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柳下監督の言葉から見えた課題。対戦相手は水戸だけれども向き合うべきは自分たち【第12節・水戸戦プレビュー】

 

「守備じゃない。攻撃を直さないと」

 

チームとしてのよさがほとんど出せなかった甲府戦から中3日。水戸戦はリスタートの一戦となる。

 

年に何度かはしょっぱい試合も、スイングしない試合も、すべてがうまくいかない試合も、負けるべくして負ける試合もあるだろう。しかしここ2試合、柳下正明監督はチームとしての狙いを「出しきれていない」と考えている。

 

相模原戦、秋田戦、栃木戦では、何をやってくるかがわかっていても難しい相手がいるということをまざまざと見せつけられた。金沢も本来はそういうチーム。それが「できない」のならば仕方がないが、指揮官は「しようとしていない」と見ているようだ。

 

前節終了後、「センターバックがもっとぴりぴりしないとチーム全体が緩くなってしまう」と苦言を呈していた柳下監督だが、攻撃についても庄司朋乃也、石尾崚雅のふたりに求めていることはある。水戸戦を前にしても指揮官は「0−2で負けているから守備じゃない。攻撃を直さないと」と口にしていた。

 

攻撃のスタートとしての後ろの選手の役割。それは、いかにして攻撃のスイッチを入れ、チームを前に向かせるか。「ボール保持ではなく、前に運ぶビルドアップをずっとやっている。ボランチが下るのもボールを保持するのではなく、前に出すため。そこで受けてもう1回センターバックに戻すのはない。いちばんはセンターバックふたりでつくってくれること。なんのために(センターバックふたりが)開くのか。前に動かすためだろって」。話を聞いていると、柳下監督の口調は徐々に厳しくなっていった。

 

後ろや横ではなく前へ。受けて、考えて、迷って、近くに出すと相手に狙われる。出しどころがないなら、はたいて、自分も動いてコースをつくる。周囲も連動して動いてスペースをつくる。ボールも、人も、頭も動かす。連戦中は練習でも必要最低限のことしかできないが、3日の練習で確認していたのは、チームとしての基本的なことだった。

 

「1対1で抜かれたのはしょうがない」

 

柳下監督は「片倉が1対1で抜かれたのはしょうがない」とも言う。この言葉にもブレることのない指揮官の姿勢が表れている。うまい選手に個の力でやられるのは仕方がない、最終的には失点しなければいいだけ。もっといえば、失点はする、だからそれ以上に点をとるというスタンスも不変だ。なんのためのマンツーマンなのか。それはボールを奪うため。そこから素早い攻撃を行うため。ゴール前のシーンをたくさんつくるためだ。

 

柳下監督からは「うまくないんだから失敗するって」という言葉もよく聞く。そのため、攻守においてチームとしての狙いを遂行しようとしてのミスには寛容だ。逆にチャレンジしないこと、そして失敗して下を向いたり、ひとつのプレーで気持ちや集中が切れることは許されない。誰かが失敗しても試合は続いている。ならば、ボールを奪い返しにいけ、味方をサポートしろ。これもチームの一員として戦ううえの基本として求められていることだ。

 

「相手よりも自分たち」

 

水戸は前節、4−3−3から4−4−2に変更。さらに試合中に5バックにして1−0の勝利を収めた。ただし本来はアグレッシブなチームであるため、試合は噛み合うだろう。それでも今節に関しては相手どうこうではない。柳下監督も「相手よりも自分たちにフォーカスするのか」という質問に「そうだね」と即答した。

 

相手の弱点をつききれなかったり、テンポが上がらなかったり、チームとしての狙いを徹底できなかったり、この2試合で出た課題をどこまで解決できるか。そのために指揮官はマイナーチェンジを施すようだが、それがどれくらい機能するか。ゴールデンウイークのホーム2連戦の1試合目。チームに変化は現れるのだろうか。

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