「川崎フットボールアディクト」

高校選手権、「三笘薫」はわかるが、意外だった「板倉滉」【#オフログ】

現在開催中の高校選手権では、選手たちへの定番の質問というものがある。目標とする選手、好きな選手に関する質問だ。20年以上前がどうだったかはよく覚えていないが、近年は海外のスター選手の名前が出てくることが多く続いていた。有料無料を問わずサッカーの動画視聴の壁が下がった影響だと思うが、フロンターレに加入が内定している選手ですらそうで、その流れは止められないのだろうなと思ってきた。そんな風潮に今大会では変化が見られる。

たとえば国立競技場で開幕戦を戦った成立学園の渡辺弦は、好きな選手名として三笘薫の名前を上げている。渡辺自身が三笘のような仕掛けるドリブルができる選手でこれには納得。また、来季フロンターレ加入が決定している名願斗哉は、ネイマールに続き三笘薫の名前を上げていた。

渋いところでは盛岡商の月折隼斗が好きな選手として板倉滉の名前を上げていて思わず質問してしまった。

「守備っていうか、凄い、クラブとかのプレーをYoutubeとかで見てて。粘り強い守備で、ちょっと前まで(自分は)ボランチをやってて。(板倉は)センターバックなんですけど、守備の面は生かせると思ったので。それを見て、板倉選手が好きになりました」

月折は帝京第五戦では前目のポジションで交代出場して1G1Aの活躍を見せたが、センターバック以外のフィールド全てをこなせるということもあり、守備のお手本として板倉の名前を出していた。

板倉については奈良育英の1年生DF竹田秦も、長友佑都の名前と共に目標にする選手としてその名前を上げていた。

「日本の選手だとやっぱり長友選手、あとは板倉(滉)選手です。(板倉選手は)若手でしっかりリーダー的存在で、体を張ってプレーするというところがあるので。そういうところ、自分にできるようにしていきたいと思います」

ひたむきに戦う板倉の姿が高校生の一部の心を捉えていることがわかるが、板倉のプレーぶりを思い出すとそれもわかる気がする。職人気質な選手に好まれているのかもしれない。

ちなみに竹田に話を聞こうと思ったのは、同じ1年の谷川琉希也と共に守備の一員として劣勢の佐野日大戦で奮戦していたから。前半35分には無人のゴールへのシュートをかき出すファインプレーを見せており、チームへの貢献度も高かった。敗戦後の悔しさの中、竹田は礼儀正しい言葉遣いで丁寧に受け答えしてくれた。体格的にはハンディはあるが、名前を上げている長友佑都もあれだけの選手に成長している。そう考えると、指標になっているという点で日本代表は偉大だと思う。

高校生の口から、日本人選手の名前が出てきていることにワールドカップでの活躍の重要性を感じつつ、当然だと思っていた三笘薫に加え、板倉滉の名前が出てきているこの傾向に、高校生が、体を張りチームプレーに徹する選手をしっかり見ているのだなと、心強く思っているところだ。

(取材・文・写真/江藤高志)

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