【無料】『チームの成長による上積みも』【2022 J2第5節 横浜FC戦 レビュー】
横浜FC戦が始まる前、『特命広報大使』に就任した赤嶺真吾さんと椋原健太さんの就任式がファジステージでありました。その後に記者会見で語ってくれた彼らの言葉を引用しながら、1-1で引き分けた第5節を振り返っていきたいと思います。
2022年のファジアーノ
J1昇格のために
補強の次は、チームの成長(寺田弘幸)
2022年のファジアーノ
「2022年のチームへの期待を聞かせてください」 僕が質問を投げかけると、椋原健太さんは現役時代と同じように、理路整然と、少しユーモアも交えながら、質問に応じてくれた。
「まずクラブの補強に本気度がすごい伝わってくる。サッカーを見ているとまだ荒々しいところがあるんですけど、個人の能力で得点を奪って勝点を積み上げてきている。すごく地力のあるチームだと思いますし、これから夏にかけてサッカーが出来上がっていって連係が深まっていけば素晴らしいチームになっていくと思います。木山監督はすごい大変だろうなと思いながら見ていますけど(笑)」
椋原さんの言うように、このチームはまだまだ荒々しい。でも、その荒々しさがこのチームの強みでもあることを、立ち上がりからファジアーノは示していった。
ミッチェル・デュークへのロングフィードを軸にして攻撃を組み立て、セカンドボールを拾ってゴールへ迫っていく。剛健なサッカーだったけども、横浜FCの選手たちはそれを嫌がっていたし、ファジアーノの選手たちの意志は統一されていた。試合序盤からファジアーノは敵陣にどんどんボールを送り込んで横浜FCを押し込んでいった。
デュークは圧巻だったし、チアゴ・アウベスはこの日も精力的に攻守に関わっていく。そして、右ウイングで初先発した木村太哉も躍動した。3トップの強みを押し出して戦うファジアーノは、その勢いのままPKを獲得して先制点の奪取に成功した。
ただ、対戦相手の横浜FCは力で押し続けられるような相手ではなかった。徐々にファジアーノの守る時間が長くなっていく。守備陣が集中して危険なところを埋めて決定的なピンチを迎えることはなかったが、後半に入るとさらに横浜FCの攻撃のテンポが上がっていき、選手交代によってパワーとスピードもアップすると、ファジアーノの守備陣は耐えられなかった。70分にフェリペ・ヴィゼウにヘディングシュートを決められて同点に追い付かれた。
その後、金山隼樹のビッグセーブがあったことも思えば、引き分けて勝点1を積み上げられたことは好意的に受け入れるべきなのだろう。しかし、ファジアーノの目標はJ1昇格なのだ。この結果に満足してはいられない。
J1昇格のために
「今年はクラブもJ1への強い想いを発信しています。J1についての想いを聞かせてください」 この質問に赤嶺真吾さんは真摯に応じくれた。そう言えば、ファジアーノに在籍していたときからずっと「J1に行けば、見える景色が変わる」と、赤嶺さんは言っていた。
「J1に昇格できれば、また違った景色を見られて、クラブとしても選手としても違った経験をできると思ので、何としてでもJ1昇格を目指してほしいです。ただ、本当に簡単なことではないんで。自分たちもJ2を戦ってきましたけど、やっぱり上位にいるチームは連敗しないですし、勝点を取りこぼさない。そういうチームが上位に行けると思います。今年はプレーオフもありますけど、自動昇格を狙う気持ちがあれば自然と6位以内にも入れると思いますし、すごく楽しみにしています」
上位を戦っていくための条件として、椋原さんも「連敗しないこと」を挙げていた。町田戦に負けた後に横浜FC戦に負けなかったこと、勝てなかったけども勝点1を手放さなかったことは、とても評価すべきことなんだと思う。
ただ、赤嶺さんが言っているように、自動昇格を狙っていく気概をもち続けてシーズンを戦っていくことが重要になってくる。そのためにはやはり、現実的に自動昇格を狙っていける位置にいなければならない。次節は絶対に勝点3が必要なゲームになってくるだろう。
それにしても、J1に昇格するとどんな景色が見えるのだろうか。彼らにはこれからもいろんな話を聞いていきたいなと思う。
補強の次は、チームの成長
最後に、横浜FC戦で切実に感じたことを書いて締めくくりたい。
みんなで梅田透吾の想いも背負ってピッチに立った今節は、チームが1つになっていることを感じる一日だった『Our team』を標語にし、キャプテンの金山を中心にチームは団結力を増している。
だからこそ、実際にピッチの上でもチーム全体の力を発揮して相手を上回っていきたかったが、今節は時計の針が進んでいくたびに相手のパワーが上回っていくことになった。
このオフに大型補強を行ったファジアーノは、明らかな強みをもったチームになっている。開幕4連勝を飾っていたチームも存分に困らせが、これから選手1人ひとりがさらに力を付けてチーム全体の底上げをしていかないといけない。連係を深めてあらゆる状況に対応できるチーム力の向上も行っていかないといけない。さらなる成長が必要だ。
ステファン・ムークとハン・イグォンが、これからチームにさらに強みをもたらしてくれるに違いない。まだまだ補強による上積みがあることは心強いが、チームの成長による上積みもなければ、J1の景色はなかなか見えてこないのだろう。そう強く感じた横浜FCとのドローだった。
〈 了 〉