「川崎フットボールアディクト」

横断幕を契機にクラブの方向性を再確認【#オフログ】【無料公開】

4月9日のアウェイG大阪戦の試合前。スタジアムの前で会話する吉田明宏社長と、川崎華族、山崎真代表、コールリーダー海人の3人の姿を見かけた。

ご存知の通り川崎華族はルヴァン杯浦和戦後、吉田社長の事業方針に疑義を呈す横断幕を掲出。横断幕は吉田社長に対する直接的な批判になっており、両者の関係が冷え込んでいるのではないかと危惧していた。ところが3人は和やかに会話。雨降って地固まるを地で行く状態に見えた。

※横断幕は成績不振に対するものではない

川崎華族の2人と話し終えるのを待って吉田社長に話を聞かせてもらったが、今回の横断幕の件を前向きに受け止められていた。吉田社長ご自身も全ての商店街を訪問するなど地域密着には気を配っていたと話すが、タペストリーの交換などについては社内での連絡が徹底できていなかったとのこと。そういう意味で、社内体制を見直すいいきっかけになったと話されていた。また横断幕についても、掲出直後に山崎代表と長時間に渡り話し合ったとのことで吉田社長は今回の件を前向きに消化したようだ。

また山崎代表、海人にも話を聞いたが、タペストリーなどの交換について、人手が足りてないのなら頼ってほしいと話していた。人手が足りないときにチームのために一肌脱ぐ人は多いはずだ。

近年トップチームを主体とする強化部がチームを牽引してきたが、トップチームが苦しむ今だからこそ地域とつながる事業部の仕事が重要になる。

ちなみにフロンターレの事業部は、トップチームの苦境に際し、頑張れる底力を持っている。鬼木達監督が庄子春男前GMの退任に際し、印象深い話として披露してくれたエピソードがあるが、それが2019年シーズンの出来事だった。

2019年は思うように結果が出せず、苦しんでいた鬼木監督を庄子前GMは事業部の会合に誘ったという。鬼木監督はその場でクラブスタッフに「(2017年、2018年の連覇について)ああいうのを味あわせてもらってんだから、こういう時に僕ら頑張りますから」との声を掛けてもらったのだと話していた。そしてそうした声を受けた鬼木監督は「本当に勇気付けられました。その時には本当にクラブの力とか、いろんな人がそういうふうに思ってくれてるんだって思いました。『こういう時こそ僕らですよ』みたいな感じはすごく受けたましたね」と話していた。

数年間に渡る主軸選手の移籍などもあり、チームは今季低迷している。そうした難しい時期だからこそ地道な活動が大事になってくる。

川崎フロンターレは川崎市に根ざしたチームなのだとの川崎華族の2人の思いは、吉田社長も同じく熱量で持つもの。今回、吉田社長、川崎華族のお三方に話を聞いて、川崎フロンターレを良くしていきたいとの思いのベクトルは全く同じだと感じた。そしてその方向性のすり合わせは出来たのだろうとも感じた。

今回の件を契機に、チームがいい方向に進むことを願っている。

(取材・文・写真/江藤高志)

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