「川崎フットボールアディクト」

庄子春男エグゼクティブアドバイザーが退任【ニュース】

3月9日にクラブから、庄子春男エグゼクティブアドバイザーの2023年3月31日付けでの退任が発表された。GMとして長らくフロンターレの強化に携わり、攻撃的なスタイルで結果を残すのだというブレない姿勢を継続してきた庄子前GMの存在があってこそ、今のフロンターレがあるのは間違いない。

そんなフロンターレの攻撃的なスタイルについてはいくつかの思い出話があるが、その一つがJ1復帰直後の2000年代後半の1件。知り合いの記者から「フロンターレは前じゃなくて後ろを補強すれば優勝できるのに」と言われたことがあった。

庄子前GMの攻撃的なサッカーへの思いの強さとは裏腹に、周囲からの正反対の受け止められ方が印象的で今でも覚えている出来事だった。

庄子前GMが攻撃的なスタイルのサッカーを実現させることにこだわったのは、ファン・サポーターに喜んでもらいたいとの思いがあるから。その流れの中にあったのが、期限付き移籍した選手にもフロンターレ戦に出場してもらうという契約条項だった。

「だって、レンタルで出た選手がうちの試合に出たほうがサポーターも喜ぶじゃない」とその理由を口にしていた庄子前GMだったが、これはルヴァンカップ決勝を落とす2017年シーズンまで継続されていた。

ファン・サポーターに楽しんでもらいたいという信念を持ち、ブレずに攻撃的なスタイルを追求し続けた庄子前GMを後押ししたのが、結果が出なくてもブーイングをしない等々力のスタンスだったのは付記しておきたい事実だ。

ブーイングについて川崎華族に聞くと、一番悔しいのは現場の選手、スタッフで、その彼らを一番見ているのは強化の人たちなんだから俺たちが目先の結果でブーイングするのはおかしいと、言う。そして、勝てなくてもブーイングすることなく応援を続けてくれたサポーターの存在があったからこそ攻撃的なサッカーを追求し続けることができたと、庄子前GMから聞いたこともあった。

庄子前GMを支えたのは間違いなく等々力の雰囲気だったということ。だから、強くなった今のフロンターレの根底には、あたたかな雰囲気を作って来た等々力の後押しがあったのは間違いない。もちろん少しずつその価値観と対立するサポーターが増えている事実もあるのだろうが、それにしてもいつまでも残ってほしい文化だと思っている。

最後に個人的な話だが、在任中気にかけてくださった庄子前GMの退任は寂しいとしか言いようがない。特にここ数年間は、コロナ禍のため挨拶もままならなかったのが残念だ。いずれにしても、ここまでの功績に感謝しつつ、チームには3月31日の退任までの間、いい花道で送り出してほしいところだ。

(取材・文・写真/江藤高志)

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