「ファジラボ」寺田弘幸

【無料】【サッカーライターへの道】vol.9『京都戦で気になったこと。6月のMOMは?』

サッカーライターを目指す大学生の難波拓未が寺田弘幸に質問していくシンプルな企画『サッカーライターへの道』。

試合のポイントや戦術等の細かいこともOK。選手のプレーについても寺田の見解を述べます。寺田にわからないことは監督と選手に直接聞いてきます。

もし読者の皆さまの中にも寺田に聞きたいことがありましたら、下記にフォームを設けておりますので、そちらにご入力ください。

vol.9 『京都戦で気になったこと。6月のMOMは?』

 

難波 「京都戦は前節からスタメンを代えて臨みました。上位陣を相手に連勝してチームは良い状態だったと思いますし、良いときはあまりメンバーを代えないのが定石だと思っているのですが、寺田さんは京都戦のスタメンの意図をどう感じましたか?」

寺田 「代えたくないというのが本音だったと思うけど、徳元君と宮崎智彦君がコンディション不良によって出場できない状況になった。急きょ代えざるを得なくなった中で、今のチームの最大値があのスタメンだったと思う。

井上君の右SB起用はこれまでもずっと考えていたプランの1つだったし、CBには濱田君がコンディションを上げてきて、安部君も加わった。層が厚くなっているので、チームの選択肢を広げる新たなトライでもあった。廣木君は今年は右SBで出場してきたけど、左SBでも十分にやれる選手。2019年には仲間君(隼斗)と良い関係を築いてチームの強みになっていたから信頼して任せられる。河野君の右SHも初めてで、宮崎幾笑君とどちらを起用するか悩んだだと思うけど、京都の左サイドには攻撃力に優れた荻原がいる。彼が京都の強みの1つになっているから、河野君をぶつけたっていう意図があったと思う。ここ数試合、途中出場してギアを上げる役割を担っていた木村君がスタメンだったから、宮崎幾笑君にジョーカーのような役割を担ってもらう意図も含まれていたと思う」

 

難波 「では、気になったシーンについて聞かせてください。前半8分のシーンです。左サイドから京都がスローインを入れてリスタートした後、荻原選手へサイドチェンジをされ、そこからのアーリークロスを入れられてピンチになった場面です」

寺田 「あのシーンが最初のピンチだったよね。じゃあ、プレーを見ながら振り返っていこうか。750秒で止めるね。京都がスローインを入れる前、ファジアーノの選手たちは近くのゾーンに人を集めてハメようとしている。これは定石。選手の位置を見ると、スローインを入れる選手の近くで木村君がハーフウェイラインをまたいでいて、その前に川本君がいて、センターサークルの辺りに上門君がいて、その後ろに手前から廣木君、白井君、喜山君、河野君が並ぶ形になっている」

難波 「はい、そうです」

寺田 「このときの全体的なポジショニングは良いよね。選手同士の距離感も悪くない。それで画面の右上には井上君がいて、彼は松田を捕まえている。チームとして左サイドでスローインが入ったときにボールを奪いに行く態勢をとっているから、大外にいる荻原のマークは捨ててもいい状況だよね」

難波 「はい。752秒にスローインが入りますが、ここでハメることができず、うまく外されてしまいました」

寺田 「スローインを受けた選手のワンタッチがうまかったね。木村君はスローインを入れた選手にパスを戻すと予測したけど、逆を突く形で三沢の方にボールを落としている。このワンプレーでファジアーノはプレスを外されてしまって、三沢もサイドチェンジを蹴れるところにしっかりとコントロールしていることで、相手に多くの選択肢がある状況になってしまった。

このとき、松田は井上君の背後へのパスを手で要求している。だから、井上君は裏へ抜け出す松田を警戒しながら、サイドに張っている荻原も気にしないといけない状況だったんだけど、まずは背後のスペースを消さないといけない状況だった」

難波 「結果として、三沢選手は荻原選手へのロングパスを選択しました。このときのファジアーノのスライドが遅かったのでしょうか?」

寺田 「荻原へ早くプレッシャーをかけるのは難しい状況だったと思う。井上君が松田のマークを濱田君に預けて、荻原への対応に出ていくのも1つの方法だったかもしれないけど、井上君は出ていく選択をしなかった。それで荻原の蹴ったアーリークロスをニアでしっかりと触っている。結果論にはなるけど、井上君の選択は悪くなかったんじゃないかなと思う」

難波 「ギリギリでしたけど、井上選手は危険な場所を埋めてくれていましたね」

寺田CBとしていつもクロス対応をしているから、危険なコースがわかっていたんだろうね。ただ、フリーでクロスを入れられる状況を作ってしまったことも事実。この場面で井上君が他にできることがあったとすれば、河野君に荻原がサイドに張っていることをスローインを投げる前から伝えておくことかな。『荻原にボールが出たら行ってくれ、俺は出て行かないから』と伝えていたら、三沢が蹴るタイミングで河野君はスプリントして荻原をフリーにしないようにスプリントしていたと思う。そういうコミュニケーションが取れていれば、さらに良かったのかなと思う」

難波 「現地で京都のワンタッチパスの正確さや逆サイドまで展開する速さをすごく感じました。ファジアーノの横のスライドも早いと思うんですけど、それを上回っていたシーンだと思ったので、このシーンが気になったんです」

寺田 「現地で観ていたらウタカの凄みもすごく感じたのでは?」

難波 「はい! 初めてスタジアムでウタカ選手を見ましたが、レベルが違うと思いました。以前に寺田さんがおっしゃられていましたけど、足下の止める・蹴るの技術が高いからキープ力も高いんだなって思いましたし、ウタカ選手のように起点になれる選手がいるとDFはどうしても引きつけられてしまう。ウタカ選手が相手を引きつけて空いたスペースを味方が使う京都の攻撃がすごく脅威でしたし、2失点目はそういうところが表れたシーンだったと思います。ゴールも決められるし、チャンスメイクもできる。本当にすごかったです」

寺田 「大活躍だったけど、やっぱりウタカのプレーを見ていると、足元がしっかりとしていることの大事さを感じるよね。ボールを良い位置に止められる技術があるから、余裕を持って周りを見ることができるし、アイディアのあるプレーがきるんだなって思うよね」

難波 「引き出しがすごく多かったです」

寺田 「そうそう。瞬時に味方と相手の位置を把握しないとアイディアも生まれてこないけど、ボールを止めることに精一杯だったら、そこまで周りが見えない。ウタカはボールを止めることに苦労しないから、イマジネーション溢れるプレーができるんだろうね」

難波 「ゴールが多いのでストライカーのイメージが強かったんですけど、下がってボールを引き出したり、少し低い位置から荻原選手へノールック気味にスルーパスを通したシーンもあって、ウタカ選手のすごさが脳裏に焼き付いた試合でした」

 

寺田 「じゃあ、今月もMOMを選んでいこうか。6月のMOMはどの選手?」

難波 「僕は上門選手です。一番の理由は新潟戦と琉球戦でゴールを決めて連勝の立役者になる活躍をしてくれたことです。また、これまでは左SHや右SHでプレーしていましたけど、トップ下のような役割をする2トップの一角に定着して、相手ボランチの背後でパスを受けてゴールへ向かっていくシーンが増えたように感じます。琉球戦の先制点も上門選手がそこでパスを受けたことがきっかけでしたし、京都戦でも武田選手の背後でパスを受けて惜しいミドルシュートも打ったシーンもありました。今、最も相手チームに脅威を与えている選手だと思います」

寺田 「上門君は自分のところでボールを失う回数が多いことを課題として挙げていた。ハーフウェイライン付近のミドルゾーンで上門君が縦パスを受けたときに失うことは多かったよね。難波君が話したシーンはもう1つ前のゾーンでのプレーのことで、ゴールに近い場所で相手のギャップを突いてシュートに持ち込んでいく回数が多くなってきたことはすごく良かったけど、そういうシーンをもっと増やしていくためには、チームが攻撃する回数を増やしていかないといけない。上門君にはミドルゾーンでの課題も克服していってもらいたいなと思う」

難波 「寺田さんは6月のMOMに誰を選びますか?」

寺田 「廣木君かな。新潟戦で約17か月ぶりに復帰したことがすごくうれしかったし、やっぱり自分の強みを持っている選手は強いなって思ったよね。対人守備が強みであることを、廣木自身も、監督も、まだ一緒にリーグ戦でプレーしたことのない選手たちも、みんながそのことを理解していた。いきなり本間至恩にぶつけるくらい信頼感があったってことは、すごいことだよ。京都戦も途中で左から右に立ち位置を変えたけど、京都の左サイドが強烈だったから廣木君を右に回して抑えようという意図があった。これほどハッキリとした特徴を持っている選手って意外と多くないよね。ブランクがあっても自分の強みをしっかりとピッチ上で表現してみせた廣木君はすごくカッコ良かったし、プロだな! って思ったよ」

〈 了 〉

 

次回は金沢戦後を予定しています。
皆さまからの質問をお待ちしています。

難波拓未

岡山市に生まれて小1のときにサッカーを始めた少年は、岡山市の小中高に進学してボールを蹴り続けた。ファジアーノの選手たちのプレーを真似しながらプロサッカー選手を夢見て青春時代を過ごした難波くんは今、大学生になってサッカーライターになることを目指して活動を続けている。

note 『たくみ/大学生サッカーライター』
Twitter  @Soccer_Writer


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