「川崎フットボールアディクト」

悔し涙の大関友翔と、手を差し伸べた松長根悠仁【コラム】

涙もろいと公言してきた大関友翔が敗戦後、ピッチに倒れ込んで泣いていた。

届かなかった1点の重みを受け止めながら、大関の脳裏にはいろんな感情が浮かんでいたのだという。

「いろんな感情があったんですけど、試合に負けたこともそうですし、3年間が終わってしまったっていう感覚もそうですし」

そしてその中でも特に不甲斐ないプレーしかできなかったという自分へのいらだちを感じていたのだと悔しがる。

「もっとやれたんじゃないかって思った。自分にちょっとイラついた部分もありました」

大関が背負う背番号10は、川崎U18にとっては重たい番号であるのはご存知の通り。カタールワールドカップにおいては川崎U18出身選手が3選手が選出されているが、そのうちの2選手、三笘薫と田中碧がそれぞれ3年時に10番を背負ってきた。また板倉滉の代も、東京五輪代表で現アントワープ所属の三好康児が背負っている。

それ相応の実力が認められているからこその10番で、だからこそ大関はチームを救いたかった。そして、それができなかった悔しさが、苛立ちのコメントに滲んでいた。

敗戦直後、大関はピッチ上に倒れ込んで涙するしかなかった。そんな大関に、同期の松長根悠仁が手を差し伸べた。

今季の川崎U18の3年生は、高校在学中に一足先にプロ契約した高井幸大に加え、大関、松長根の3選手がトップ昇格する。基本的にトップチームのスケジュールに従い練習を続けてきた高井は週末の試合日のみU18に合流するという生活を続けていた。結果的に、大関と松長根の昇格2選手がチームを統率することになる。

「自分の中でも、(平日に)高井がいない中で、松長根と二人でやってきたので。みんな、3年生そうですけど、松長根とは特に二人でチームを引っ張っていこうってことでやったので。二人で日本一取りたかったなってのは、すごい思います」

共に日本一を取りたいと話していた松長根が、悔し涙を流す大関に声を掛ける。

「松長根が『よくやったよ』って声をかけて起こしてくれたんです」

積み重ねてきた日々が透けて見える一言だった。心にしみる、言葉だった。

(取材・文・写真/江藤高志)

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