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雪国の思いはひとつ。金沢サポーターが秋春制反対への思いをダンマクに込める【無料記事】

「秋春制 雪国クラブにメリットなし 金沢断固反対」。21日の甲府戦、金沢のゴール裏には秋春制移行に反対する横断幕が掲げられた。

今回出した横断幕は新潟や富山など雪国クラブが共通に掲げるものと、金沢のサポーターたちが独自で出したものの2種類。朝8時にスタジアムに集まった10数名のサポーターは「(雪が降ったら)家から出られない」「メリットはなに?」などと言いながら、自分たちの思いを表現するための適格で短い文言を考えていった。

Jリーグが最速で26年からの移行を検討し、今年中に結論を出すという秋春制。金沢のコールリーダー・真野涼輔さんは「反対の思いは強い」と言う。真野さん自身は雪国ではない愛知県の出身。学生時代に金沢で暮らした経験があるが、「雪、舐めていましたよ」と言う。最初は雪が降るとテンションが上がり、喜んでいたそうだが、金沢生活2年目の冬になると「うざったいなと思うようになった。そして大学4年のときに2018年の大雪を経験しました。本当に家から出られなくて、半日雪かきをしてバイトにいって帰ってきたらもう雪が積もっているから、また雪かき」。

 

2018年の大雪は北陸に暮らす人々も久々に経験した大雪。交通機関が麻痺、自動車の立ち往生も発生し、車の中で直接命の危機にさらされた人がいただけでなく、食料やガソリンなどの物流にも大きな影響を及ぼした。それ以降、北陸には毎年のように大雪が降っており、高速道路・幹線道路の通行止めなども頻繁に起こるようになっている。現在でも試合のある日に愛知から金沢をはじめ、日本各地に遠征する真野さんは「(秋春制に)反対の思いは強い」と、その経験も踏まえて話す。

 

「(家から)出ていくのも大変だし、帰ってくるのも大変。零度近くの気温の日に屋外で試合をして誰が見にくるんだろう。練習をするにしても屋内施設をつくらなければいけないし、Jリーグとしてはウインターブレイクを挟むと言っているが、その期間はあくまでもシーズン中。練習があるので、選手は帰省などもできない。当然、シーズン前にもキャンプがあるわけで、選手は年間を通してゆっくりできる期間がない。それに天候が悪くて寒い地域にあるクラブに選手が来たがりますか? 雪国のクラブと暖かい地域のクラブから同じようなオファーがあったら、負担がかかる人工芝で練習しなければいけない寒いところのクラブには来ない。結局、ACLなどが関係してくるクラブや太平洋側のクラブにはメリットがあるのはわかるけど、雪国のクラブにはメリットはない。不平等はあってはいけない」

 

さらにサポーター団体「Z-BLITZ」の代表を務める新川徳幸さんも「絶対に反対。その思いしかない。僕らにとってはデメリットしかない」と話す。新川さんは生粋の石川県民で、現在も毎年雪と戦い、その過酷さを知りぬいているからこそ、反対の思いは強い。

 

「たとえば試合の翌日に15センチ雪が積もりますよ、会社が8時からですよとなったら、自分の家だけでなく当然、会社の雪かきもしなければいけなくなります。そうなると6時半〜7時には会社に着いていなければいけない。自分の家を出るために5時前に起きて雪かきをするんです。そうなったら試合のある日に、たとえその日が晴れていたとしても試合を見に行く気になりますか。見ていて楽しいですか。アウェイにいったら帰ってこられないときもあるし。たとえウィンターブレイクがあったとしても、メリットがちょっと弱いかなと思う」

 

それでも新川さんは、雪国のなかでも比較的降雪量の少ない金沢なら秋春制への移行の可能性は0ではない、かもしれないと言う。ただしそれは選手が何不自由なく練習するためのハード面やキャンプのための資金面での援助が必須で、さらに石川県内の積雪の多い地域から試合会場へのアクセスも十分に確保できた場合のみだと強調する。それは現実的には不可能。リーグ等からハード面での補助が多少はあったとしても、雪国クラブだけが被らなければいけない負担は重くのしかる。

 

「J1だけを見ればできるのかもしれないけど、J2 、J3まで考えるとどうなんでしょうか。(雪国の思いを)日本中に向けて発信したい」と新川さん。

 

金沢に限らず、雪国に暮らす人々の思いはサッカー界の中枢に届くのだろうか。

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