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【奥能登豪雨ボランティアインタビュー(後編)】辻尾真二クラブアンバサダー「クラブとしてできることはたくさんある。引き続きやっていきたい」

9月21日に能登半島を襲った豪雨から1ヶ月以上が経過した。先日には土砂の搬出が想定の3割ほどしか終わっていないという報道もあるなど、復興への道のりは長い。この間、金沢もトップチームの選手・スタッフが被災地で支援活動を行ったほか、クラブスタッフとU-18の選手たち、サポーター有志が復旧ボランティアに参加。現地の様子や作業の内容などを、泥かき作業に参加した寺中克典アカデミーダイレクターと辻尾真二クラブアンバサダーに聞いた(前編:寺中ダイレクター 後編:辻尾アンバサダー)。

ーー発災から10日経った10月1日に、クラブスタッフとサポーターらがボランティア活動を行いました。これはどういう経緯で行うことになったんですか?
「豪雨災害が起こる前、9月23日に選手が被災地を訪れることが決まっていました。でも豪雨に見舞われて選手が行けなくなって、まずはスタッフ2名が豪雨翌日に現地に行きました。そこからうちの社員で都合がつく人と、サポーターのボランティアさんで行って復旧活動に参加しましょうということになりました」

 

ーー当日はどうやって被災地に入ったんですか?
「大型バスを貸し切って、ボランティアさんと一緒に行きました」

 

ーー何人ぐらいで?
「20名ぐらいですね。クラブのスタッフとサポーターさんが半々ぐらいでした」

 

ーーどこに行って、どういう作業をしたんですか。
「輪島市町野町の、もとやスーパーさんに行きました。そこは地域でただひとつのスーパーなので、地域の方々の生活の拠点となっている場所。店内に入ってきた泥をかき出したり、(流された)物を運んだり、(被災者の)ニーズに合わせた作業を行いました」

ーー何時ぐらいに行って、どれくらい作業をしたんですか?
「(金沢を)7時に出て、3時間ぐらいかかって10時に到着。1時間半作業をして、お昼の休憩をとって、それから1時間半作業をするという感じでした」

 

ーー実際に作業をしてみてどんな感想を持ちましたか。
「水害から10日しか経っていなかったのでまだ匂いもあって、泥だけでなく店内にあったもの、家具とかもすべて建物の奥に流されている状態でした。それをスコップでかき出していくという作業なんですけど、大変な作業で、最初は終わりがあるのかなと感じたぐらいでした」

ーー辻尾さんは元アスリートで、いまも体を鍛えていますが、それでも重労働でしたか?
「本当にきつくて腰が痛くなりました。重機が入らないとできないこともありましたので、われわれは人力でできるものを運びました」

 

ーー1日作業をして、片付いたなというのは感じられるものでしたか。
「本当にごくわずかですよ。でも、われわれが終わったあとに入れ替わりで別のボランティアの方がきて作業をしていました。それを調整する団体の方など、本当にいろんな方が関わって復旧に向けて動いているんだなということも感じました」

ーー今回、被災者の方とお話をしたりはしましたか?
「『こうして(片付けて)ください』という要望を聞いたりはしましたが、直接災害への思いなどを聞く機会はありませんでした。みんな黙々と作業をしました。現地はそんな大変な状況でしたけれども、スーパーの方はなんとか物品を置ける場所をつくって、地域の拠点になろうと活動をしていたので、本当にすごいなと感じました」

 

ーー作業が終わってからボランティア活動を行ったサポーターと話をしたりしましたか。
「サポーターのみなさんも本当に大変な状況になっているねという話をしていました。コールリーダーの方は県外から来ていただきましたし、スポンサーの平田道路さんも参加してくださいました。仕事を休んで行かれた方もいたと思いますし、本当にありがたかったです」

 

ーー辻尾さんはクラブで営業を担当していますが、能登にもよく行かれるんですか。
「震災の前は七尾のお客さんのところには行く機会があったんですけど、いまは地震もあったので機会は少なくなりました」

 

ーー5月には選手や監督と一緒に地震の被害があった被災地を訪れていると思います。
「そのときは輪島に行かせていただいてお話を聞いたり、老人ホーム2か所を訪れて簡単に体を動かしたりしました。そのときに行った老人ホームも今回の豪雨で被災したというのを聞いて、心が苦しかったですね」

 

ーー2度、被災地を訪れましたが、今回あらためて感じたことはありますか。
「現地の方にとっては、1月に地震があって、これから頑張っていこうというところに豪雨がきたので、本当に苦しいだろうなというのが率直な思いです。地震で被害を受けたのか、水害で被害を受けたのかわからないような家もたくさんありました。僕らは大型バスに乗って行くだけでしたけれども、それでも道がガタガタしていて、迂回していかなければいけないところもありました。水害後は土砂崩れで山肌が見えているところがたくさんありました。思っている以上に、いろんなところで土砂崩れが起きているんだろうなと感じましたし、高齢の方がたくさんいらっしゃる地域なので、体調面も心配ですよね」

 

ーーJクラブとしては地域への思いも強いですか。
「僕自身、石川県に思い入れがあって、このクラブで仕事をしています。クラブとしてできることはたくさんあるので、それは引き続きやっていきたいと思っています。あとはトップチームが良いニュースを届けてくれること。石川県にはツエーゲンだけではなく、いろんなスポーツクラブがあります。スポーツには地域を明るくするパワーがあると思います。僕も選手と一緒にサッカーをする機会がありましたけど、運動する機会がない子どもたちもいますので、スポーツの力を地域に還元していきたいと考えています」

取材日;10月18日 写真提供:ツエーゲン金沢

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