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【奥能登豪雨ボランティアインタビュー(前編)】寺中克典アカデミーダイレクター「人が困っているときには助けたいというシンプルな思い」

9月21日に能登半島を襲った豪雨から1ヶ月以上が経過した。先日には土砂の搬出が想定の3割ほどしか終わっていないという報道もあるなど、復興への道のりは長い。この間、金沢もトップチームの選手・スタッフが被災地で支援活動を行ったほか、クラブスタッフとU-18の選手たち、サポーター有志が復旧ボランティアに参加。現地の様子や作業の内容などを、泥かき作業に参加した寺中克典アカデミーダイレクターと辻尾真二クラブアンバサダーに聞いた(前編:寺中ダイレクター 後編:辻尾アンバサダー)。

ーー10月6日にアカデミーの選手とスタッフがボランティア活動に参加することになった経緯を教えてください。
「水害があったあとにスタッフが被災地に行って、かなりひどい状況だということを見てきました。3週間くらい泥かきをやらないといけないと聞いたので、それなら僕たちが行けるときにいかなければいけないと思いました。タイミングよく10月6日があいていたので、そこで『行きます』と。最初はユースの選手とジュニアユースの3年生が行こうかということだったんですけど、受け入れるほうの都合とバスの定員、ジュニアユースの選手は力的にもまだ足りなかったり受験生だということで、ユースだけで行くことになりました」

 

ーー10月6日という日程については?
「僕ら(アカデミースタッフとユース)の日程があいていたということです。前日に公式戦があったので、次の日があいていました」

 

ーー何人で行ったんですか?
「選手が34人とスタッフ5名です。選手はユース全員ですね。6時半に金沢をバスで出発しました。現地では食事ができる場所はないので、和倉で試合をするときにいつもお願いしていた業者に特別に(徳田大津インターチェンジに)お弁当を届けていただいて、そこから西岸(七尾市中島町)で日本財団とHEROs(HEROs Sportsmanship for the future)の方と打ち合わせをして、輪島(南志見地区)に移動しました。現地には『災害NGO結』の方に、5つのグループに割り振っていただいて、5ヶ所で作業をしました」

 

ーー5つのグループは作業内容が違うんですか?
「どこのお宅に行くかということで、選手だけで行くところもあれば、大変な作業のところは大人のボランティアさんと一緒に活動するグループもありました。作業はその家の方に聞いて行いました。家の中にまで土砂が入っているので、それをかき出す作業があったり、床下にも泥が入っているところは床板を外して潜って泥を出したり、畑の泥や側溝の泥をかき出したり」

 

ーースタッフも作業したんですか。
「同じようにやりました」

ーー実際に被災地を見たり、作業をして感じたことはありますか。
「家の中には泥だけじゃなくて、いろんなものが入り込んでいたんですね。重たいU字溝とか流木とか。木は泥に埋まって、さらに絡まり合っているので簡単には運び出せない。チェーンソーで切って運んでということを繰り返しました。現地に行くまで(の光景)も本当に衝撃的で、せっかく地震被害からは復旧したのに、雨でダメになったりしたところもありました。僕らは上のほう(北側)から入ったんですけど、もともとの道は地震で復旧できずに、隆起した海岸を道路にしているところもありました。帰りは内陸を通ったんですけど、そっちも土砂崩れが至るところで起こっていました」

 

ーー子どもたちはそれを見て何か言っていましたか。
「ヤバいなっていう言葉ばかりでしたね。僕らスタッフは(5月に)トップの選手たちと被災地に行って見ているんですけど、子どもたちは初めて被災地を訪れる子が多かったんです。まだ全然復旧していないのを見て衝撃を受けていました」

 

ーーどれぐらいの時間、作業をしたんですか?
「10時半から15時ぐらいまでです。最初は14時までの予定だったんですけど、他のボランティアさんは16時までの予定だったので、『もう終わりです』とは言えないですよね。でも15時にはバスが出発しなければいけなかったので、そこまでの作業になりました」

 

ーー被災者の方とも話をしましたか?
「『これ、どうしますか』といった作業の話が多かったです。『(豪雨の)当日はどうでしたか』とはなかなか聞けませんよね」

 

ーー作業は大変でしたか?
「過酷でしたね。泥は重いし、子どもたちは慣れていないし、床下など狭い場所もありましたので」

 

ーーサッカーをやっているので体力のある子どもたちですが。
「いつもは大人のボランティアの方が2、3人で行っている作業だったので、『若い子が来て5、6人でやってくれるのは本当に助かりました』と言っていただきました。普段は若い子が少ないので、明るくなりましたとも言っていただきました」

 

ーー作業後、子どもたちから感想を聞いたりしましたか?
「泥を片付けてきれいになっていくのを見るのは、ある意味で楽しかったと言っていました。子どもたちはこっちが感心するくらいに、本当に頑張っていました。全身泥々になるのは抵抗があるかもしれませんけど、嫌な顔はまったくしていませんでした。何か感じるものがあったんでしょうね」

 

ーーJクラブは地域を大事にしていますが、そういう思いも子どもたちに伝わればということもありましたか。
「それよりも、人が困っているときには助けたいというシンプルな思いですよね。そういうアクションを起こせる人になってほしい。人のために力を出すときというのは、大きな力を出せるんです。それは試合でも同じですけど、今回の場合は本当に困っている方がいるからということだけです」

 

ーー今後、アカデミーでまた被災地を訪れたりする予定はありますか?
「いまのところはスケジュールが埋まってしまっていますが、継続的に支援したいという思いはあります。行くのに3時間近くかかって、3時間かけて帰ってくるので作業時間が少なかったのですが、現地の方々は『テレビもなかなかここまでには来ない。知らない人も多いので、こういう状況になっているということをぜひ広めてほしい』とおっしゃっていました」

取材日;10月18日 写真提供:ツエーゲン金沢

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