「川崎フットボールアディクト」

吉田明宏社長「フロンターレ経済圏(FRO経済圏)の構築を推進」2/3【インタビュー】【無料公開】

■アジア

2022年の新体制発表会見で吉田社長は3つの目標を宣言されていた。SDGs、デジタルとの融合、アジアの3つ。このうち、SDGsとアジアに関して少し深堀りして話を聞かせていただいた。

アジアに関してはACLを戦うという視点と共に活動を実施。それがシーズン終了後のJリーグアジアチャレンジへの参加と、ベトナムでの試合につながる。

「Jリーグのアジアチャレンジがタイで行われたということで、参加させていただきました。そのタイミングでベトナムにも行きましたが、日越友好50周年の前の年のプレイベントでという話になったので。これも東急さんと10年来、ベトナムでの活動実績がありましたので、ちょうどいいねということで今回やらせていただきました。若手選手などは日本と全然違う環境で試合ができたと言っていましたね。特にピッチはすごく勉強になったとのことでした」

今回は現地に進出している日系企業さんの支援もあり、赤字は出さずに済んだと胸をなでおろしていた。ただし、当初想定していたアジアでの需要開拓は難しさがあるとの認識を受けたとのこと。

「ビジネス的にはPSG(パリ・サンジェルマン)が日本で大きなビジネスができた、そんなことは全くないですね」

アセアンの国々では、クラブチームへの応援よりも代表チームが好まれるという現地の事情なども難しさの一因だとのこと。

■SDGs

SDGsについては「モノ売りからコト売り」というキーワードで説明。

「今までは看板やユニホームに企業名などを入れて露出させることによる宣伝効果を期待していただいて、それに対して我々がスポンサーフィーもいただいていましたが、お客様の社員の方に喜んでいただけるようなイベントを実施したりお客様のその先のお客様に喜んでいただけるようなイベントをやろうと。そういうことをやっていきました」

たとえばサッカー教室のようなイベントが想定されているが、すなわちそれは「フロンターレがプロモーションで培ってきたセンスが生きる部分でもあります」としている。イベント参加型のスポンサー活動とSDGsの視点、そこにフロンターレが関わることで新しい価値を生み出せるのではないかとしていた。

「フロンターレと共にイベントを開催することによって、一社のみで社会貢献活動やSDGsを考えるよりも、スケールメリットを活かせますよね。また我々がお客様、スポンサー様同士に協同していただき、実際に行ったのが川崎市内の『かわさきこども食堂ネットワーク』になります。こちらは1社だけだと限界がありますが、そこに物流のチームに入っていただき、様々なスポンサーに参加をお願いする。すると食べ物でも生鮮食料品から始まって乾物系のところも入って、広がりを作ることができました」

■フロンターレ経済圏(FRO経済圏)

かわさきこども食堂ネットワークでスポンサー企業が協同した実例を踏まえ吉田社長が進めようとしているのがフロンターレ経済圏(FRO経済圏)の構築だ。

「VIP席にスポンサーさんが来られてピッチを向いて応援してくれててますが、そこで各社の代表さんにどうやって横を向いてもらうのか。なかなか皆さん、横に誰が座っているか分からなくて。横を向けるような提案をして、一緒にやりませんかとか、そういう話をすると大変喜んでいただけます。それを私はフロンターレ経済圏、もしくはFRO経済圏と呼んでいます。フロンターレのスポンサー同士がつながって、それで一つの経済圏をつくっていくという構想です」

FRO経済圏が拡大することで活動の収益性がたかまれば、各社に社会貢献活動の余地が出てくる。そういう意味で、フロンターレが積極的に旗を振ることの効果を期待したいと思う。

「社会貢献というのはやっぱり企業が儲かっている必要がある。そうでなければ背に腹はかえられなくなるので。そのためにはスケールが必要で、ある程度の売り上げと利益が出てこないと続けていくことができない。だからCSV(Creating Shared Value・共通価値の創造)っていう考え方ですね。共に作り出せる利益は、社会的な利益になるということ。その結果、活動がサステナブル(持続可能)になっていく。そういう形にしていきたいなと思っています」

スポンサー企業各社ごとに強みのある分野はある。そうした分野を掛け算していくことで、新しい価値を作り出せるかもしれない。その橋渡し役としてFRO経済圏に期待したいところだ。

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(取材協力/川崎フロンターレ 取材・構成・写真/江藤高志)

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