「川崎フットボールアディクト」

松長根悠仁「派手さはないが、堅実。そして気持ちの強さで掴んだ昇格」【コラム】

松長根悠仁について、22年6月28日に23年シーズンからのトップ加入がリリースされた。

松長根悠仁は直近で3試合を見ているが、安定したプレーぶりで高井幸大とともに最終ラインを統率。特に8−0で勝利した横浜FCユース戦でのプレーは印象に残った。

この試合、U19の遠征から帰ってきたばかりの高井がらしくないミスを連続。川崎U18に戻り、合わせる時間の短さは十分に言い訳になるものだったが、高井は「それは言い訳にならないし。もっとやっていかなきゃいけないなと思いました」と自らに矢印を向けていた。

そしてその高井のミスをカバーしていたのがCBでコンビを組む松長根だった。特に後半75分には無人のゴールに蹴り込まれたシュートを寸前のところでカットしてはじき出しゴールを許さず。気の緩みがちな大量得点の試合での無失点試合に大きく貢献した。

そんな試合後の松長根は特に誇るでもなく。大量得点も無失点も、すでに遠い過去の出来事のような落ち着きで取材に応じてくれた。そして、合流直後の高井を気遣う言葉を残していた。

「(高井が)U19の遠征から帰ってきて、練習したのが昨日(6月17日)だけで、昨日も、ボール回しとセットプレーの確認しかしてないので。今日はぶっつけ本番みたいな感じだったので。その辺、ちょっとズレもあったのかなと思いつつ、自分も追いつけるようにがんばります」

高井を気遣いつつ、すでにプロ契約済みの高井に「追いつけるようにがんばります」と一言添えているところに、松長根という選手の人間性が現れていた。

そんな松長根の人の良さは後輩からのいじりを軽く受け流す懐の深さとしても現れている。FC東京U18戦後、元木湊大と共に雑談をしていたときのこと。元木が、頼りになる先輩だとの文脈で松長根のことを褒めたため、その流れに乗っからせてもらい、横浜FCユース戦のスーパーセーブに言及した。すると元木が即座に「でも、今日はちょっと、足でちゃってね(笑)」とPKを与えたプレーをいじり始めた。繊細な選手であれば怒り出してもおかしくない一言だったが、ひとしきりいじられたあと冷静に「切り返してくるかと思って足を出したんですけどね」と自らのプレーを分析していて、その冷静さに唸らされた。

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派手さはない。ただし堅実にやり続けられる選手だ。絶対にやらせない、という気持ちの強さもある。足元の技術も高く、蹴り分けられるところも彼の良さだ。コツコツとやってきて掴んだトップ昇格の勲章を、プロの世界でどれだけ磨いていけるのか。その準備期間として、ユース最終年となる今季、チームの記録的なシーズンを下支えしている。

ちなみにこれは余談だが、趣味はNetflixでの映画鑑賞だとのこと。でも字幕ではなくて吹き替えで見ているらしい。宮代大聖が英語の勉強を意識して字幕で見ているらしいと伝えると、字幕にしようかなと言う素直さがまたいい。

すかさず、共に取材していた別の取材者が「そんな簡単に英語なんて身につかないけどね」と一言告げて「やっぱそうですかね」と返してきて、いい子だなと。

(取材・文・写真/江藤高志)

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