【赤鯱探訪】杉本竜士編① 「名古屋でプロサッカー選手にさせてもらった」
杉本竜士
(2017~2018 名古屋グランパス所属)やはりドリブラーって面白い。改めてそう思わせてくれた男が杉本竜士だった。自分の武器やスタイルにこだわりを持つ選手はどのタイプにもいるわけだが、とりわけドリブラーというのはその選択の特性上、自分本位なのが本当に面白くて興味深い。その中でも杉本のドリブルは耽美派というか、強烈な自信と哲学とに満ちていて、話を聞くのが楽しくて仕方なかった記憶しかない。たった1年の名古屋での在籍で、こんなにもインパクトを残した選手もいないというのは、先日の引退を発表した時の反応を見ていればよくわかった。彼は、“杉本竜士”という生き方を誇示しながら、彼のプロサッカーキャリアを突き進み、貫き続けたのだ。その漢が決断した31歳での引退もまた、実に杉本竜士らしさにあふれていた。強くて魅力たっぷりのその言葉一つひとつを、ぜひとも楽しんでほしい。
赤鯱探訪・杉本竜士編①
「名古屋でプロサッカー選手にさせてもらった」
Q:まずは現役引退お疲れ様でした。ちょっと早い気もしますが。
「まあでも、もうチームなかったんですよ。どこからもオファーなかったんで、なんか逆にスッキリ辞められました(笑)。たとえば行けるチームはまだあって、それでもやるかやらないかと悩んで、自分で辞めるよりかは。もう必然的に辞めるしかなかったみたいな状況だったんで。だから今後も『いや、もうちょいプレーしたかったな』っていう後悔はもうすることもないので。もうできなかったんだからって思えるんで。『選手はやれるところまでやった方がいい』っていう意見は多いじゃないですか。引退された方々にもそれは言われますし、そういう部分ではなんかスッキリ辞められたな、という自分に印象はありますけど」
Q:カテゴリーを落としてでも何とか続けたいみたいな、そこに粘るようなところもなかったのですか。
「いや、カテゴリーも下げて全部考えましたよ。もう話はJFLとかも含めて聞きましたけど。もうそこに対しての何ていうかプライドとかは、J1やJ2じゃなきゃ、とかも僕はなかったんで。別に全然、続けられるような環境があればやろうと思ったんですけども、どこにもチームはなくて、どこからも声が、最終的にはオファーもらえなかったので。だから仕方ないなって。全然、気持ち的にも落ちているとかいう感じは今はないです。ただアドレナリンが出てるだけかもしんないですけど(笑)」
Q:ケガなど身体的には何も問題ないのですか、プレーするにあたっては。
「そうっすね。1回、一昨年ぐらいにちょっとグロインになっちゃって。それはちょっと本当にしんどかったから、その時も一度、もうやめようかなと思った時期にはなったんですけど。去年は一回もケガせず、一回も練習は抜けなかったですし、身体的には問題なかったなって感じですね」
Q:確かにスッキリとした顔をしていますし、未練は全くないですか。
「全くないですね(笑)。あー、サッカー選手に戻りたいなっていう欲は今は全くないです。たまにフットサルとか、どこかのサッカースクールとかに顔出したりして、サッカーをしたら『やっぱりサッカー楽しいな』と思いますけど。かといって、デカいグラウンドで11対11でやりたいかって言われたら、もう大丈夫です(笑)」
Q:けっこう意外です。どこまでもサッカーを追求している人という感じでしたから。
「ほんとですか。でも辞めてからわかったのは、サッカーに本当に生活を縛られてたんだなっていうのは、すごく今感じてますね。練習は1日の中でたかが2時間行くだけで、だからサッカー選手ってすごいと思ってたっすけど、いま辞めてみると、こんなに自由度が高くなるのかと思って。その練習の2時間にかける想いがやっぱり強かったんだと思うんです。それ以外何も拘束されてないけど、気持ちは拘束されているような感覚だったんだなと思ってます」
Q:ではサッカー選手として、やりきった感のようなものも同時にあったりするわけですか。
「これがやりきった感なのかはわからないですけど、別に戻りたいとかはないです。例えば今からどこかのチームがオファーをくれたとしても、たぶん『あ、大丈夫です』ってなると思う」
Q:サッカー選手に対する部分で、自分の中でプツンと切れちゃったみたいなところもあったのでしょうか。
「いや、どうなんすかね。プツンと切れたもなにも、もうチームなかったら辞めるしかないじゃないですか(笑)。そういう感じですね」
Q:それはそうなんですが(笑)。振り返ってみていろいろなことがあったキャリアだったと思います。移籍も多かったですし。
「振り返ってみて、やっぱり一番、それがサッカーに学ばせてもらったものが多くなったきっかけかなと思いますね。いろいろなチームに行って、たぶん合計の監督人数見ても10人は超えると思うんです。詳しく覚えてないですけど。シーズン途中で変わったりとかもけっこう多かったんで、僕の入ったチームは。だからそういう部分では、いろいろなチームに行って、サッカーをいろいろな形で見れたっていうのは、すごくいい経験できたなと思いますね」
Q:その中でグランパスで過ごした期間は1年と少しでしたが、この時間は濃厚だったのでは。
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