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Jリーグ版よのなか科・作田裕次U-18コーチのお仕事を取材

19日の午前中、金沢U-15に所属する中学2年生の20名が市内の会議室に集結。Jリーグ版よのなか科の研修を受けた。

 

Jリーグ版よのなか科とは「Jリーグあるいは所属クラブの経営や運営の仕組みを学びながら、その中で選手が果たすべき役割について理解を深めるのに役立ち、将来プロサッカーに関わるかどうかにかかわらず、自分自身がオーナーシップ(自分のことを自分で責任をもって取り組む姿勢)を発揮してキャリアイメージをデザインするために必要な『情報編集力』を身に着け、豊かな職業観を醸成する」(Jリーグ公式サイトより)というもの。一般的なよのなか科をJリーグやクラブの活動を題材にして行うものと考えればよさそうだ。

 

金沢の今年のよのなか科は現役引退を発表して1年が経った作田裕次U-18コーチが進行役(ファシリテーター)を務めている。新しい道を進み始めた作田コーチには今年もたびたび取材させてもらっており、練習での指導者の顔、Jユースリーグでの指揮官の顔、プリンスリーグでの運営の顔などは見ていた。しかし今回はまた別の顔が見られる、しかも最も想像がつかない「座学の講師的な姿」ということで、取材をさせてもらった。

 

Jリーグ版よのなか科は全5回のプログラムで構成されており、19日に行われたのはその2回目、「Jリーグが目指すもの」がテーマとなっていた。会場には選手20人が5人ずつ4つのグループに分かれて着席。そして演壇にはパソコンを前に資料をスクリーンに映し出し、説明する作田コーチの姿が!

今回の主題はJリーグ百年構想がゴールにあるのだが、作田コーチは導入で、若い女性にも老婆にも見える、またはアヒルにもウサギにも見えるという「だまし絵」を提示するところから入った。

 

また「旅行をするなら国外? 海外?」という質問も投げかけ、世の中にはさまざまなものの見方・捉え方があること、立場の異なる意見を認め、相手がどう考えているかを想像する方向に誘導していく。

 

そして本題。各グループごとに「Jリーグのクラブは地域名ではなく企業名を入れたほうがいい」「ファンサービスなどは行わず、サッカーの練習だけに集中したほうがいい」といったお題が用意され、「そう思う派」と「そう思わない派」に分かれてディベート。さらにグループごとにプレゼンを行い、聴衆も巻き込んで賛成・反対の意見を出し合った。

ディスカッション中には議論が行き詰まる場面もあったが、寺中克典U-15監督が「そう思わない派の人たちは、こう言われているけどいいの?」「どうして意見が変わったの?」などと声をかけることで再活性化。よのなか科の先輩ファシリテーターでもある寺中監督いわく「子どもたちの考えるスイッチをどうやって押してあげるか。それは指導者にも通じるテクニック」とのこと。作田ファシリテーターについては「準備不足だね」と厳しめの感想も漏らしてくれた。

 

そして最後はJリーグ百年構想を金沢の事例をまじえて説明し、「挑戦を、この街の伝統に。」というクラブ理念にも触れて終了となった。

最後に進んで後片付けと掃除をしていたU-14の選手たち。プレゼンが終わった仲間に拍手をしたりという姿勢にも好感をもてた

 

現役時代の作田裕次のイメージは決して饒舌ではなく、廣井友信や白井裕人のように前面に立って話す選手でもなかったので、今回は新たな姿を見ることができた。当初はユメセンや職業講話と同じように自分の経験を語るのかと想像していたが、それとはまったく異なる目的や役割をこなしていた。今回のプログラムで使用するスライドなども自ら写真を選び、グラフをつくるなど、部分的に資料づくりも行ったとのこと。「だまし絵」を導入にすることも決められてはおらず、テーマに沿うように自らの考えたそうだ。

 

また、作田コーチはこのプログラムについて「サッカー以外のことを学んで、それがサッカーにも繋がる」とも話していたが、相手の立場に立って考えることや、異なる意見も尊重することをサッカーに置き換えても伝えていた。

 

今年のよのなか科は、あと2日で3回分のプログラムが行われる予定とのこと。次はJリーグを取り巻く仕事、最後は現役選手も登場してキャリアを考えるようなので、続けて取材をしたい。

 

以下はちょっとした個人的な感想です。

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