「川崎フットボールアディクト」

フロンターレの横断幕の話/J1 第2節 vs仙台【#オフログ】

不思議な光景に、目を丸くした方も多いのではないだろうか。仙台サポーターが陣取るコアなエリアに、フロンターレの横断幕が掲げられていたからだ。3月6日に行われたJ1第2節での出来事だった。

川崎華族の一員で、コールリーダーを務めるカイト氏によるとあの場所に掲出したい、というリクエストは仙台側からなされたのだという。

「本来であれば僕らビジターに入って一緒にやり合いたかったんですが、緊急事態宣言下ではビジター席が無くてそれができなくて。でも最初に仙台の方から、あの場所にForzaKawasakiの横断幕を貼りたいという話をもらって。それはありがたかったです」

そもそもこのタイミングでのマッチメイクも仙台側がJリーグ側にリクエストして実現したものだったのだと川崎華族の山崎真代表。

「この日程でホーム開幕戦の相手として仙台さんが絶対にフロンターレとやりたい、という事をJリーグ側に言ってくれてたんですね。各クラブ、年間何試合か日程をリクエストできるみたいで、仙台さんはその一つをこのタイミングでフロンターレ戦でと言ってくれたそうです」

東日本大震災から10年目の3.11を目前に控えたホーム開幕戦がフロンターレ戦で決定し、さらには横断幕の掲出の依頼まで受ける。フロンターレサポーターにとってこれほど嬉しいことはなかったという。だから「さらに上を行きたかった」とカイト氏。このままじゃつまらないだろうということで、川崎のソウルフードとして根強い人気を持つニュータンタンメンのカップ麺を5000個配ることにしたのだという。

「本当だったらみんなで来て、応援をみんなでやりたいんだけど、こういう状況でスタジアムにこれないから、フロンターレのサポーターのみんなの気持ちを伝えたいなと。それを形にしたということ」と話す山崎代表は「これからも一緒にJリーグを盛り上げていこう」とのメッセージを添えてカップ麺を渡したという。

カイト氏は「なかなか無いじゃないですか、Jのサポーターが相手のサポーターに対してプレゼントするとか、今までも聞いたことないので」と笑顔だった。

そもそも論として、スポーツの応援は、自分たちが応援するチームの後押しを目的に行われるもの。

「サポーターって自分たちのチームを応援するものだから。相手チームをけなすってものではないので。お互いが自分のチームを応援するのが大事だと思うので」と山崎代表。応援に対するこの認識を背景に、お互いがお互いのチームを応援するスタンスでフロンターレサポーターは仙台といい関係を作ってきた。だから「仲間が困った状況になった時に手を差し伸べるのは当然で、友達が困ってたら手を差し伸べるのと同じなんですよね」と山崎代表。

結果的に2011年3月11日を起点に「それまでも仲が良かった仙台との交流が、さらに深まっている」とのことで「今は復興支援とかじゃなくて交流になってますしね」と話していた。

試合結果に「空気読まないんだよなぁ」と苦笑いする二人だったがこれから先も緩衝地帯のない対戦としてJリーグを共に盛り上げてほしいところだ。

(取材・文・写真/江藤高志)

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