「ファジラボ」寺田弘幸

【無料】【私のホームゲームの1日】松岡和幸『喜怒哀楽をみんなで共有できるようにすることを大切にしていきたい』

松岡和幸
(株式会社 ビザビ)

2015年からファジアーノを担当している松岡和幸さんには忘れられない光景があります。

それはやはり、2016年のホーム最終戦です。

「いつもは後半25分くらいに来場者数を発表するんです。ただ、発表するタイミングは決まっていて、群馬戦はなかなか発表するタイミングがなかったんです。それで、もう試合終了後に発表するしかなくなった。

だから、試合終了後にプレーオフ進出決定の発表をした後、来場者数の発表をすることになったんです。成り行きでそうなったんですけど、結果的にすごく良い演出になったと思います。ダイナさんがちょっとタメてから来場者数を発表したときの、あのスタジアムの盛り上がりは本当にすごかった。

私はそのときのスタジアムの様子をスマホで録画していたので、何かある度に見返しています」

あのときの光景をもう一度。

そう願いながら、松岡さんはファジアーノを支えています。

スタジアム内外でファジアーノを演出

私たちがファジアーノさんから請け負っている業務は本当に多岐に渡ります。プロモーションのお手伝いもさせてもらっていますが、試合の日に限って言うと試合の進行と演出がメインで、ファジフーズの運営もやらせてもらっているので、スタジアム内外でファジアーノさんのお手伝いさせていただいています。

私は進行台本を作成したり音楽をコーディネートしてもらったりして総合的な演出を考える立場なんですけど、いつも考えていることは「お客さんに来て良かったと思ってもらえるように」ということです。常に、どうやったら楽しんでもらえるか、どうすれば盛り上がるか、を考えています。

例えば音楽で言うと、自分たちがスタジアムに行ったとき、どのタイミングでどういう音楽を聞けたら心地良いだろうか、どんな音楽が気持ちが高まってくるだろうか、ということをずっと考えてきました。それで新しい曲もどんどん取り入れてきましたし、逆にずっと変えていないパートもあります。Van Halenの『JUMP』やThe Heavyの『some ol』がそうです。

今年からキックオフ前のカウントダウンも始めました。他のクラブでやっているところもありましたし、バスケットをはじめアリーナスポーツで試合が始まる前のカウントダウンが主流になってきているんです。それで、岡山でも、サッカーでも、できるんじゃないかっていうことでクラブと話をして始めてみましたけど、みんなでカウントダウンをすることで始まるぞ! という気分を盛り上げられているんじゃないかなと思っています。

このキックオフする瞬間が、私たちも1番緊張する瞬間です。いつも運営を担当するクラブスタッフの方からゴーサインが飛んでくるのをドキドキしながら待っています。レフェリーの方とも連携しないといけないですし、電光掲示板の時計も遅れないようにスタートさせないといけません。本当にものすごく緊張するタイミングですね。

仕事柄これまでいろんなエンターテイメントに関わらせてもらってきて、テーマパークみたいに、お祭りみたいに、ということをすごい意識してやっているんですけど、やっぱりスポーツイベントの面白さって「試合はどうなるか分からない」ところに紐づいてくる。そこがめちゃくちゃ面白いんです。「来場してくださったあなたを絶対に満足させます」というテーマパークとは、そこが大きく違うところです。

たくさんゴールが入る試合もあれば、1つもゴールが決まらない日もありますよね。なので、すごく満足してうれしい気持ちで帰れる日もあれば、悲しい気持ちで帰ることになる日もあるんですけど、その感情は、その試合でしか感じることのできないもので、それを分かち合えるところがすごく良いなって思うんです。だから、私たちも楽しんでもらうこと、喜んでもらうこと、それだけを考えるだけじゃなくて、喜怒哀楽をみんなで共有できるようにすることをこれからも大切にしていきたいと思っています。

コロナ禍で感じたこと

コロナ禍になって、本当にどうしようかなと思いました。2020年は私たちもクラブと一緒に力を入れて開幕戦に向けてプロモーションをしてきたのでガッカリもしましたし、これからどうやって盛り上げていくのか、本当に悩みました。

それまでクラブの方針として、サッカーを観に来てくださいというよりも、お祭りに来てもらうような感覚で試合を観に来てもらえるようにしてきたので、飲食ができない時期もありましたし、ずっと声を出せない状況が続いてきた中で、私たちも試行錯誤してきました。

ご飯を食べてから観戦する、スタンドでみんなと感情を分かち合う、そういった文化が岡山に根付いていることをあらためて感じた期間にもなったので、早くそういった楽しみ方ができるように戻ってほしいですけど、できることが限られていたことがきっかけになって、クラブスタッフの方とも「エンターテイメントの要素に力を入れないといけないよね」という話をよくするようになり、みんなの意識がすごく上がった気がしています。

なので、私は結果として良かったところもあったのかなと思っています。私たちの目から見てもクラブスタッフの方々にすごく一体感が出ていると思いますし、一緒に仕事ができて私もすごく楽しいです。

この職業に興味を持ったきっかけはファジアーノ

出身は総社市で、大学は環太平洋大学なんですけど、私は小学5年生から大学卒業まで12年くらいずっとハンドボールをやっていたんです。ずっとスポーツをやる側として楽しんできたんですけど、大学3年生のときにファジアーノの試合運営を手伝うボランティアをしたことがあるんです。そのときに「そもそも何でプロスポーツは成り立っているんだろう?」と頭の中に「?」が生まれたんです。

「スタジアムにいろんな企業の看板が置いてあるのはなぜなんだろう?」というところから疑問が生じて、たまたま『スポーツイベント論』という授業があったので先生に聞いたら、プロスポーツは企業が支援しないと成り立たないんだということから教えてくれました。

それで、スポーツクラブは地元の行政、企業やファン、サポーターの方々を巻き込んでいくことで、チームもどんどん強くなっていくメカニズムを知った瞬間から、これだな! と思ったんです。そのときにはもうハンドボールを続けていく考えはなくて、でも何かしらスポーツに関わっていきたいと思っていたんです。もっとたくさんの人にスポーツに興味を持ってもらえるようなことをやりたいなと思っていて、大学のゼミの先生に相談をすると「それなら広告会社で務めるのも1つの手だけどな」とアドバイスを受けて、広告会社はいろんなスポーツに関わりながらいろんな経験を積めそうだと思って就職したんです。

それでビザビに入社してから、いつかファジアーノに関われたらな・・・ とずっと思ってきました。けど、まさか3年目で声がかかるとは思わなかったです。自分がずっとスポーツイベントがやりたいって会社に言い続けていたからだと思うんですけど、内心とてもうれしかったです。

これからのファジアーノへ望むこと

皆さんは「J1へ」という想いを強く持たれていると思いますけど、それだけがすべてではないとも思っています。私としては、強かろうが、弱かろうが、「このチームがあって良かった」とたくさんの人が言ってくれたらいいなと。それこそ人生の節目を迎えた方が「ファジアーノがあって良かった」と思ってくれたらすごくいいなと思いますね。

例えばですが、学生生活はファジアーノがあってすごく楽しかったと思ってもらえたり、ファジアーノの試合を一緒に観に行ったことがきっかけで結婚されて、今はすごく毎日が楽しいと思ってくれていたり、おじいちゃん、おばあちゃんが岡山にファジアーノがあって良かったなと思ってもらえる。そういう存在であってほしいですし、そういう想いを持った人がどんどん増えていくことが100年続くクラブにもつながって行くと思うので、ずっと岡山の人々の生活の身近にあるクラブであってほしいなと思いますし、愛され続けるクラブになってほしいなと思います。

最後に、サッカー専用スタジアムへの想いを!

まったく違う観戦体験をしていただくことができるようになります。ピッチまでの距離も違えば、音響をはじめシステムも大きく変わってきて、演出できることもすごく増えてくるんです。なので、より臨場感があって、より興奮が高まることは間違いないと思います。

他クラブに視察に行って専用スタジアムで試合を観ていると、毎回いいな~ と思いますけど、スタジアムを作るためにはもっともっとファジアーノの活動に賛同して良く思ってくれる方々を増やさないといけないと思っています。自分たちのために新スタジアムを作るというよりも、岡山の皆さんが賛成するところまで持っていくのが私たちの仕事でもあるし、使命でもあるのかなと思っています。

私たちは必ずいつか岡山にも新しいスタジアムができると思っています。だからこそ、待ちのスタンスではなく、攻めのスタンスではいたいなと思います。日本各地や世界の専用スタジアムがどのようにできてきたのかを参考にしつつ、産学官民で岡山に合った作り方を創造できればいいなと思うので、「こういうスタジアムが岡山にあったら良くないですか?」「これまで不便だったことが改善されませんか?」というディスカッションも行っていきたいです。

理想は新スタジアムができることによって岡山の経済や社会、文化などがより活性化し、地域の人々がよりイキイキと生活できるような街に発展していくことです。そんな未来をみんなで目指していけたらなと思います。

〈 了 〉

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