったところもあるので。リベンジの意識はあります」

昨季の最終節の麻生での対戦の悔しさが、鳥栖U-18とのファイナルにまで影響が及んでいたというのは初耳だったが、それだけのインパクトがあったということ。その上で、強敵との対戦が楽しみだと岡崎は笑顔を見せた。

「今、高校年代でも屈指の強さを誇っている青森山田さんとやれるというところで、まず自分たちの力がどれくらい出せるのかというところ、通用するのか。そういったところを楽しみながら、戦えたらいいなと思います」

もちろん青森山田の球際の強さ、プレーの強度の高さは覚悟の上で、「でも自分たちも練習からそういうところは今年は意識してやっていて、上回れる自信はあるので。そこに自分たちの強さであるパスワークとか技術の高さを織り交ぜながらやれたらいい試合になるんじゃないかなと思います」と岡崎は試合を見据えていた。

■忘れ物

川崎U-18は国立競技場に忘れ物がある。それを取りに行くには、まずEASTで連覇しなければならない。

「もちろんそれはチームの目標ですし、絶対、成し遂げないといけないことだと思っていて」と、そう話す岡崎は昨季の3年生たちに感謝しつつ、自分たちの新3年生の代が頑張りたいと力強かった。

「去年は3年生たちに引っ張ってもらって、それに乗っかってた感じだったんですけど。今年は自分とか濱﨑(知康)とか、由井(航太)が去年やってた分、そこはしっかり気持ちを強く持って、周りも引っ張っていかなきゃいけないかなって、自覚があります」

そんな岡崎はゴールへの嗅覚を持ったストライカーで、尾川丈とのトップの関係性と、チームメイトからのラストパスを生かしたゴールを期待したいところ。

また柴田は自らのプレーについて、仕掛けやアグレッシブさが特徴だと説明してくれた。

「仕掛けのところ、アグレッシブに攻撃的にっていうのが自分の特徴なので。前節はサイドハーフで出ましたけど、そこで出た時も、サイドバックでもそうですけど、仕掛けてクロスで終われるっていうのが自分の武器ですし、オーバーラップしてハードワークしてっていうところも自分の武器なので。今年は攻撃で違いを見せたいなって思います」

ちなみに生田での前橋育英との開幕戦は、柴田からのクロスを岡崎がクロスバーに当ててしまい、柴田にはアシストは付かず。

「数字が足りないっす(笑)」と話す柴田に、この開幕戦の話を振ったところ「いつか取ってくれると思っています(笑)」とにこやかに答えてくれた。二人の信頼関係が伝わってきた瞬間だった。シバショウ→トラのホットラインが開通することを期待したいと思う。

■サポーターに

最後に岡崎、柴田の両選手にサポーターに対してのメッセージを貰ったので紹介して本稿を締めたいと思う。

○岡崎寅太郎

「いつも、応援ありがとうございます。この試合は優勝を狙うという意味でも、大事な試合になってくると思うので。自分はもちろんなんですけど、チーム全員で、戦う気持ちを前面に出して、自分たちのサッカースタイルを出せて勝てれば一番いいと思いますし、もちろんその上で、自分が決定的な仕事をして、チームを勝たせられるようにします。応援よろしくお願いします」

○柴田翔太郎

「ここ2試合結果が出てなくて、ホームの市船もそうですし、アウェイの昌平にも本当にサポーターが駆けつけてくれて、自分たちを応援をしてくれたんですけど、だから一番勝利を届けなきゃいけないなっていう風に思ってて。本当ちょっと、不甲斐ない結果に終わってしまってるんで。次はホームですし、青森山田さんってところで勝ってサポーターの皆さんと一緒にバラバラしたいなって思います」

――あとハイタッチもですかね。
「そうですね、やりたいですね(笑)、最近できてないですね」

※プレー写真は4月2日の開幕節、前橋育英戦のもの

(取材・文・写真/江藤高志)

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