齋藤将基U-18監督インタビュー(前編)「そこを変えていこうと和倉ユースに入ったけれども……」【無料記事】
昨日、和倉ユースの全日程を終えた金沢U-18。試合直後の齋藤将基監督に話を聞くことができた。
まずは大会を通してのチームの印象について。組み立ての部分ではどんどん進歩しているのかと思いきや、監督の答えはまったく違うものだった。
ーーこの大会では初戦からポジショニングでズラしながら間をとってボールを運ぶプレーが印象的だった。
「それは春先からできていた。今日も選手たちに話したけれども、こういうフェスティバルや試合が続くと、できていることがなんとなくになってしまう。意図的に相手を見てということができていたのに、なんとなくになってしまう。今日(矢板中央戦)も相手の手前ではボールは動くけれども最終ラインでどれだけブレイクができるかというところに関してはまったくだった。個の質のところでは差を感じる。ユースでも伸ばすというところはあるけれども、もっともっとジュニアユースで磨くことを徹底しないと、ということもある。僕らの目的は個(を伸ばすこと)なので、そこをやっていかないといけない」
ーークラブとしてですね。
「そうですね。僕的には(この大会は)全然だった。昨日(磐田東戦)もいい距離感をとって、循環のところはいいけれども、やっぱり最後の決めきるところ、そこで人にあたってしまったりする。今年はずっとそこで苦労しているし、何もないところから失点する。本当に何も崩されていないし、クリアボールが失点に繋がってしまうとかは昨日もあった。やっぱり弱いチームが陥るところだなと。そこを変えていこうと和倉ユースに入ったけれども、結局そこの部分。もちろん決めるという部分に関してはすぐによくなるとは思わないけれども、自分のなかでいろいろ工夫したりしなければいけない。チームとしての仕組みづくりは僕は終わっていると思っているので、あとは個のところで破りにいくとか、最後に決めきるとか、もっと追求してこだわってやっていかないといけない。(強豪チームと比べると)単純にパワーのところでボールを蹴る音とかパススピードも違う。根本を変えていかないと、プリンスではなんとなく戦えているけれども、これからプロになるとか世界にいくという基準で考えたときには圧倒的に足りない」
個々でいえば、前線と中盤にかけては昨年から試合に出ている選手が多い今年のチーム。ただ今大会ではそれ以外にも両サイドバックの谷水優選手と矢澤太一選手が印象に残った。
ーー左サイドバックの谷水選手はもともとボランチ? いいキックをもってますよね。
「そうです。もともとボランチで、キックがいいんですよ。本当にキックがいい。課題は見る力。あそこからもっと出せればいいし、今日の失点も見る力があればああいう対応にはならない」
ーー右の矢澤選手は?
「あの子は決して(身体)能力が高い選手ではないけど、いま一番伸びている。サイドバックのなかでスペースを見つけて、いろんなところにポジションをとれる。守備でも予測がいい。足は速くはないけど予測があるから速く見える。ただ、球際とか奪ったあとのパスがずれたりするところは課題」
ーー中盤から前線には個性的な選手たちがいる。
「(島野)竜太郎とかもライン間で受けてスルスルっていってチャンスはつくるけれども、もうひとつ足りない、というのは普段から僕らも言っていること。『なんとなくうまいな』で終わっていると、そういう選手はいっぱいいる。怖い選手になっていかなければいけないとは伝えている。でもこの大会ではけっこうトライしていた。それで(ボールを)とられているところもあるけど、そこはトライし続けないといけない。シュートまでもっていくところとか」
ーー島野選手はプリンスリーグ北信越では得点ランクトップ。点もとれているのでは?
「ワンタッチゴールというか、クロスに合わせるところはいいと思うけど、自分で運んでシュートを決めきるという圧倒的な個を(身につけないといけない)。逆にそういった(ゴールの)嗅覚はあるので、そこはいいところ。線も細いしパワーをつけなければいけないけど、相手のパワーを利用するというところまでもっていけるといい」
フィジカルの部分では、とくに高体連のチームとそこで勝負すると劣勢に立たされることも多かった。そこにもクラブとしての課題もあるようだ。
ーーアスリートとしての能力は強豪とは少し違うのかなというのは感じる。
「体つきも違う。それでも、よくやっていると思う。でも僕らもそこに本気で目を向けていかなければいけない。フィジカルコーチがいないのであれば、手を変えながらやっていかなければいけないし」
ーー施設がないなかで、単純なフィジカルトレーニングみたいなのはできる?
「軽いのしかないけど、一応おもりはある程度揃えてはいる」
ーー高体連のトップクラスだとトレーニングルームもすごい。
「だから僕らも今年に入ってからはフィジカルに振り切ってトレーニングをする日があってもいいんじゃないかと話している。いままではフィジカルと戦術とテクニックを分けてトレーニングしないようにとは思いながらやっていた。すべての要素が入るトレーニングで、そのなかでフォーカスするものをつくっていたけれども、今日はしっかり体をつくる日と、割り切ってやってもいいんじゃないかという話はしている。走るということに関して、走力はだいぶ上がってきたと思うけど、パワーとかスピードに関してはまだまだかなと思う」
ーー先ほど、ボールを蹴る音の違いを指摘していたが、それは筋力の問題?
「意識で変わってくるところだとは思う。結局、自チームの練習でもそうだしプリンスでも、いまのパススピードで通ってしまうので。物理的なスピードが単純に足りない」
ーー市立船橋戦は最初は圧倒された。北一尋選手のファインセーブでなんとかしのいでいたけれども、最初の15分で慣れてしまえば、できるところも多かった。
「(市船の強度は)すごかったけど、それでも慣れたらできる。逆に圧倒できるところもあったかなと。基本的には自分たちがボールをもってリズムをつくるチームだとは思っているけど、ああやって(ボールを)もたれてもリズムをつくれるようにしていかないといけない。自陣に押し込まれても、それも自分たちのリズムだと思わなければいけないし、そこにネガティブな思いをもつ必要もない。守るときは守ればいいよと言い合いながら。基本的には自分たちの時間を長くしたいけれども、それでマイナスに思う必要はない。でも本当に決めるか、決めないかなんですよ。結局そこで決められてリズムを失うことがあるけど、そうなっても大人にならないといけない。点を決められてリズムを崩すようだと、まだまだ子ども。高校生ぐらいになったら大人のサッカーをしないと。ただし、僕たちは自分たちの求めるものを追求していかなければいけないし、そこにトライさせてあげられる環境もつくっていかなければいけない」
「後編」につづく